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第四回目 小説の第一文目が持つ「意味」とは〈初心者必見〉

 第四回目は小説の一番最初の一文目が持つ「意味」についてです。これは初心者も書き慣れた方も重要なことですが知らない方が多いのではないでしょうか。

 突然ですが小説を執筆されているそこのあなた。作品の最初の一文目をカッコで閉じたセリフにしてはいませんか。例えば次のような具合です。



〜トラックに轢かれた高校生、だいたい異世界で最強〜 (小説タイトル)


「あなたは来世に何を求めますか?」


 僕は高校から帰る途中、トラックに轢かれて死んだ。そんな僕にどこからか聞こえてきたのはそんな美しい女性の声だった。


 どうでしょう。最初にセリフを持ってこられても誰が話してるのか分からないですよね。こういう書き方はビギナーさんが多くやりますが、いきなり読者を困惑させる危険な書き方です。現実で例えるなら、道を歩いていて急に後ろから声をかけられたとき、それが初めて聞く声だったら当然誰だよってなりますよね。それと同じなので、これははっきり言いますがやめた方がいいです。

 でも神様的なすごく神聖な人物が語りかけてきているような神秘的な書き出しをしたいというとき、じゃあどうすればいいのでしょう。単純に地の文で神秘的な情景描写をすればいいのです。



〜トラックに轢かれた高校生、だいたい異世界で最強〜(小説タイトル)


 暑い日差しの中、セミの大群が生き生きと大合唱している脇で一人の少年の尊い命が奪われた。

 小説太郎。今年16歳の高校二年生だ。

 田舎道を途方もない時間をかけて高校に通う真面目な少年だった。だがその真面目さが裏目に出てしまい、トラックに轢かれそうになった野良猫を庇って死んでしまったのである。

 死んだら幽霊になると彼は思っていた。だから肉体を離れて天に昇っていく素晴らしい景色が見えるだろうと、そう思っていたのだが、実際はそうはいかないようである。どこからともなく不思議な女性の声が聞こえてきたのだ。


「あなたは来世に何を求めますか?」


 なんのことだ、と死んだことにも気づくかどうかというときに聞こえてきて太郎は困惑する。



 そんなに神秘的か分りませんが、私がこれまでの知識で書くならこんな具合です。とりあえず地の文による情景描写から始まれば読者側もそのうちどこかでセリフが来るだろうと心の準備ができますよね。地の文があればだいたい次に話し始めるのがどんな人物なのかの予想もできますし。要は地の文はこれからセリフを書きますという合図でもあるんです。合図なしにいきなりセリフが来たらそりゃビックリしますよ。

 では、いよいよここからが本題です。

 まあまず今ご説明した中でももうお分りいただけたかと思いますが、物語の一文目が持つ「意味」の一つが情景描写なんですね。なのでこれから小説を書き始めるときは、私のようなアマチュアのうちは単純に情景描写から入ることをお勧めします。

 小説の第一文目が持つ「意味」に関してはその他にもいくつか作家さんたちの間で考察があるようですが、特に知っている方が良さそうなものは、読者に向けて覚悟して読んでくださいという意味を持つ一文目でしょう。

 これは上級者向けの話題ですが、あえて一文目を非常に難解なものにすることでこの作品は気安く読まないで真剣に読んでくださいと忠告する方法です。例えば井上ひさし氏のご著作「吉里吉里人」の一文目。読んでみると何やら訳の分からない難解な文章が一文とは思えない長さで続きます。ですが決して井上ひさし氏が下手なのではありません。寧ろ言語学者も顔負けなくらい言語力の高い、ものすごく分かりやすい文章を書くことで知られる天才です。それなのにどうしてこのような始め方をするのか。もちろん覚悟して真剣に読んでくださいねと言うためです。難解な一文目の意味が分かる方はそれでいいですが、分からない方は別に読み飛ばしてしまっても構いません。ちなみに井上ひさし氏のこの一文目ではどんな人にお勧めの小説なのか、みたいなことを言っているようです。ならそれだけ言えばいいのにと思いますよね。でもそうしないのは真剣に読んで欲しいからというわけです。と、いうわけで井上ひさし氏は挨拶に加えて真剣に読んでくださいねとも同時に言ってしまう一文目を掲げたというわけで、とんでもなくすごい作家さんなのが分りますね。ちなみに井上ひさし氏のご著作はまた後ほど言及しなければならないほど勉強になるので大変お勧めです。

 今回私が語るのはここまでとなりますが、第一文目が持つ「意味」も先日ご紹介した筒井康隆先生の「小説の極意と掟」の中でも語られていますので、しつこいようですが是非こちらもお読みください。私も何度もご紹介しなければならないほど貴重な情報がぎっしり詰まっています。

 では、また次回でお会いしましょう。

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