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伯爵子息は訝しむ

GWですね。

しかし、不要不急の外出は控えましょう。

「クリステル様、準備はよろしいでしょうか」

「はい……」


 どうも皆さんこんにちは。ご機嫌はいかがでしょうか。私のご機嫌は雨模様でございます。本日の天気は晴れ。雲一つない快晴となっております。なのに私の心の中ではどしゃ降りの上、強風が吹き荒れております。


「ご安心ください。御身は我々が必ずお守りいたします」


 というのも、兄上から二つの情報が届いたのです。所謂「良い情報と悪い情報だ」って奴ですね。一つ目は悪い情報です。ええ、私に選ぶ権限はありませんでした。曰く、クリステル様を狙う馬鹿がいるという情報ですね。二つ目は良い情報です。その不逞の輩の動向は逐一把握しているとのことです。


 いやいや、これ絶対にやったでしょ。直前に気づいたため報告が遅れて済まないとか書いてあるけど、絶対に直前どころではない過去に気づいていたでしょ。だって襲撃地点と兵数に武装まで記されているんですよ? どうやって直前に気づいてこれだけの情報を得られるんですかっていうね?


 しまいにはですよ。護衛の人員がこの情報と一緒に送られて来ていますからね。急ぎ用意したとか書いていますが、元の人員の五倍以上の護衛を急遽用意できるか? 俺は出来ないと思う。だってバランデュール家の兵だけじゃなく、家の兵に加えてソラル家、ドラブル家の兵までいるんだから。急遽用意されたとかいう言葉を信じることなんて出来ませんね。


 そもそも最初は五百程度の護衛でした。しかし今はバランデュール家だけで二千。他も含めれば三千に届くだけの人員ですよ。急遽集めるのは無理だろ。しかも他家の兵も含めて? ますます無理だろ。


 が、実際にこの場にいる兵は千程度。他の兵はどこにいるかというと襲撃犯どもを半包囲する形で展開中でございます。奴らは思うことでしょう。「あれ? 聞いていた数よりも護衛が多いな?」と。残念だけど、その倍くらいの兵がお前らを半包囲しているんだ。ごめんな。


 兄上に限って悟られるようなミスは犯さないだろうから、襲撃犯の未来は確定したも同然だな。可哀想に。利用されたあげく、こちらの都合よく捨てられるのか。憐れだな……。


 そして都合よく増えた人員を誤魔化すために俺とバルテ、そしてドラブル家から派遣された人が生け贄として用意されている。「ああ、合同で移動しているのか」と襲撃犯は思うことだろう。というかそういう風に思考誘導する人員が入れられているはずだ。俺が思いつけることを兄上がやらないはずはない。


 襲撃犯の頭が優秀な奴なら気付かれる可能性もあるが、そんな奴を兄上が選ぶはずがない。という事で襲撃犯の未来はほぼ確定している。しかし、事に絶対はない。そのためのソラル家とドラブル家の参加だろう。


 敵の数はおそらく少数。兵の数が多いと露見する可能性が高くなるからだ。見つかれば敵味方問わず討伐されてしまう。敵ならば言うまでもなく、味方の場合は身内の恥じだからな。屠り去るに限る。


 という訳で陸戦における最強格の二家が遣わされたんだろう。歩兵戦闘でソラル家の右に出る家はなく、騎兵の名門で名高いドラブル家は言うに及ばず。ソラル家の場合は身代の関係で数の不利があるが、質ではどの家も及ばない。加えて今回は数の心配がない。


 問題の敵の数だが、兄上からの情報には記されていない。三千で包囲できる程度だからそんなには多く無いのだろうが……。そこは書いといてくれよ……。こういうところがあるよな、兄上って。人を試す癖は直した方が良いのに……。一向に治る気配がない……。


「戦になると聞きました……」

「はい、残念ながら」


 公爵閣下はクリステル様に知らせたのか。厳しい人だな。いや、この程度で怯える玉じゃないと判断したのか。ならば、知らせておいた方が得策ではあるな。


「私を守るために皆さまが先頭に立つとも聞きました……」

「我がソラル家の兵の精強さをご覧に入れる機会に恵まれ、幸運にございます」

「我がドラブル家に二心が無いと証明する又とない機会、存分に働いて見せましょう」


 うんうん、二家にとっては公爵家に忠誠を示す良い機会だからな。ここで武功を挙げれば他家に対して一歩リードできるだろう。


「そういうわけでは……。いえ、何でもありません。私はどうしていればいいですか?」

「はい、クリステル様は護衛の兵とともに安全な所にいてくだされば十分です」


 まあ最悪クリステル様を守りきれば、こちらの損害がどれだけ酷くても勝ちだ。決戦を前に兵の数は極力減らしたく無いが、戦略目的を間違えてはいけない。クリステル様を殺される、もしくは捕らえられるくらいならば、クリステル様以外の人間が全滅した方が戦略上の損害は低いのだから。


「……わかりました。武運を祈っています」

「はっ、ありがとうございます」


 さて、我らが大将への面通しは終わった。次は同じ旗を仰ぐ同士との友好を深めるべきだな。


「バルテ、頼りにしているぞ」

「ああ、任せておけ」


 良い笑顔で請け負ってくれた。正直助かる。今回の戦いではソラル家の兵が重要な役目を担っていると言っても過言ではない。ソラル家の兵が崩れるということは、クリステル様を守る盾が無くなるということだ。


「バティスト殿、どうぞよろしくお願いします」

「……ああ、任務は全うする」


 う~ん、何故だかこの人からは棘を感じるんだよなぁ。まあでもこちらを陥れようとするような、嫌な感じはしないんだよ。何でかな? まあ人間には相性ってものがあるからな。俺はどうも思わなくても、バティスト殿は俺の何かが合わないんだろう。

たぶんバティスト殿がシャルロット嬢のお兄ちゃんたからじゃないかな?

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― 新着の感想 ―
[良い点] うん、いくら相手がアホだったとはいえ妹の婚約者を追い落として その後釜に座ろうとする(と思われてる)相手にお兄ちゃんとしてはイイ顔はせんわな、 反応からして妹も乗り気な態度見せてるっぽいし…
[気になる点] 珍しく餌の中に混じる主人公 これは間違いなく毒餌。。。。 [一言] 主人公達に守られる、これはヒロインですね(棒読み
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