私の殊技、師匠の殊技
そこ後、シャワーを浴び、ベットにダイブした。師匠との組手で随分と体力を消耗していた私はあっという間に夢の中に入る。
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「あでっ!」
夜中、突如として額に激痛が走った。驚いて飛び起きると……
「師匠?」
目の前に師匠が居た! 師匠は私の寝ているベッドに腰を掛けて、私を見下ろしている。何事?
「今、何しました?」
額をさすりながら、目の前の師匠に問うてみる。すると手を私の前に持って来て……
「あで!!」
デコピンして来た! 師匠は怪力だから、デコピンでもめっちゃ痛い! 酷い! さっきの痛みはコレか! デコピンされたのか!
てか、何でデコピンして来たんだよ!
「相手の近づく気配に気付かず寝ているとは……もし、俺が敵なら今ので死んでいたぞ」
まさかの説教を食らった。本当にまさかだ。デコピンして来たおいて、この言い草……
「これから毎晩、お前が寝ている時に攻撃をする。攻撃される前に起きろ。さもなくば、怪我をするぞ」
「え……」
なんという事でしょう。まさかの安眠妨害宣言されたんだけど! 攻撃する前に起きるって……それ、どんな無理ゲー?
「次からは、武器でやる。気を張って寝ろ」
次はデコピンでは済まないらしい。武器で攻撃って……それ、永眠にならない?
それだけ言うと師匠はベットから離れ、ソファーの方に行った。因みに敵を警戒して、皆んな同じ部屋で寝ている。
取り敢えず、寝よう。気を張って……
「あでっ⁉︎」
また衝撃が来た。次はさっきより痛い。何で攻撃した⁉︎ 飛び起きて師匠の手を確認。
「まさかの剣の柄……」
剣の柄で叩かれた様だ。これは痛いだろう。たん瘤出来たんじゃないか?
「起きろ追っ手だ」
「まさかの⁉︎」
こんな夜に来るの⁉︎ 否、夜だから来るのか! 奇襲は夜って相場が決まっているしね。
師匠は私から離れて窓に近づく。そして、隠れて外の様子を伺い、私を手招きした。恐る恐る近づき、師匠と同じように隠れて外の様子を伺う
「あれが見えるか?」
師匠は外に居る数人を指差していう。距離は若干遠いが十分に見える距離に追っ手は居る。
「はい、見えます。アレが追っ手?」
「そうだ。幸いにもお前の名前で宿を借りた為、まだコチラの居場所までバレてない。少し様子を見る」
成る程。だから私が宿を借りさせられたのか。苦労した甲斐があったなぁっとシミジミ思う。説得 (物理)した甲斐があった。
「見つかったら、どうするんです? 説得?」
「説得に応じる奴らじゃない。殺すまでだ」
随分、物騒な発言である。この師匠、ホントに宝具とやらに呑まれてないの? 大丈夫? 凄い物騒なんだけど!
「やっぱり説得ですよ。(物理)の」
「そんな説得は存在しない」
ツッコミを入れられるました。この人もツッコミ入れる事があるのかーっと妙な感動を覚えた。だってこの人、基本的に無表情なんだもの。何考えてるのか全然分からない。
「コルネリア様は起こさなくてもいいんですか?」
「今は起こす必要はない。しかし、バレれば移動が必要になるので起こすがな」
師匠は追っ手から目を逸らす事なく言う。真似て私も追っ手を見続ける。
「所でお前の殊技を聞いてなかったな。何も無い所から何かを作り出していたが、なんの能力だ?」
「私が答えたら、師匠のも教えてくれます?」
「いいだろう」
という事で私の【闇を操る】殊技を説明した。【影】っと言わなかったのは、これから旅をする上で信頼関係を築くのに嘘を付くのは忍びなかった為である。あとバレた時に釈明が面倒そうだから
「なので、周りには【影を操る】殊技という事にしています」
「成る程」
師匠は納得してくれた
「だから、お前は宝玉を御せるのか。便利なものだな」
相変わらず師匠は私に視線を寄越さず、追っ手を見続ける。追っ手はこの辺りに屯して、なかなかどっかに行かない
「俺の殊技は【殊技殺し】だ」
【殊技殺し】は最大で半径500メートル内いる者の魔力を使う技を一切使えなくする、とんでもない殊技だった。範囲の調整は可能らしい。これを使われると、殊技はおろか、魔法系統……魔力を使う全てのモノが使えなくなる。
なので先程の戦いで、私の手は悉く潰されたのだ。
「半径500メートル……」
かなり広範囲だった。さっき師匠は私の殊技が便利と言ったが師匠の殊技の方がよっぽど便利だろう
「動いた。行ったぞ」
私が師匠の殊技にドン引きしている間に、追っ手は動きを見せていたらしい。コルネリア様達は此処には居ないと判断して何処かに行った様だ
「暫くはお前の名前で通すが、それも直ぐに使えなくなる。それまでに、国外に出たいが……」
飛行船に乗れば直ぐに出られるのだが、飛行船や船などの便利な乗り物は皆、王の息が掛かっており、乗った瞬間に兵が来くるらしい
「地道に歩くしかないんですね」
「そうだ」
先は長そうだ
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その後、一眠りしてから此処を立つ。朝早く、市場で食料を買い漁り、私の影の中に仕舞い、街を出ようとしたが……
「すみません、コルネリア様、師匠。銃の弾、買ってもいいですか?」
銃弾のストックが少ない事に気がついたので買いに行きたい。
「なら、僕は身を隠すローブを買って来る。集合は広場だ。そういえば連絡先を聞いてなかったな。聞いても?」
という事でプライベート用の端末の連絡先を教えておく。そして、2人と別れて銃専門店へ
「身分証をご提示ください」
銃弾を買うのにも身分証が必要なのだ。しかし、いつもなのだが身分証を見せると店員の態度が一変するから見せたくないのだが、見せない事には買えないので見せる。
「銃なんて扱えないでしょ? 辞めたら?」
やはり態度は一変した。そして売ってくれなくなった。面倒だな……
今まで買っていた店なら、説得したので問題なく買えていたのだが、店が変わると店員も変わる。当たり前の事だが面倒くさい
「いや、使えますよ」
「使えるわけないでしょ! この売女!」
此処でも売女呼ばわりされた⁉︎ こんな、ジャージ着た売女がいるものか!
暫く店員さんと押し問答したが、結果は惨敗。チクショー!
「……試し撃ちしても良いですか?」
試し撃ちブースを指差して言う。私の実力を見せてやろう。それなりに上手いぞ!
「時間の無駄。早く帰って」
コイツェ……