最悪のバースデーで最悪のクリスマス・イブ
今日は、12月24日で私の16回目の誕生日です。クリスマスイブでもあるこの日は、私にとって忘れることが出来ない日になりました。彼とのデートに向けてお風呂に入り、ピンクのメイクをしていました。
一戸建ての家に両親と一人っ子の私が住んでいますが、父親は郵便局の仕事をしていて、母親は専業主婦をして幸せに暮らしています。
1年間付き合ってきた彼氏とは、ラブラブな日々を送ってきました。それも、今日で終わりなのです。
私は、身長が145センチで低く体重も40キロになるかならないかを行来していました。童顔に丸顔で可愛いというか小学生のような甲高い声をしていました。
母親が起きて来ました。いつも母親は朝の9時頃に起きてきます。
「おはよー、美羽今日デートなの?」
反抗期の私は、無視しました。
「今日さー、美羽の誕生日じゃんか。プレゼント買ってないんだけど、何か欲しいものある?」
「何で、今聞くの? もっと前から聞いてよ」
「そうなんだけどさ、忘れてたんだ。悪い」
「別に、欲しいものなんてない。もう、出掛けるね。じゃ」
私は、プレゼントなんて欲しくない。貰えるなら本当の母親が欲しい。何処にいるのか分からないけれど。本当の父親も欲しい。私は、施設で保護されてすぐに、この家の子供になった。だから、血は繋がっていない。
私は、朝食を食べずに家を出ました。ダイエットを気にして食べないようにしていました。特に今日は、高カロリーの予感がします。
大学生の彼氏とはお互い幼なじみでした。付き合うと言うことになったのは彼からの告白です。
でも、前から私も幼なじみの土屋陸君の事が大好きでした。だから、その時は嬉しくて泣いてしまいました。
ちょっと遠距離恋愛になってしまいましたが、会えるときはとても嬉しいのです。
待ち合い場所に、指定されたのが駅でしたので、人通りが多い駅の前にあるカフェで待っていました。天気がよく晴れてはいましたが流石に暖かい所に入ってホッとしました。
早く来すぎた見たいで、時間が経つのが遅く感じました。もう、1ヶ月会っていないのです。
ミルクティーをすすりながら、携帯を見ていました。すると、後ろから声がしました。
「美羽、元気か?」
と言う声にもう一人の声がしました。彼の横にいるのは誰なのか知らない女性。見た目は、20代後半ぐらいの大人びた女性だったので、私は、凄く嫌な予感がしました。
「何? 誰?」
「俺さ、この人と付き合うことにしたから」
「はあー?! どういうこと? 誰なのこの人? なんなの? 陸、冗談でしょ?」
「初めまして、中村綾乃と申します。陸ちゃんとは1ヵ月前から交際しています。私もこの町で生まれたんですよ」
「はーーーっ! だから何? 浮気してたの? 最低な男!」
と、陸を殴ると、綾乃と言う女が、
「最低なのは貴方です、女の癖に手を出すなんて、陸ちゃん大丈夫?」
と泣きそうな声で言って、倒れた陸に寄り添いました。
私はその場から立ち去り、そして、悔しくて泣きました。メイクが崩れるのを気にして泣くのを止めましたが、許せないと言う気持ちが強くなって、私はもう一度二人の後を追いました。ストーカーのような行動に出ました。納得がいかなかったのです。
二人は仲が良さそうに手を繋いで、歩いていく。
何事もなかったように。人混みを避けて歩いていると、私がよく行くレストランに入っていくようだったので、私も中に入りました。囲いがしてあって顔とか見えないけど、後ろの席に座れました。話し声が聞こえてくる。
「あの子、信じたかな?」
「美羽? 信じたと思うよ。良かった、殴られただけですんでさ」
「でも、可愛そうだったね」
「あいつ、怖いとこあって女性見せないと信じないんだ。ストーカーになられたら嫌だから。悪いな、彼女のフリなんて頼んで」
私はしっかりと聞きました。演じていたことを知りました。怒りが込み上げてきました。復讐したい。幼なじみでお互い結婚したいと思っていたのに、思っていたのは私だけなのか? 唇を噛み締めて、もう最悪の誕生日、最悪のクリスマスイブ。二人は食事をして出ていきました。私は、彼の事を追いかけていきました。二人は手を振りながら別れたのですが、陸が一人になってどこに行くのかつけました。カップルで歩いている人が多い。陸は早足で、見慣れない道を歩いていく。すると、知らない家の前に来て回りをみて、チャイムを押して中から男性が出てきて、中に陸が入っていく。
家の前で寒いのを我慢して出てくるのを待っていました。出てくるようすはなかった。2階建ての家でカーテンは閉まっていました。
私は座り込み待っている事にもしびれを切らし、思いきってチャイムを押してみました。
すると、1、2分するとドアが空き、中から金髪のカッコいい男性が出てきました。
「どちら様ですか?」
「中に陸がいるでしょう? 話がしたいんだけど」
「ああ、陸の元カノ? 陸なら中だけど入る?」
「お邪魔します」
「でも、見ない方が良いと思うよ」
「どうして? 中に女性がいるの?」
「女性と言うか......」
2階の部屋に通されると、中から陸が赤ちゃん言葉を使っている声が聞こえてきました。
「可愛いでちゅね。いい子でちゅね」
と言う声に、私は何かと思った。赤ちゃんを抱っこしている女性がいる。
「陸、あんた結婚してたの?」
「美羽!」
「どちら様?」
赤ちゃんを抱っこする女性が言う。私はすべてを理解しました。この家は妻の実家で、陸は大学を辞めこの土地で働いていたことも分かりました。私は、家を帰る途中で二股をかけられていたことに怒りと言うより自分があわれに思いました。ずいぶん前から、騙されていたことを知らずに一喜一憂していたことや、偽の彼女を作って私と別れようとしたことを思い、自分がいい女だとは思われていなかったことを思うと、自分に自信がなくなりました。体が凄く冷えていると感じて歩く速度が早くなりました。泣きたいのを我慢していました。彼に対する思いはまだあります。
家に帰ると母親が、
「あんた、帰ってきたの。早いわね。今からでもクリスマスイブと誕生日のパーティーする?」
「いい。今日はもう寝る」
「何で、何かあったの?」
「聞かないで!」
私は、思い詰めたような顔をしていると思いながら自分の部屋にいき、ベッドに横になると思い切り泣きました。声に出して思い切り泣きました。