とある旅路 王都への旅立ち編7
「村に…到着…しましたね…。」
ゼェ…ゼェ…と息を切らしながら、抱きかかえてきた子を見る。見た感じ高校生くらいだ。あの森でなぜ倒れていたかは気になるが、この子が目覚めなければその話も聞けない。疲れてはいるが、近くの診療所まで運んであげた。
「これはかなり深くやられてますねぇ。どうしましょう〜。」
この医者の頭もかなりやられちゃってるみたいだ。なんだかオネエみたいで、さらに緊張感もまるでない。
「私の魔法で治るかしらぁ?とりあえずやってみまし
ょうか。えいっ!」
(((あれ、今、えいっの部分だけゴツイおっさんの声だったような…。)))
その子の体の傷はみるみる埋まって消えていき、数秒後にはあとすら残っていなかった。
「これで治療は完璧だわぁ。でも、あと1日安静にしといたほうがいいわねぇ。」
「そうですか。ありがとうございました。」
短くそう言うとすぐに部屋から出た。あの人の近くにいたら、自分もああなってしまいそうで…。とりあえず治ったのは良かった。
勇者は診療所の外で壁にもたれかかっている魔王様の元に行くと、彼女の傷が治ったことを伝えた。
「そうか、治ったか。」
短く言い捨てるとフッと起き上がり勇者の方を見る。
「勇者はあの子をどうするつもりだ。というか、どうしてあげたい?」
突然の魔王様の質問に一瞬ひるんだが、しばらく悩んだあと、
「あの子はまだ子どもっぽいですし、親元まで連れて行ってあげるのがいいと思います。それまでは僕たちと一緒に旅をするという形で…。どうでしょうか?」
と言う結論を出した。正直仲間になってくれるとありがたいがまだ子どもっぽいのでそれも叶わない。
「あぁ、賢明な判断だ。ただし、私が魔王であることは絶対に言うなよ。大きな問題になり兼んからな。」
「もちろんですとも。ちゃんと守りますよ。」
そう言うと、魔王様はそうか、と頷いた。
今はただ彼女の回復を待つだけなので、今日はここの村で休んで行くことにした。
「勇者〜。暇〜。」
いつもの魔王様に戻ったようだ。今はちょうどお昼頃、昼食を食べ終え、宿舎に帰ってゴロゴロしている。流石に腕が痛い。
これ明日絶対筋肉痛になるな。
「魔王様。僕はもう疲れたんで寝ていいですか?魔王様はそこらへんで遊んでてもいいですよ…。」
「いや!勇者も来るの!」
えぇ〜、といやな声を上げながらも、魔王様のことが心配なのでついて行ってあげることにした。
「ここはギルドですかね。」
村を散歩中、右手に大きな建物があったのではいってみるとかなりの冒険者がいた。レベルとしては上級ぐらいだろうか。
魔王城に近いせいか皆いい装備を持っている。せっかくだし、ギルドに再登録しておくことにした。全く更新せずにほったらかしにしてしまうと除名されてしまうことがあるのだ。時期的にもギリギリだったのでタイミングとしてはまさに完璧だった。
「ぎるどってなに?」
「ギルドっていうのはですね、冒険者たちが頼まれた事をするところです。敵を倒したり、物資の調達だったり。それをクリアするとその分のお金がもらえるんですよ。」
中に入り、クエスト掲示板を見る。
・ゴーレム、ゴブリンそれぞれ10匹討伐
・ポーション用の天然薬草の採集
・ファイアドラゴンの巣の調査
なかなかいろんなものがある。
「ん?これって…。」
「どうかしたのか?そんなキョトンとして。」
「このクエストの内容見てもらっていいですか?」
そう言って魔王様を掲示板の高さまで持ち上げた。
「えーと。伝説の勇者の捜索…。」
二人でキョトンとしている。そして無言でお互い顔を見合わせ、同じタイミングで首をひねった。