とある旅路 王都への旅立ち編6
―王都 参謀本部―
重要 先日のリーリ村襲撃事件について
・リーリ村を襲ったのは覆面をした40名ほどの魔導士とみられている。その魔導士たちのレベルは戦闘跡から約レベル7、魔導大学院の最高研究者レベルだと思われる。
しかしながら、それ以上に魔法を戦闘用として極めている模様。軍用魔導を使った痕跡もある。未だ足取り、目的共に不明である。
・早急に各村の守備を固め、すぐに連絡がつくようにしておくこと。特にリーリ村周辺には軍を送る予定である。
―リーリ村近くの森―
「ここまでくれば安心ですかね…。」
あのリーリ村襲撃にあった後、二人は近くの森に身を潜めることにした。安心、とは言っても勇者はどうしてもあの光景が忘れられなかった。
「まぁ、そうだろうな。でも、どこに潜んでいるかはわからんから注意しとけよ。」
魔王様は辺りを見回しながら安全かどうか確認しているようだ。魔王様が本気の姿になると言葉遣いとかが変わるらしい。なんか普通に大人びた女の人っぽい。
しばらくして森が明るくなってきた。太陽が昇ったらしい。すると、向こうの木の根元に人が倒れてるのが見えた。
「魔王様!あれ!」
人の方向を指差すと魔王様も気付いたようで、二人で根元へ駆けつけた。そして、体をゆっくりと持ち上げ、平らな地面の場所へ移動させた。
「かなり深くまで切ってるな…。勇者は回復魔法は使えるか?」
「使えるはずですが、そこまでの大怪我は治せないです。応急処置程度ですかね。」
「そうか…。よし、やらないよりはマシだろう。応急処置したら近くの村で診てもらおう。」
とりあえずその子に回復魔法をかける。下腹部をかなりえぐられているようだった。
出血も酷く、血を止め、患部を保護するので精一杯だった。
「ひとまずこれでいいでしょう…。」
「そうか、それなら良かった。とにかく村へ急ごうか。私たちも無事、と言うわけではないしな。」
「近くの村までは30分はかかります。その間、定期的に回復魔法をかけておきましょうか。」
「そうだな、頼んだ。ただ自分の魔法量は気を付けておけよ。自分で歩けなくなったら困るからな。」
よっ、とその子を抱きかかえると森を抜け平原地帯の道に出ることができた。まだ後ろでは煙が上がっている。
「そういえば、なぜ魔王様は人間を助けたのですか?
魔王って人間を殺したりする者たちの頂点に君臨するものですよね?」
「嗚呼、うん、そうだな。その話はまた今度にしよう。」
魔王の顔は少し俯き、暗い表情を見せた。