とある旅路 王都への旅立ち編4.5
―王都 宮殿の一室にて―
「一体いつ帰って来られるのでしょうか…。」
悲しげな声を上げながら、一人だけでは有り余るような部屋の真ん中で呟いた。
勇者が王都を出てから約1年。連絡用にと持たせていた魔石結晶はもう随分と前からうんともすんとも言わなくなっていた。ただただ、心配であった。
「あの時なぜ…何故私の側に置いておかなかったんだろう…。こんな感情になるのは分かりきっていたはずなのに。」
その女は後悔していた。勇者が出発してからというもの、毎日魔石でやり取りをしていた。本当に日常のたわいもない話だ。それでも、勇者の声を聞くと胸がすっと軽くなったような気がしていた。でも、今はそんな声は聞こえない、聞けない。もしかしたら勇者はもう…。と考えてしまい、落ち着きがなくなることが多かった。もう、従者や周りの人間がどうにかできるものではなかった。
その頃だろうか、女の腕に妙な切り傷が目立つようになったのは。周りもすぐに気がつき、声を掛けたが、
「転んでしまっただけですよ、大丈夫です。」
そう言われて、心配ではあったが何もすることができないままでいた。
ある日、従者がその女の部屋に行くと悲鳴をあげてその部屋から出ていった。その後事情を聞いたところ、部屋一面に目がボタンの人形が彼方此方に散乱して、中には血痕のついた人形もあったらしい。周りも流石に危機感を覚え始め、国中の名医を呼び、見てもらったが、どうにもならない。と返答されるだけだった。
―魔王城―
「ハックション!うぅ〜…。」
「ん?どうしたんだ、風邪か?これだから人間は。」
「そうかもしれないですね。なんか寒気もしますし。ちょっと休憩もらいますね、魔王様。」
「うん、お大事に。」
これは本格的に風邪ひいちゃったかもな…。ゆっくり寝よう。勇者はそのまま自分の割り振られた部屋に行き、ベッドに寝転んでそのまま次の日まで寝るのだった。
これは魔王様との旅の前の話。
ついに「元勇者とロリ魔王と」を5回出すことができました。最初、全くの思いつきから始めましたが、なかなかストーリーができるものですね。
まだまだ拙い文章ですが、読んでくれると嬉しいです。感想も書いて頂ければ幸いです。