とある旅路 王都への旅立ち編4
「魔王様、なに食べますか?」
テーブル横にあったメニュー表を魔王様に見せてあげた。ここはリーリ村の一角にあるレストランだ。
さっき村に入る前に魔王様が誰かの視線を感じたということが気になりはするが、出発してからまだなにも食べてないので、すぐにレストランに入ることにした。
「この、おむらいす?ってものにする!」
「じゃ、僕もオムライスにしますね。すみませーん。」
店員さんを呼び、オムライスを2つ注文した。
「魔王様、これからの旅の件なのですが。」
「ん?何かあったのか?」
「このまま歩いてたらゼッッッッタイに!王都につけないんですよ!いくらなんでも歩きじゃ着きません!馬があればとも思いましたが、そんなの魔王城になかったし、借りるお金もほとんどないですし、奥の手を使いましょう。」
魔王様の顔はキョトンとしていた。何か言いたげな表情をしているようでもあった。
「魔王城にも馬はあるよ、ほらあの首無し馬。」
首無し馬というのは名前の通り首が無い馬のことだ。魔王様の愛馬でもあり、すごく仲が良く、とても俊敏ではあるのだが。
「あんな魔物目立ってしょうがないじゃないですか!あれ乗ってるの見られたら、魔王城からの者だってすぐにバレちゃいますよ!」
「そ、そうなのか…な…。」
おっと、強く言いすぎてしまった。
「気を取り直して、その奥の手というのがですね。東の帝国から王都までが繋がってる鉄道があるんですよ。それに乗れれば少しは早く着けるはずです。」
「鉄道…?そんな便利なものができてたのか!」
東の帝国から王都まで繋がっている鉄道。通称モード鉄道。帝国と王国が条約を締結した時に、物資輸送を簡単に行えるようにと作られたものだった。東の帝国の都市「モード」に行けばそのまま王都へと行けるようになっている。
「鉄道はすごいですよー。景色も綺麗で。」
「乗りたい!!!」
魔王様ははしゃいでいた。まあ、子供だしな。
「じゃ、行き先は決定ですね。あとは…。」
―同時刻、王都―
「そう、勇者様、見つかったのね。」
美しいドレスに身を包まれたその姿は本当の女神ともいうべきだろう。それほどまでに美しかった。
「勇者様と一緒にいる子供はどうなってもいいから、勇者様を連れてきなさい。もちろん傷はつけないようにね。」
従者にそう伝えると部屋に姿を隠すように入っていった。腕には沢山の切り傷、部屋には無数の勇者を象ったものであろうか、人形が並べられている。壁一面勇者の顔で覆い尽くされていた。
「これで、やっと、会えますね…。勇者様…。」
不気味な笑みを浮かべるその女はベランダに立ち、月を見上げる。