とある旅路 王都への旅立ち編
僕は勇者だ。
いや、今は「元」とつけるべきだろうか。3年前、勇者として国から選ばれた僕はそこらに居る雑魚魔物を倒してレベルを上げ、仲間を集い、そして魔王城に向かっていた。
まあ、勇者だから魔王城に行って魔王を倒すのが当たり前なんだろうけど、僕の場合そうはいかなかった。
魔王城の最上階、魔王のいるところに着くまでよかったんだがこの魔王、ロリだった。小学生くらいの可愛い女の子って感じだ。
(これが魔王か……?)
疑いを持ったが、考えてみればこの悪しき魔王城に幼女なんているわけがない、だから倒そうと思ったのだが、攻撃をわざと喰らって、そのまま僕は倒れてしまった。
分かるだろう?
なんか小さい子相手に申し訳ないし、ちょっと遊んであげようかなってなるこの気持ちが。
まぁ、その後、なんやかんやあって魔王が僕を蘇生した。
「お前、私の元で働かないか?給料は出ないが、勇者やるよりよっぽど良いだろう?というか、お前が私の部下をほぼ全て倒したからこの城の維持が大変なんだよ。責任取れ」
というわけで現在に至る。幼女に「責任取れ」なんて言われた日には従わない訳がない。
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そんな事件からちょっと過ぎた頃。
「王都に行きたい!」
魔王はなかなか、わがままで手のかかる子だ。何かあると大体僕を呼びつける。まぁ、僕以外にいないからそれは仕方がないんだけれども。
「王都……ですか?」
今まで魔王城に引き篭もっていたと聞いていたから、こんなお願い初めてだった。支配者として、魔族の絶対的な王として君臨し続ける魔王という職業はどうやら自由がほとんどないらしい。
これは上に立つものとしての当然な責務らしいのだが、そんなものは僕にはさっぱりわからない。
「王都には沢山の店があって、綺麗なとこなんでしょ?だから、行ってみたいって思ったの!」
魔王は無邪気な(作り)笑顔を見せながら僕をみてくる。
(((これがたまらないんだよなぁ)))
そう思いながら咳払いして、にやけているかもしれない僕の表情を一度正しておく。
「ですが、王都までは結構距離がありますよ?王都近くまでの転送魔法陣を前に魔王様が壊しちゃったじゃないですか。」
そう、王都まではかなりかかる。僕も旅を続けながら王都から魔王城に行ったからその距離、時間もよくわかる。転送魔法陣があればいいのだが、魔王様がお茶をこぼして壊してしまっていた。
まさかお茶をこぼしたくらいであんな爆発して壊れるとは想像できなかった。転送魔法陣を直すためには、転移する場所にも魔法陣を用意しなければいけない。つまり、どのみち王都へは行かなければならないのだが……
「いや、今行きたい!今すぐに!」
仕方ない、と一緒に行ってあげることにした。僕しか周りにいないのだから一緒に行くのは至極真っ当な結果なのだけれど。
移動用の馬車とか何にもない魔王城から歩きで目指すのは苦労しそうだ。僕が勇者の頃は馬車を使ったりしてたから、まだ楽だったかもしれない。ただ、魔王が民間の馬車に乗るのは危険過ぎるから、できれば避けたい……とりあえず、魔王様がぐずりだすと面倒なので、出発することにした。
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「なあ、これ、おかしくないか?」
「何がです?魔王様」
「これ、肩車ってやつじゃないか?一応、この見た目でも魔王だぞ?これじゃただの子供連れのお父さんじゃないか!?」
「いや、威厳のある魔王の風格がありますよ、この方が」
なんとなく怒る気はしたが、なんかやってみたくなってしまった。けれども上で暴れ続ける魔王様に、危ないですよ、と注意をしながら出発した。
こうして王都へ向かう元勇者とロリ魔王の旅が始まった。
結果として、ただの旅行じゃなくなってしまうのだが、それは今から語っていこうじゃないか。
第1話見て頂きありがとうございます。
初投稿でまだまだ拙い小説ですが、続きも見ていただけるとありがたいです。