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番外編-成り上がりに憧れて?

数が溜まったら彼ら三人のサブタイを纏めて更新します。

現実が見えてない彼らが一番堅実という洒落。

 

 時間の経過で変化しているのは三世達だけでは無い。成長にしても違うにしても色々な場所でそれが起こっている。この高校生達のいる元々の拠点でもその変化は顕著だ。

 なんといっても人数が違う。生徒の人数が四十人後半はいたはずなのに今は二十人程度にまで減ったのだ。

 別に悲劇があった訳では無く、高校生だった彼らもこの世界に大分適応し自立しただけだが。


 そしていつものように大部屋の隅で、小さくなって男三人が話す。すみっこ三人組と呼ばれている彼らだ。

「はい。第何回か忘れたけど定期反省会の時間ですよー」

 小和田修(オワダオサム)、あだ名オワタが小さい声で二人を呼びかける。

 それに合わせて二人は小さい声でそれを賑やかして盛りあげる。口でどんどんぱふぱふと言うだけだが。

「まずがっくん。新しい異世界チートっぽいこと見つかった?」

 がっくんと呼ばれた男。大類岳人(オオルイガクト)は首を横に振った。

「すまない。何も思いつかなかったし何も見つからなかった。本当にすまない」

「いいんだよがっくんさん。がっくんさんが無事ならそれで」

「すまない。オワタさん」

 小和田と大類が小芝居をしながら抱きあう。いつも話が脱線するのが三人の特性で、習性だった。

「いいはなしだなー。それはそれとして、反省会に戻りましょうねー」

 手をぱんぱんと叩きながら二人に注意をしているのが村井高志(ムライタカシ)あだ名がライ。

 彼ら三人合わせてすみっこ三人組と言われている。いつも部屋の隅を陣どって小さくなっているからだ。

 最初は不審がられた彼らだが、今は色々あって彼らを悪く思う者は一人もいない。ただ三人は自己評価がとことん低い為それに気づいていないが。

 今日も皆の邪魔にならないように部屋の隅で、新しいことを考える。


「話を戻して次のお話。新しい企画についてです。俺が実働として王都にまで行って調べました」

 小和田の言葉に合わせて二人が拍手をする。他の人に迷惑にならないように小さくだ。

「えー。俺が、俺達がアイドルP計画ですが。速攻で不可能と判断。ぶっちゃけ失敗でした」

 小和田の言葉に二人はえーと声を荒げ不満を顕わにする。

「どこが失敗なのか言ってみ?え?なんたらなんたららの曲と踊りマルコピできるんやぞワシ。え?」

 大類が小和田を脅すように煽りながら問い詰める。それに小和田がハンカチを噛む真似をして悔しがる。

「しょうがないでしょ!こっちの世界の吟遊詩人単純にレベル高いのよ!こっちから元の地球に持ってきた方が成功するレベルよ!」

 エアハンカチを噛む真似をしながら小和田が女性の声真似で答えた。

 彼らの計画は地球のアイドルの技術をこっちで使おうという事だった。アイドルという文化の無いこの世界にアイドルを根付かせ、アイドルを育てる。

 そして代わりに彼らは楽に生きる。そんな夢を見ていた。

 失敗した理由は自分達と同じような転移者が過去に山ほどいたからだ。異世界人がこの世界に来る頻度は割と多い。集団転移ですら、十年に一度くらいの割合で来るからだ。少人数の場合はもっと多い。

 それもかなり昔から異世界からの来訪者はいる。その中にはアイドルだった者すらいるからだ。そういう理由もあり、吟遊詩人だけでなく、中世世界と比べたらはこの世界のあらゆる物はレベルが高い。

 吟遊詩人の上位の者は歌声だけで人を魅了する者すらいるそうだ。


「むぅ。こっちのクラスメイトの女の子沢山呼んでユニット組ませてアルファベットと数字の名前つけようと思ったのに」

 大類の言葉に小和田が否定する。

「それしても絶対勝てないぞ。本家クラスじゃないとこっちで生き残るのも無理だ」

 小和田の言葉に二人は難しい顔をした。これで異世界チートっぽいことはまた企画段階からやり直しとなった。

 議会が行き詰まったあたりでいつものようにお茶と茶菓子が出てきた。

 今日の茶菓子はきんつば。四角くて白い色の角きんつば。中に黒い餡がたっぷりと入っている。一口齧るとしゃりと砂糖の音がした。砂糖たっぷりの餡子が体にしみる。

 しかし甘すぎる。喉がひりつく。それを熱いお茶を飲んで解消する。口の中の甘さが抜けて渋みからの爽やかな緑の味が鼻に抜ける。

 あわせた訳ではない。が、三人はほぅと口から声が漏れた。

「うむ。うまい。誰だが知らないがいつもお世話になる。お礼が欲しい時は是非言ってくれほしいものだ」

 大類の言葉に二人も頷く。

 誰か未だにわからない。わからないが、ここ数ヶ月、三人そろうと必ず何か茶菓子を用意してくれたり進行を助けてくれたりと何かしら協力をしてくれる。

 出てくるの茶菓子は何故か和風オンリーだ。それもこの世界でそうそう見ないような物ばかり。相手を信頼している三人は深く考えず素直に厚意に甘えることにしていた。


「それで次の議題だが、何か変わったこと有った人いる?無いなら次行くけど」

 何か新しい能力や技術、その他不思議なことがあった場合は報告を欠かさないようにしている。何故なら楽して生きる為に手札を集める必要があるからだ。

 既に狩猟だけで生活をまかなえているがそれすら彼らは良くわかっていない。だからこそ、彼らのヒエラルキーはかなり高い物となった。三人は積み重ねた苦労を無償で同級生に譲ってるからだ。


「はい。一応成長だと思う。スキルに名前がつきました」

 大類の言葉に二人はおーと驚愕して拍手をした。

「がっくんの能力ってあの何も切れない不快感はんぱない剣を生み出したアレ?」

 村井の言葉に頷く大類。彼は手のひらの上にキューブ上の物体を生み出した。

 キューブはゆっくりとくるくる回転している。青白く光るそれは非常に幻想的な美しさを見せている。

「スキル名夢幻(むげん)の開拓者。効果は良くわかりません」

 大類の言葉よりも二人は手の上にあるキューブに気を取られていた。

「これ凄いな。それでその手の上のキラキラ、どんな能力があるんだ?」

 小和田の質問に大類が笑顔で答える。

「知らぬ。多分何も無い。この能力自体模型作成みたいなもんだと思ってる」

「うーむ残念。中二っぽい名前から強い能力かと思ったんだがそうでもないらしいな」

 小和田が笑いながら大類をちゃかす。いじれそうならとりあえずいじっとけ。それが彼らのコミュニケーションだった。


「これ幻術だなきっと。分身とか出来るんじゃね?いや出来るはず。お前は忍者なんだ」

 村井の言葉に大類は納得した。そうか自分は忍者だったのか。

「よし。試してみよう」

 手を忍者の印を結ぶような真似をして何かを唱える。

「うむ。ラーメンのアレっぽい雰囲気は出てるな」

 小和田の言葉を無視して大類が何か真剣な表情でがんばる。

「秘技!分身の術!」

 その瞬間大類の分身と思われる何かが出現した。ただ、それを大類と見ることはどう見ても出来ない。

「あー。今更の質問だが、お前美術とかの成績どうだっけ?」

 小和田の質問に大類が困った顔をしながら答えた。

「絵の時毎回先生が苦しそうな顔をしながら俺の絵を見ていた。今のお前らみたいな顔だ」

 大類の言葉に二人はとても納得した。

 そこにいる分身は大類とは似ても似つかず、顔のバランスとかパースとかそういう細かい問題ではない。ギリギリ人かどうかの境目の見た目。見ていて不安になる造形をしていた。

 一言で言うなら失敗したフィギュア。もっと言えば邪神像だ。

「とりあえずその産地直葬の邪神を消してくれたらとても嬉しい」

 小和田の言葉にしょんぼりしながら大類は自分の分身を消した。


 大部屋にいる生徒の数も大分減っていた。大体十五人くらいだ。教職含めた総数でも三十人ちょいくらいだろう。生徒が出て行った理由は様々だ。

 喧嘩、市街地が遠い、集団生活がつらい。美味しい物が食べたい。

 残った理由もまた様々だ。集団でいたい。先生と離れたくない。一人で生きられる自信が無い。


 彼ら三人も、いずれ自立して自分の拠点が欲しいとは考えていた。だが出て行きたくない理由が一つ、出て行けない理由が一つあった。


 まず出て行きたくない理由だが、この拠点の利便さだ。

 そのうちの一つが結界。

 この三人は毎日の実験の結果。周囲に結界のようなものが張られていると理解した。そして結界はドーム状で、その中に人以外の生き物は入ることが出来ない。また同時に攻撃も入らないようになっているようだ。

 そして更にドームの境界線も発見した。この境界線を利用したら非常に簡単に安定した狩りが出来た。


 例えば誰か一人が結界の傍まで敵を誘導する。そしてすぐに結界の中に入る。これで一方的に攻撃が出来る。相手が石など遠距離攻撃をしてきてもそれが攻撃と判定を受けたらそれすら通さない。後はちくちくと槍ででも攻撃したらそれだけで勝てる。他にも結界の傍に罠を仕掛けるなど色々発案した。

 今現在その狩猟方法を三人は行っていない、他の生徒がそれを行っている。

 最初三人がそれで荒稼ぎをしていた。それを他の生徒が恥を忍んで教えて欲しいと聞きに訪れた。

 彼らも別に間違ったことをしているわけでは無い。生きる為に少しでも方法が欲しかっただけだ。


 そしてそのことに対して三人の意見は一致していた。自分達の知識を全部隠さずに教えた。

 罠の貼り方から安全な獣の釣り方。そして解体の仕方から結界の判断の仕方も。

 何故教えたかと言うと彼らの自己評価が低いことが一番の理由だろう。

 自分達みたいなのが狩場を独占するなんて怒られる。きっと村八分になる。そう思い三人は必死に自分の技術を説明して狩場を譲って逃げた。

 そうとは知らず教えを受けた生徒は三人に感謝をして礼をしようとする。だが何故か彼らはいつも逃げる。

 そんなことを三人は繰り返した。困った生徒に技術と知識を提供して、お礼を逃げて受け取らない。今彼らに恩の無い者はこの拠点の中にいない。

 それほど大きなことをしているが、彼らは未だにその実感も無かった。人に感謝されることに慣れていないからだ。分け与えるのは当たり前。でも自分が受け取るのはおかしな話だ。彼らの自己評価の低さは一種の歪んだ状態とも取れるほどだった。


 もう一つ、出て行けない理由があった。この手元にあるきんつばだ。

 誰かが自分達の為にいつも準備をしている。目的はわからないがきっと自分達に何か用事があるはずだ。それを教えてくれるまでは拠点にいよう。三人はそう決めた。

 このマネージャーの謎が解けない限り三人は拠点から出るわけには行かなかった。


「じゃあ次は戦闘関係の確認しよか?」

 小和田の言葉に頷く二人。彼らはこの数ヶ月。常に実戦を続けていた。技術もだが、経験こそ財産になると信じているからだ。時には遠方の害獣退治にまで参加していた。

「まず俺オワタのオワってない武器から。今週は武器が破損してないからありがたいわ」

 小和田そう言いながら槍や短剣を取り出す。そして最後に一際目立つ道具を取り出した。大きな弓だった。

 弓自体は普通の弓。何回も試作してようやく形になった普通の弓。ただし矢が特殊だ。鏃が白く、何故か返しがついている。矢自体の特性はわざわざ燃えやすい様に特殊な油を塗っている。

「弓を射る時に俺の能力で火をつけて燃やす。簡易火矢。対象を燃やした上で足止めが可能。熱が高まると鏃が爆発する為火力も十分にある」

 何度も使っている愛用の武器だ。テスト時に兎に矢を放った時は時間差で兎が爆発したこともあった。


「次はライ。説明よろ」

 小和田の言葉に頷く村井。短刀と煙玉数個。それとマントを一枚見せた。

「今回更新も破損も無し。人間の目には全く影響なくて獣の目にだけ効果ある煙玉と普通の煙玉。それと解体用のナイフに透明マント」

 村井のスキルによる効果で生まれた透明マント。使えるのは村井だけだがそのマントを羽織った瞬間から二秒だけ消えることが出来る。

 しかし相手に接近や攻撃を行うと透明化は解除される。あくまで臆病な村井の気持ちとスキルがかみ合った時だけの道具だ。それでも、非常に強力な道具なことには変わらないが。


「最後はがっくん。説明頼む」

「あいよ」

 小和田の言葉に軽口で返し、そして槍を一本そこに置いた。ただの手作りの槍。そのはずだが、それは非常に禍々しい雰囲気をかもし出す。それもそのはず。この槍の刃の部分は魔物の体から生えていた棘で作られているからだ。

 木の棒に十数センチの棘をつけて加工した手作りの槍。彼らは何故か武器を買うという発想が無く作り続けていた。

 買った方が楽なのに何故かわざわざ武器を作り続ける。鉄の装備が買える時も彼らは爪や牙の武器を使っていた。

 そんな生活の時、偶然、本当に偶然魔物と遭遇した。はぐれだったのかそれとも何だったのかわからない。体長三メートルは超える化物。

 二足歩行で歩き体から大量に棘が出ている。顔が無く胸の部分に目と口がある。本当の意味での化物だった。

 彼らは必死に戦い、それに何とか勝つことが出来た。大類が無我夢中で突き刺した槍が急所に当たったのかそのまま消滅した。

 その時何故か一本だけ棘が残っていた。それを槍に加工した。何故か大類以外がそれを使うことは無かったが。使いたいと思わなかった。

「というわけでいつもお世話になっているめちゃつよ槍大先生でございます。お前ら敬え俺も敬う。いつもお世話になってます!」

 大類が槍に深いお辞儀をして頭を下げる。二人もそれに習ってお辞儀をする。もちろん深いお辞儀だ。その態度はまるで舎弟だった。

 変な方法だが、彼らはこの槍をとても大切にしている。この槍が本当に強いからだ。


 まず単純な強さ。鉄どころか鋼鉄すら普通に貫く。次に硬い。鋼鉄を貫いた時すら刃こぼれ(棘こぼれ?)一つしなかった。

 そして丈夫だった。棘だけで無く普通の木の部分すら一度も破損したことがない。

 既に三十を超える戦闘をこの槍で経験しているが、劣化が一つも見られなかった。


「大体こんな感じかな?気づいたら俺達も強くなったなぁ。今なら冒険者になっても馬鹿にされない位にはなれたかな?」

 小和田の言葉に村井が首を横に振る。

「まだまだだろう。他の人すげー強そうだし体でかいし。もっと覚えて強くならないと冒険者にはなれないだろ」

 村井の言葉に二人も頷いた。ガラの悪い集団が多い冒険者を見て、なるならもっと強くないといけないと思っていた。

 三人だけで魔物を倒した時点で、鉄級相当の腕になっているがそれを三人に知る方法は無かった。


「最後に何故かわからないアレ確認しよう。減っていると良いんだが」

 小和田の言葉に頷いて。大類が声を出す。

「秘書さーん。アレお願いしまーす」

 大類の言葉が終わらないうちに気づいたら三人の足元にアレが届いていた。アレは布袋と一枚の紙だった。

「秘書さん本当どうやってるんだろこれ。意識しても全く姿が見つからない」

 小和田の言葉に村井が悔しそうにしていた。

「完全に俺のスキルの上位互換じゃないですか。ぐぐぐ。ライ悔しい!」

 村井の言葉に二人が笑った。

「逃亡のスペシャリストかっこわらい」

「チキンの王の中の王。スーパービビリ」

 二人の煽りを村井は無視した。話の流れが変わるからではない。単純にマジで悔しいから放置した。


「とりあえず中確認しよう」

 村井の言葉に二人は頷く。

 まずは布袋を空ける。中には金貨と銀貨が入っていた。そして紙はその額を計算した紙だった。



 あらゆる技術を伝授する三人に同級生はお礼の意味も込めて色々送ろうと考えた。その中には彼らに恋をした女生徒もいた。

 だが彼らはその全てを逃げて隠れた。気づかないうちに彼らはチャンスを逃していたのだ。

 とにかくお世話になった人が多い。何とか彼らにお礼をと考える生徒集団。逆に断ることにも逃げることにも疲れた三人。

 折衷案としてマネージャーが代理で受け取るという形になった。

 いつもお世話になっているマネージャーが貰ってくれるならそれで良いや。そんな気持ちだったが彼女は一銭も受け取らず管理だけした。彼女もまた変人の一人だった。

 貰った額を誰からいくら貰ったか記録していた。そしていつからか四人にとってそれはお礼では無くカンパとなった。


「というわけで増えていくカンパのお金。一体何のカンパなのかもわからないけど」

 小和田の言葉に二人が悩む。そして大類がわかったという顔をしてしたり顔で言い放った。

「それを看破するのが俺達の仕事、だろ?」

 大類を二人は冷たい視線で見つめた。

「やめようがっくん。それは面白くない」

 村井の突き刺すような言葉に大類は崩れ落ちた。

「お前らは……止まるんじゃねぇぞ……」

 大類が自分の言葉をもじって冗談を言うが二人は完全に無視の構えだ。

「寒すぎて寒波が来てますね」

 村井の言葉に大類は起き上がり、大類と小和田が冷たい視線を向けた。

「うん。俺達に洒落のセンスは無いな」

 小和田の言葉に二人は悲しそうに頷いた。


「さて話を戻そう。カンパをどうやってみんなに還元するか。とりあえず額を確認しよう」

 村井が袋の中の金銭を確認して、大類が傍にある紙を見て袋と合わせて確認する。そして二人はズレが無いと確認し終わった。

「問題無し。計金貨二十枚と銀貨五枚でした」

 村井の言葉に小和田が頷く。

「うむ。これは大変な金額です。我々への期待とも取れるでしょう。ちょっと吐きそうになってきた」

 額の大きさ、期待の大きさ。そしてその期待を裏切った時の事を考えて気持ち悪くなる小和田。気持ちは三人一緒だった。

「これは失敗出来ないな」

 村井の言葉に唾を飲む二人。そして意見を出し合った。


 技術本を買う。人を雇う。罠を買って共同財産にする。

 色々意見を出すがいまいちピント来ない。自分達への自己評価が低いからか、そんなことに使ったのかといわれるのがとても怖かった。

 元々は唯のお礼の金どころか技術や道具の使用料に近い。それすらも彼らは既に忘れていた。

「うーむ。使わないと怖い。でも使わないとどんどん増えていく。一回使い切ってもういりませんってしないとまだまだ増えるカンパ。あわわわわわ」

 小和田の言葉に三人とも慌てふためく。必死に考えるが答えが出ない。だがそんな時に大類に閃きが訪れた。

「そうだ。わかりそうな人に聞こう!」

 大類の言葉に小和田が尋ねる。

「誰かいるか?俺達のようなボッチっぽい何かに知り合いが」

 大類は頷き、白紙の紙を自分の目の前において呟いた。

「というわけでマネージャー様。何か我々に意見をー」

 そのまま大類は地面に伏せ五体投地をした。二人もそれにならって同じ姿勢を取った。

「「「マネージャー様ーお恵みをー」」」


 三人の怪しい儀式に大部屋にいる他の生徒はそれをスルーした。いつものことかと思っていた。

 むしろ怪しい行動や不思議な動作をした後の方が彼らは何か凄いことをすると知っていた。最近では彼らの奇行を見る方が安心する人も出てきたくらいだ。

 そして彼らは数分ほど怪しい儀式をして、その後紙を拾った。


「さすがマネージャー様。答え書いてあるわ」

 大類の言葉に小和田がさすマネさすマネと良いながら喜んだ。


『調理器具とか料理関係や冷蔵庫など生物を保存する方法があれば皆喜ぶと』

 その答えを見た三人は驚いた。その発想が全く無かったのである。

「そうか。俺達は狩ったあまりとかでそれなりに肉とか食ってるがそうでない場合は

 肉とか食えないもんな」

 小和田が呟く。一応コルネの好意で週一回商人が売買に来る。その時に食材は買うが、

 それでも調理は今適当な鍋程度しかなく、冷蔵庫なんてものも無い。

「よし。次の目的が決まったな」

 大類の言葉に二人は頷いた。

「うむ。まずは冷蔵庫だ。がんばって仕組みを調べて作るぞ」

 小和田の言葉を皮切りに三人はハイタッチして新たな決意を胸に秘める。

 彼らに物を買うという発想はあまり無いようだった。


 未だに彼らがマネージャーと呼んでいつも傍にいる女性に三人は気づかなかった。

 気づいたら気づいたで問題が起きるが。小和田に熱い視線を向ける同級生の女の子に、彼らは気づきもしなかった。


ありがとうございました

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