ペルソナ
宴会から一週間が経過した。未だに三世達はガニアの国に滞在したままだった。
その間はルゥはギルド関連の役職のことやその他盗賊団のことをレベッカと話していた。シャルトもついていっていたようだ。
そのせいか料理人ギルドに行くとルゥは神のように扱われている。腕前が上の人すらルゥには敬意を示しての対応をする。名目だけとは言え頂点になっているルゥはそれでも何の変化も無く料理をするだけらしい。
大きく変わったのはシャルトだ。今まで他人と接点を持とうとしてなかったがレベッカ相手には普通に懐いている。三世はそれを喜ばしく思った。多少寂しい気持ちがあるのは確かだが。
マーセル盗賊団は宴会後に解散した。全員がきっちり就職が出来るまで国はしっかりと助けてくれたようだ。
孤児院出身の多かったマーセル盗賊団だが、その孤児院に国から予算の増額が認められた。盗賊団の一員が恩賞として自分より孤児院の優先を求めたからだ。
また当の出身者本人達も、自分の出身の孤児院の傍の職場に勤めることが出来て、嬉しそうだった。自分の弟妹達といつでも会えると。
グランは軍の中の近衛隊所属となった。王宮内を移動するときに良く疲れた顔をしていたから大変な仕事なのだろう。
クローバーはどこかに行った。行き先も告げずに、というよりも決めずにそのまま国を去ったのだ。だがクローバーなら精神的にも肉体的にも問題は無いだろう。後、夢が少し変わったらしい。
『ガニアの国で王が来れるようなバーのマスターになる』
目的を見定めているクローバーを応援しない者は一人もいなかった。
他の盗賊団団員も全員定職についてその日を楽しく生きているそうだ。
マーセルの就職だけは良くわからない。ただ、この一週間まだ王都にいるのはわかっていた。
なぜなら三世はこの一週間マーセルに修行をつけてもらっているからだ。
三世は一つ思い知ったことがある。自分の戦闘技術の限界だ。成長はしているがその速度が非常に鈍足だ。
ルゥは既に十分強い。技術もまだ詰め込める。いくらでも伸びるだろう。
シャルトは戦闘に応用出来る器用さがある。武器も決めてない状態。こっちもいくらでも伸びる。
だが自分はここまでだろう。才能もだが、年齢もその理由の一つだ。その事に文句は無い。戦闘行為をそうしたいとも思わない。
問題なのは自分が二人の足をひっぱる場合だ。
自分の大切な者を庇うことすら既に出来ない。庇われる一方になるだろう。その上で更に差は開いていく。
それは種族による差もだが、それ以上に二人の身体的才能も大きい。
それ自体は三世にとって望ましいことではあり、そして寂しいことでもあった。
それでも出来ることは必ずあると信じている。愚痴は足掻いて足掻いて、それでどうしようもなくなった後にすることに決めていた。
そしてそれを助けてくれているのがマーセルだ。盗賊の技術を一部教えてくれている。隠密や不意打ちに特化戦法や戦略、知識から技術まで広く、そしてそれを分かりやすく説明してくれた。ただしここでも才能が足を引っ張ってしまっているが。
三世は言われる様に足を動かす。そっと優しく、ただししっかりと踏み抜くように。音だけを殺す。足音が消えた。小さな音すらしない。移動中自分の布のこすれる音のみが響く。そして両手に一本ずつ持っているナイフをすっと動かし、的に攻撃する。
がすっ。鈍い木の削れる音がする。三世の手は木製の的の衝撃で痺れていた。
「うーん。微妙。一週間色々やってみたが、才能の有無が極端だな。少なくとも両手武器は無理だな」
振り回すことが出来ない。むしろ両手に持っている武器に振り回されていた。大きな獲物が振れないから小さな獲物と思ったがそれも無理なようだ。
「ありがとうございました。すいませんもの覚えが悪くて」
ぺこぺこする三世にマーセルが否定する。
「いやこんなもんだろたぶん。俺は才能あったから良くわからないが」
マーセルはほとんど訓練らしい訓練をせずにここまで出来るようになったらしい。
それを三世が羨むことは無い。自分にも出来ることがあるからだ。ただ、今は戦える力を求めていることも確かだが。
「例えば私はどんなものなら才能がありました?」
三世の問いにマーセルが考え込む。指を折って数えているからいくつかはあったらしい。
「捕縛と道具作成。それと罠関係は既に実戦に使えるくらい上達した。あと忍び歩きだけなら最低限だが出来るようになったな」
何となくわかっていたがどうも自分は直接戦う手段と著しく相性が悪いらしい。マリウスが槍を持たせたことは正しかったと良くわかる。
重い武器も持てない。リーチの短い武器を扱うことも出来ない。槍で突くだけなら何とか。これ以上の戦闘スタイルの変更は容易では無いらしい。
残念ながら今後の自分は道具係が関の山のようだ。せめてシャルトの盾になれるようになりたかったが。
「まあ才能関係無く続けたら割となんとかなる。何かしたいならこれからもしっかり訓練していけ」
マーセルはそう言いながら、準備してくれた練習道具を片付ける。本当に色々教わった。それなりに自分の手札が増えた実感もある。本当に必要な戦い方だけはどうしても得られなかったが。
「今日までありがとうござました」
三世は丁寧に頭を下げる。元から一週間という約束だった為、これが最後だ。それに合わせて三世も明日にはガニアを去る。
「構わないさ。色々世話になったしな」
マーセルはぶっきらぼうな態度で返した。その仕草は冷たいというよりも、この程度の身内の世話は当たり前。そういうニュアンスだった。
「何かお礼をってことですが、後残ってるのはメープルシロップの瓶くらいですね」
十ほど残したメープルも盗賊団にふるまったり人に譲ったり食べたりで結局残り二瓶だけとなった。
「そうだな。じゃあ一瓶ほど貰おうか。ちょうどいい授業料だな」
マーセルは嬉しそうに瓶を受け取った。道具作成用に材料や素材をいくつも譲ってもらったから材料費のみでもこれ以上使ってくれている。三世は久々に返さないといけない恩が溜まっていく感じを思い出した。
地面に座っている三世を背もたれにしてマーセルが座る。三世は動けなくなった。
「なんかさぁ。俺って子供みたいなもんでな」
三世はそれを黙って聞く。真面目な雰囲気だから言いにくいが背中の温かさが妙に恥ずかしかった。
「いや実際に餓鬼ではあるんだ。どうしても納得出来ないことがあったんだ。でも親に逆らう勇気も持てなくてな。だからこっそりと出来ることをしてたんだ。俺は親とは違ってがんばってるんだってな」
要領を得ない。だが言いたいことは何となくわかった。これが親から抜け出して盗賊になった理由なんだろう。
「それをしている自分が特別だと思ってた。俺がこの国を少しでも良くするんだって思い上がってな」
ため息を付きながら話すマーセル。その考えはもう無いらしい。
「ちょっと考えたらわかることなんだけどな。その時の俺は考えが足りなかったんだ。親が俺以上に努力してるのは当たり前なのにな。今頃親の言葉の意味がわかったよ」
「その親御さんは何て言ってたのですか?」
「あん?確か。持たざる者に分け与えるだけでは相手だけで無く自分も幸せになれない。だったかな」
どうも親は相当な貴族らしい。場合によっては国政に携わるクラスの。そして為政者としての苦悩の部分をマーセルは知らずに否定して、そして気づいたようだ。
分け与えるだけではただの飼い殺しだ。そうでなく、自分でそれを得られるように教育することが本当に国として大切なことだ。そしてこの国はそれを行っている。
「馬鹿みたいだよな俺。俺だけがそのことを苦しんでるって思ってた。そんなわけがないのに。親が苦しんでることすら俺は知らなかったんだ」
その言葉は後悔というよりも懺悔に聞こえた。
「親御さんの元に戻ったら良いんじゃないでしょうか?まだ大丈夫ですよ」
盗賊といっても悪さはしてないだろう。していても今回の恩赦で十分問題ないはずだし、最悪王妃様に仲介を頼むことも出来る。だが三世の考えは無意味なものだった。
「いや、実はもう戻ってるんだ。親とも会ってる。ただ、偶に抜け出してるだけでな」
笑いながらマーセルは言う。そして三世はそれを追及することは出来ない。抜け出してるのは今。三世に技術を教える為にわざわざ抜け出してくれているのだから。
「まあ今日で最後だけどな。流石に心配かけっぱなしってのも悪いしな」
「そうですね。本当にお世話になりました」
「それは俺の台詞だ」
背中に寄りかかってくるマーセル。さっきより重さを感じる。それに恥ずかしいという気持ちは無くなった。
代わりに、この温かさが最後だと思うと、背中が少し寂しかった。
「最後にちょっと付き合ってくれないか?」
本当に最後になりそうだからか。三世は頷いた。
そして三世はあっという間に安請け合いを後悔した。何故あそこで頷いたのか。そして一つ。大きな謎が解明出来た。出来てしまった。
今三世がいる場所は室内の花畑だ。見たこともない淡い色の美しい花が咲き乱れている。大理石の豪華な椅子とテーブルが中央においてある。ここは裏庭のようだった。問題は場所だ。今三世達がいるのは王宮の中だった。
地面に入り口が隠してあり、そこをハシゴで降りる。そして地下通路をまっすぐ歩いてまた上る。そして隠してある入り口を出ると今の場所についた。位置的に間違いなく王宮の中だった。これが大きな謎の一つ。ソフィ王女が逃げ出すことが出来た理由だろう。
「これ防犯上大丈夫ですか?あと私がここにいるのも」
「二つの意味で大丈夫だ。一部の人以外あの道は使えないように出来ている。そしてこの時間ここに人は入ってはいけないことになってる。だから見つからないさ」
入ってはいけない時間に入ってるってことは、見つかった場合駄目なのでは。更に嫌な予感は加速した。ここもしかしたら男の立ち入り禁止なのでは無いのかということだ。
「それで、どうして私はここにつれてこられたのですか?」
花を見せたいという理由ではないのは確かだ。三世は用事を済ませて早々と逃げる為に話を聞く。それにマーセルは真面目な顔になった。
顔に巻いてあるターバンを外す。普段隠しているからか口元に妙に色気を感じる。三世はなんとも言えない気分のままマーセルを見つめる。
マーセルは両手をあげてペンダントを外す。その仕草も妙に色っぽい。そして、ペンダントを外した瞬間三世を魅了しかけていた美女はいなくなり、ちんまりとした背の低い少女が現れた。
「え?」
大きな大きな勘違いに、三世は今更気づいた。だが、それを脳は受け入れられていない。目の前に答えはあるのに理解するのに時間がかかっていた。
呆然とする三世をよそに少女は話し出す。
「あの……嘘ついててごめんなさい。これが、本当の私です」
少々どもりながら可愛い声を出す少女。紫の髪に白い上品なドレス。そして特徴的なジト目。目の前の困った顔をする少女を一度三世は見ていた。絵でだが。
それは紛れも無く、ソフィ王女だった。
時間差で、ようやく理解が終えた三世。色々と納得した。
「あー。ああー。なるほど。そりゃあ誰もソフィ王女を発見も出来ないし捕まえられませんね」
三世の問いに慌てて頷くソフィ。さっきまでとは本当に別人のようだった。オドオドして、そして恥ずかしそうだ。
「うん。これを知ってる人はいなかった。今回でたぶんお父様には知られたと思うけど」
つまり未だにあのレベッカから隠し切っているということだ。素直な良い子と聞いていたがなかなかやんちゃな子らしい。
「それで、私はこれからどういう対応したら良いです?傅いてご機嫌なんたらって言ったらいいです?」
三世は若干冗談まじりに言う。ソフィはそれに軽く笑っていた。
「それだけは絶対に嫌」
強い口調で言うソフィ。だから三世も冗談で言った。理由はわかる。マーセルの時から繰り返し言っていた王族としての嫌な部分はこれだろう。
誰もが自分を見て傅く。だが誰も自分を見ていない。肩書きに傅かれて自分を無視されるのは悲しくてつらくて、そしてとても寂しいだろう。
「じゃあ今までと同じようにしましょう。でも本当は不敬だから他の人には内緒にしてくださいね?」
人差し指を自分の口に持ってきて三世はしーっと小さく言う。それにソフィは喜び、何度も首を縦に動かした。
「それで、どうして私にこの秘密を話したのですか?」
他の盗賊団の団員にも秘密にしていたらしい。なら何故ここに呼んでまで話したのか三世には理由がわからなかった。
それを聞いてソフィは考え、首を傾げた。三世も同じように首を傾げた。同じように首を傾げあう二人。ソフィはそれが嬉しかったらしくえへへと小さく笑った。
「あの……どうして私に教えて下さったのですか?」
話が進まない。同じように首を傾げていた。
「もしかして理由は無いのですか?」
三世はありえそうな可能性を思いつき聞いてみる。そしてソフィは頷いた。どうも本当に理由は無かったらしい。
「私口下手だから、ちょっとあっちに戻るね」
ソフィはペンダントをかけた。その瞬間にマーセルの姿に戻っていた。本当に一瞬な為どうして変化したのかすらわからないくらいだ。
「本当に理由無いんだよな。何となく俺が話したいって思っただけで、すまんな迷惑かけて」
三世が手を振って否定した。
「いえいえ。ずっと黙っとくのもつらいですからね」
「口下手で人の目みて話すのが苦手で、そしてお偉いさんが嫌いな餓鬼が偶然魔道具を手に入れてこの姿になったんだ」
「なるほど。だから盗賊、というか義賊を目指して。盗賊の技術はどこで?聞いて良いなら」
「ああ。元々忍び足とか王族専用護身術の中にあるんだ。そこから得意なことを派生させていったら盗賊らしい盗賊になったってわけだ」
元から才能はあったらしい。というよりも才能じゃなくて、願望かもしれない。見つかりたくない。逃げたい。そういった願望から隠密に特化したように三世は思えた。
「最上級の持ってる存在だったから、ずっと悩んでたのですね」
マーセルは三世の問いに頷いた。ずっと悩んでいたと。孤児院が貧乏なのを知って助けてくれない父親に。それに同意する母親に。今ならそれがしないのでなく出来なかったと知ったが。
政ってのはそんな簡単に動けないとマーセルはようやく理解した。
「つまり無駄な悩みだったってわけだ。でもすっきりはしたな。みんながんばってるんだ。父も母も。だから俺ももっとがんばろうって思ってな」
「元盗賊団の部下として応援しましょう。聡明な方なのを知ってます。優しいことも知ってます。きっと良い為政者になれますよ」
「そっか。ありがとな」
マーセルは優しく微笑む。三世が何かした訳ではない。自分の力で知っただけだ。それでも、彼女は救われたらしい。
「実は正体見せた理由ってわけでも無いんだが、この場所に呼んだわけとも言うが、うーん。ちょっと聞きたいことがあったんだ」
マーセルは普段と違う態度で話しかけてきた。
いつもよりぶっきらぼうな態度で、聞きにくそうに。そしてちょっと恥ずかしそうでもあった。
「珍しいですね。お頭の言う事ですから質問くらいはいくらでも答えますよ」
三世は冗談交じりに笑いながら言う。それにほっと安堵したのかマーセルは質問をしてきた。ただし剛速球の質問を。
「今の俺とちんちくりんの俺。どっちがお前の好みだった?」
その瞬間三世の世界が硬直した。というか凍りついた。どういう意図かわからない。一つだけ言えるのは、これはどう答えても面倒になる予感だ。
答えをはぐらかそうと考えた。だがそれも出来なかった。口が勝手に動きそうになっている。
この場所に連れてきた。マーセルはそう言った。つまり何か条件付きで嘘がつけない空間らしい。
でないと口が勝手に思ったことを言おうとする不可思議な状況を説明出来ない。三世は逃げようと出入り口を探した。そして見つけた。入って来た場所はマーセルの足元だった。
恥ずかしそうにしているマーセル。普段の大人びた姿では絶対に想像出来ない姿だ。ギャップも含めて妙に破壊力がある。色っぽい美人が恥ずかしそうにするのは反則だと三世は思う。
必死に耐える三世。何とか意思に抗えていた。
「答えてくれないのか?」
恥ずかしそうに上目気味に尋ねるマーセルに、三世の意思は一瞬で陥落した。
「あー。お頭の」
マーセルは三世の口を止める。
「もう盗賊団じゃない。マーセルって呼べ」
「……はい。マーセルさんの見た目も美人でドキドキして目が離せませんが個人的にはソフィ王女の見た目の方が好きです。あのジト目が可愛いですはい」
三世的には女性の好みは無い。というか女性と接点が無かった為好みとか自分のことでも良く分からない。
「あんな睨んだような目してるのにか?」
マーセルは驚きながら、質問を投げてくる。その言葉には自虐が相当混じっていた。相当なコンプレックスだったのだろう。
三世は開き直って思うことを言うことにした。三世の主観で言えばその目が好みだったのもあるが、それ以上に悲しい顔をした知り合いを放っておけないからだ。
「そこが良いんですよ。ジト目で半目の女の子って可愛いと思いますよ。紫の長い髪も相まってなお似合ってて。そうですね。こう……抱きしめて撫で回したくなるというか」
三世の中では猫のイメージだった。この世界に猫がいない為説明が非常に難しい。それでも本心で可愛いと思ってると伝えたかった。自信を持って欲しかった。
「可愛いって思ってるの本当だったんだ」
マーセルは顔が真っ赤になり俯いた。三世はこの空気がいたたまれなくて、一刻も早く逃げたかった。逃げられないが。
マーセルはペンダントを外してソフィに戻る。そして三世の傍にとことこ歩いてきて一言だけ呟いた。
「ん」
それだけ呟き、下をむいている。
「あの。どうかしました?」
三世は恐る恐る尋ねる。下を向いたままソフィがまた小さく呟いた。
「お礼。抱きしめて撫でたいって、言ってたから」
顔を見なくてもわかる。真っ赤になっているだろうと。三世はソフィを見て、そして頭を撫でだした。
「お疲れ様。良く頑張ったね」
ソフィはそれを嬉しそうに受けた。ちょっとだけシャルトに似ていることに今気づいた。
途中から違和感があった。別に三世は自惚れ屋でも鈍感でもない。自分が妙に好かれているとわかっていた。
だがそれが異性のそれとは何となく違うような気がした。
ソフィのそれは憧れやそういうものに近いような。理由は今わかった。安心感が欲しかったのだ。本来父親が与えるそれが足りてなかったようだ。
父親が偉大すぎるからか、時間が足りないからか。それとも単純に王族としての生き方のせいか。
一つだけわかるのは、十七年生きてきて、甘えが足りない少女がやさぐれたフリをしていた。それがマーセルの正体だとわかったことだ。
「私がんばったよね?死にたくなかったし国も好きだったから。とてもがんばったよね?」
嬉しそうに撫でられながらソフィは尋ねる。
自分の暗殺の計画と国家転覆の話を直接聞いてしまったらしいソフィ。そこから犯人が捕まるまでずっと戦ってきた。それを頑張ってないといえる人はいないだろう。
「がんばったよ。国王様にもしっかり褒めてもらわないと」
「でも、迷惑じゃないかな?怒られないかな?」
三世は頭な撫でながら答える。
「大丈夫だよ。素晴らしい人みたいだし。それでもし怒られたら、王妃様に告げ口したら良いですよ。ルゥと一緒に王様を怒りましょう」
微笑みながら話す三世に釣られて笑うソフィ。その顔はもう心配無いと思わせるには十分な笑顔だった。
「うん。言ってみる。ありがとねヤツヒサさん」
最後にソフィからぎゅっと三世を抱きしめて、そしてすぐに離れた。
「最後にもう一つお礼を受け取ってくれる?」
ソフィが三世を見ながら言葉を出す。それはすらすらと言葉になっていた。さっきまでの口調とは違う、優しい話し方だ。
「もちろんです」
そういう三世の手をソフィは受け取り、そして手の甲にキスをした。
「ありがとうございました。王女からの忠誠に対する感謝を。他の人には内緒ですよ?」
三世の口真似をして唇に人差し指を当てるソフィ。三世は噴出しながら答える。
「もちろんです王女様」
冗談交じりで傅く三世。それをソフィは嬉しそうにみていた。もう寂しい思いも辛い思いも無いらしい。
三世を外に送ってソフィは一人で元の花畑に戻った。この時間花を楽しむのが本来の彼女の時間だからだ。
そして花を楽しみながら、ソフィは三世のことを思い出して一人微笑む。
確かに最初はただの憧れで、父性の求めだったのは確かだ。
だが三世は一つだけ、知らないことがあった。少女の成長はとても早いということを。
その気持ちは既にただの憧れではなくなっていると、三世は最後まで気づかなかった。
長い長いお付き合い本当にありがとうございました。
これにて四部終了です。ここまでのご読了真に感謝の極みです。
あともう一つか二つ番外編をあげたら本当に四部が終わります。
そこからまた五部にスタートしますが。
ただ少しだけ時間を頂きます。具体的に言えば毎日更新じゃなくなります。
速度を期待してくださった方は多かったですが申し訳ないです。
割と限界で話を練りこむ時間が取れませんでした。
特に慣れたせいか下手になったせいか話を構築するのに時間がよりかかるようになってまいりました。
それに加えて技術上昇の為に他の作品も書きたい欲求もあります。
なので予定は未定ですが、一応三日に一度更新を目指したいと思います。
その代わりに出来たら文章量は増やしたいと考えています。
流し読み出来る気軽なお話を目指してこれからもがんばっていきます。
では再度ありがとうございました。
本当に長いお付き合いありがとうございます。