再登場
王妃の演説から一週間が立った。
この一週間、情報を集めることしか出来なかったがようやく別のことが出来る。
冒険者ギルドの混雑が少しマシになったからだ。
人込みはまだまだ酷く、人の列が凄くラーメン屋の行列みたいにはなっているがそれでも入れるようにはなった。
あまりに人込みが酷いのでシャルトとルゥには冒険者ギルドに入らず待ってもらうことにした。
シャルトは人が未だに苦手な為怯えるだろう。
そして一人にするわけにもいかないのでルゥにも待ってもらう。
三世は複数の列の後ろから見知った受付の顔を探す。
コレットの顔が見えたのでその列に三世は並んだ。
自分の番は思ったよりも早く来た。
「冒険者ギルドにようこそ。どのような御用でしょうか?
コレットの営業スマイルに三世は言葉を返す。
「今回の騒動で何か手伝うことは無いかと」
コレットはそれを聞いて少し困った顔をする。
「困ってることはありますね。例えばここに居る人全員その騒動目当てとか」
三世は苦笑した。
「だったら人は足りてるということでしょうねぇ」
「いえいえ。全然足りません。みんな誘拐騒動の方なので通常業務が」
コレットの言葉に三世は納得した。
通常の依頼を誰も受けないし行列で受けられないのだろう。
「このままですと軍に業務を依頼するという本末転倒な上に誰も得しない結果に」
コレットの顔からだから受けてくれるわよね?という無言の圧力を感じる。
「青銅級で出来そうな依頼があれば」
三世は困った顔をしながら引き受けるしかなかった。
「じゃあこれをお願いできるかな?」
コレットがにっこりとしながら紙を丁寧に渡してきた。
一番上に鉄級相当向けと書かれている。
「あの。鉄級と書かれているのですが」
「大丈夫ですよ。経験者なら一階級くらい上でも」
三世の質問をコレットは答える。
一体何の依頼だろうか。三世は二行目を読む。
『小規模な農村に盗賊団を名乗る集団が現れた』
「止めます」
盗賊団の文字を見た瞬間三世は呟き逃げようとした。
しかしコレットは逃がさないように身を乗り出し肩を掴む。
その力は思った以上に強く、三世は逃げ出すことに失敗してしまった。
「まあまあまあまあ。話聞いた後で受けなくても良いですからね?」
口ではそういっているが内容聞いたら逃げられないんだろうな。
三世は諦めて話を聞いた。
内容はこういうものだった。
今日から三日前に小さな農村にマーセル盗賊団を名乗る集団が現れる。
その集団は毎日野菜をほんの僅かだけ盗んでいく。
その代わりその場に何故か血抜きした獣の肉が置いてあった。
どう考えても釣り合いが取れない物を貰って村人も困惑している。
けが人も無し。
むしろ迷い込んだ子供を助けたらしい。
「それは何の問題も無いんじゃないですか?」
三世は率直な感想を述べた。
危険な害獣を処理して肉まで渡してくる。
むしろ農村から言ったらメリットの方が大きくのではないかと三世は考える。
「確かに私達ギルドや軍から見たら問題無いです。現にこの仕事は優先度が最下位に近い」
コレットの言葉は良くないというニュアンスが多々含まれていた。
「誰に問題が?」
三世の言葉にコレットが返す。
「当の農村の村人です。害獣を軽く扱うほどの武力を持った集団が村を狙ってると確信し怯えています」
「実際襲わない……と知っているのは私達の前情報があるからですか」
コレットが頷く。
「誰かがいかないと村人は怯え続け、最悪脱走する状況とまで来ています」
「……受けます」
三世は他に言う言葉が無くなった。
こうなるとわかってコレットも説明したのだろう。
「はい。依頼の解決を期待します」
コレットのその顔はすがすがしいまでの笑顔だった。
三世とシャルトはハニワのような、無表情のような虚無のような、
なんとも味わい深い不思議な表情を浮かべながら農村行きの馬車に乗った。
もう一回アレと会うのかと思うととてもめんどくさい気分になる。
別に嫌いではない。むしろ楽しいとは思うが。
芝居に付き合わされるというかこちらが罪悪感を持ってしまうというか。
悪人じゃないというのがわかるだけに余計疲れる。
ルゥは全く気にしてなくていつも通りだった。
小さな農村の為往復する馬車が無い。
定期馬車は毎朝の作物運搬のみだ。
一番近い定期馬車に乗せてもらいそこから歩く。
馬車で数時間。
降りてからまた数時間。
ようやく見えたのは本当に小規模の小さな農村だった。
世帯で言えば十くらいだろう。
とりあえず挨拶も兼ねて三人は調査を行った。
「何もわかりませんでしたね」
三世はとある方角から目を逸らしながら二人に話す。
「そうですね。最初の情報以上のものはありませんでした」
シャルトが答える。
もちろんとある方角から目を逸らしながら。
そちらは関係無い。あるわけないんだと二人は見ないようにする。
「るー。ねぇこっち」
ルゥの指指す方角を二人は見ないようにする。
「どうしましょうかねぇ。盗賊行為があるまで待つしかないでしょうか」
三世の発言にルゥがぴょんぴょんと跳ねながら手を上げる。
「ご主人。諦めてルゥ姉の方を見ましょう」
シャルトがため息交じりに言葉を放つ。
三世は認めたくない現実と向き合うためにルゥの方を向いた。
「はい。ルゥ。意見どうぞ」
「はーい。あっちに行けば良いと思います!」
ルゥが指を向けた方向はさっきまで三世達が見ないようにしていた方角。
そっちに矢印の看板がありその下に文字が書かれていた。
『マーセル盗賊団駐在所こちら。危ないから用事が無い限りは立ち入り厳禁』
三世はやはり相手は理解が及ばない相手だと思い知った。
来たらいけないのに何故矢印を着けたのだろうか。
「人間ってどうしてこんな不思議なことをするのですかご主人」
シャルトの質問には三世に答えることが出来なかった。
ルゥを先頭に矢印の看板の指示通りに歩いて行く。
矢印のたびに来たらダメと書いてある。
これは来て欲しいのか欲しくないのかどちらだろう。
途中から森の中に入ったがしっかりと伐採してあり道が作られていた。
森林の中にも関わらず快適に盗賊団の位置まで移動出来てしまった。
そこには別荘があった。
他に言いようが無いほど別荘らしい見た目だ。
日の光りが僅かにしか届かない森林の中に一軒のログハウス。
丸太の屋根と壁に板材。隙間も見えずしっかりとした作り。
素晴らしいの一言に尽きる。
これと作った人は職人なんじゃないかと思うくらいだ。
出来たら自分でも住みたくなる。
そんなログハウスに初めて出会った。
看板にマーセル盗賊団と書いてなかったらもっと良かったのに。
三世はそう思わざるにはいられなかった。
「さてどうしましょうか?」
アジトらしき場所の前で二人に相談する三世。
譲れない点はたった一つ。
村人が怯えているから退去してもらうこと。
ちなみに今回の依頼で明確な失敗は無い。
例えここで帰ったとしてもこれだけ情報があれば十分報酬が貰える。
一応本物の盗賊団扱いだからだ。
「どういった選択肢があるですか?」
シャルトが尋ねる。
「武力か対話どちらに頼るかが重要ですね。潜入して情報だけ抜くというのも手ですが」
「うーん。どっちでもいいですね」
三世とシャルトの気持ちはどっちでも良いというよりはどうでも良いだった。
「話し合いが良いな」
ルゥの提案に三世とシャルトが頷く。
「(どうでも)良いんじゃないかな」
割と本気でどうでもいいと考えてしまう三世は答えた。
緊張感とモチベーションが切れそうになる。
必死に
想定外な事態に弱いという自分の弱点を再確認することとなった。
「じゃあルゥに任せます。どういう方法でも良いので中の人と話し合う状況にして下さい」
三世の言葉にはーいと手を上げて応えるルゥ。
とことことあるいてそのままドアの前に立つ。
ルゥはそのままノックをして大声を出す。
「ごめんくださーい!誰かいますかー!」
それでいいのかルゥ。
一応盗賊団の拠点だぞ……。
三世はそうは思うが限りなく正解な気はする。
「はーい。すぐ行くのでちょっと待ってくださーい」
男の声と共にばたばた足音を立てて走ってくる誰か。
ドアが開くと中から盗賊風の男が現れた。
「はいはい。何か御用ですか?迷子だったら送るけど?」
雰囲気が優しい。きっとこれが素なのだろう。
「村の代表で話し合いに来ました。いーれて!」
ルゥは楽しそうに話す。
人間が苦手というより嫌いなシャルト。
逆にルゥは人間が好きだった。
といっても誰でも良いわけではない。
獣人にも人にも良い思い出の無い過去。
そんな過去から人との触れ合いを取り戻すように人と接する。
それは優しい人限定である。
つまり人の本質を理解するルゥが彼は心から善人と認めたということだ。
「いーよ!奥の人と合わせて三人かな。お茶とお菓子用意しておくから奥に入ってて」
盗賊風の男そう言って奥に去っていった。
「入って良いってー」
ルゥののんきな声が響く。
「じゃあ行きましょうか」
三世はシャルトと一緒にルゥの後ろからログハウスに入っていった。
三世は考えることを止めた。
奥に入りテーブルを囲む椅子に三人は座った。
一言でいうとチグハグな場所だった。
周囲にわざわざ椅子じゃなくて別のテーブルに座りナイフを舐めながら舌なめずりする男。
やたらとこっちを睨みつける男。
『俺達は悪』アピールする集団。
それと別に給仕してこちらを世話してくれる男性。
テーブルや椅子はログハウスと同じ雰囲気、同じ色合いの木製の物。
丸太や角材をうまく使ったお洒落な一品。
外にあった大量の工具と加工後の木材などからこれらは自分達で作った物だとわかる。
出されたお茶はハーブティーとクッキー。
ハーブティーの傍に小瓶がありその中に黄金色の液体が入っている。
三世はそれをハーブティーに垂らして飲む。
ハチミツだった。
ハチはいたがミツバチを見ていないので三世は無いのかもと思っていたハチミツ。
これらが常備してあるということは常日ごろからこれらを作っているということだろう。
『そんな盗賊いるわけないでしょうが!』
三世は心の中で突っ込みながらとりあえずお茶の時間を楽しんだ。
「ご馳走様でした。お世辞抜きで美味しかったですよ」
三世の言葉に合わせ、二人も手を合わせて御馳走様をする。
「はい。本当に美味しかったです。ハーブティー。勉強になりました」
嬉しそうに話すシャルト。
それに反応してナイフを持っていた男の頬が少し赤くなっていた。
「さて話し合いをしましょうか」
三世の切り出しに待ってましたと言わんばかりに盗賊風の男達が反応する。
ナイフをまた舐めだしたりこちらを睨みつけたり、へっへっへっと下卑た笑いを浮かべたり。
「たった三人で乗り込んでくるなんて勇気あるじゃねぇか」
男の一人がそう言うが、彼らが言う場合はそのまま言葉通り良い意味でしか受け取れない。
「一応確認しますがマーセル盗賊団ということでよろしいでしょうか?」
三世の問いに男が頷き立ち上がって口上を言い出した。
「俺達は極悪非道のマーセル盗賊団。女子供も容赦しな……」
口上を途中でやめて奥に行き、別の男とひそひそ話し出した。
「ルゥ、なんて言ってます?」
三世はルゥに尋ねた。獣人の耳の力は本当に便利だ。
「本当に女子供がいるからあんまり怖いこと言えない。でもがんばらないとお頭困るし。みたいなこと言ってるよ」
そうルゥが言うと三世は一つ提案した。
「ルゥとシャルトはちょっと外で待機してもらえますか?」
三世の提案にシャルトが怒る。
「反対です。流石に一人は危険です」
シャルトの言葉に三世が応える。
「本当に危険だと思う?」
三世の言葉にシャルトは少し考え、首を横に振った。
「なら理由を教えてくれませんか?」
シャルトの言葉に三世が簡単な答えを言った。
「女性や子供が混じると彼らがやりにくそうなので」
目線を露骨に避けたり優しい顔になったりと色々彼らも集中出来ないだろうと。
シャルトは納得出来ないが理解はしたようで言うとおりにしてくれた。
ルゥは既に外に飛び出していた。
シャルトもゆっくり外に行った。
「女子供と言えども見張りは必要だからな。おい。行って来い」
ナイフを持った男に命令されると数人の男も同じように外に行った。
テーブルと椅子とティーセットを持って。
「そういうところなんですよねぇ。いえ信用出来るので良いのですが」
三世は一人で誰にも聞こえないように呟く。
ルゥとシャルトがいなくなってからの話し合いは思った以上にスムーズに終わった。
というより向こう側がいつでも去れる準備をしていたようにも思えた。
一番の理由は村人が怯えてるからだろう。
それが目的でもあって、そしてそれは本意では無いというのが分かる。
「くふふふふふ。しっかり譲歩させてやったぜ」
盗賊風の男達は下卑た笑い方をしながらこっちを見下しながら話す。
話し合いの妥協点は結局こういう形になった。
まず盗賊側はもう村に近づかない。
次に放置すると迷惑だからログハウスを撤去する為に数日時間を貰う。
そして撤去と片付けが終わったらこの周囲から去る。
ただしその間に村が害獣などに襲われた場合村からの要請があれば盗賊は村に行っても良い。
最後に戦闘行為は村人の迷惑となるために全面的に禁止とする。
妥協点どころかほぼ完全攻略に近い。
しかも戦闘しない条件を向こうがつけてくれた為、依頼としてみたら満額支給もありえるレベルだ。
三世にとっても文句無しの結果だった。
「質問したいのですが。どうしてこのようなことを?」
この前の人員と今回は全員違う。
それでも仲間だというのはわかる。
同じような行動パターンだからだ。
「あん?このようなってどんなことだよ?」
男は悪態をつきながら聞き返す。
「盗賊行為全般ですね。ログハウスの出来を見る限りこれを仕事にしても一流として生きていけると思いますが」
何人かの男達が嬉しそうな顔をした。
そうですね。これだけ立派な物を作って褒められたら嬉しいですよね。
三世は微笑ましい気持ちになった。
「理由か。一言で言うとお頭がそう望んだからだな。俺達は人も殺す。物も取る。お頭の命令次第では本当に何でもやるぞ」
忠義心ということらしい。
三世はそれならわかると納得した。
「ということで俺達はそう言った悪の存在だと報告してもらえたら嬉しい」
男はそういうが三世は否定した。
「残念ながら怪我人もいなければ被害も少ないので悪の存在どころかギルドでは放置案件に近いですよマーセル盗賊団関係」
三世の言葉に落ち込む盗賊団。
「まじか?……まじか……」
別の男が険しい顔をしながらこちらに来た。
「これを。マーセル盗賊団から預かったと言って渡してくれないか?」
男は三世に袋に入った長い何かを渡してきた。
持って見た感じ剣と鞘のようだ。
カチャといった金属音が響く。
「これは一体?」
三世の問いに男は首を横に振った。
「知らないほうが良い。ただ俺達の所業と言って渡してもらいたい」
三世は頷いたが一つ問いただした。
「私がこれを盗むとは考えないのですか?」
男は笑って応えた。
「それならそれでこっちの目的も果たせる。好きにしてくれ」
三世はわけがわからないがとりあえず応えた。
「まあ約束しましょう。これはギルドに渡します」
「ああ。必ず俺達の所業だと言ってくれ。迷惑はかけたくない」
三世は頷いた。
珍しく男達の顔が真剣だったからだ。
外に出てルゥとシャルトを探そうと思ったが割と近くにいたらしい。
シャルトの悲鳴が聞こえる。
そちらに向くとシャルトにボールがぶつけられていた。
「あちゃー。負けちゃった」
ルゥが少し悔しそうに言う。
どうもドッチボールらしきことをしていたようだ。
盗賊二人対シャルトとルゥで。
とってもお互い手加減している上に柔らかいゴムのようなボール。
怪我などもちろんしない。
きゃっきゃと二人は楽しそうにボールを投げていた。
「おーい。そろそろ帰りますよー」
三世の言葉に気づき、はーいと二人は返事をしてこちらに走ってきた。
三世はルゥとシャルトがお世話になった二人に一礼して挨拶する。
片方の男性はつられて一礼を返す。
もう片方の男性は一礼する男性を叱り、腕を組んでこっちを睨んでいる。
大変だなぁ。あの仕事も。
三世は心で同情した。
目的はさっぱりわからないがお頭もこういうタイプの人間だろうか。
その後は特に問題無くギルドに戻って報告出来た。
問題なのは報告した内容でなく、依頼報酬だった。
最初はお使い感覚で本当に大した事は無かった。
ただしあの剣を見せてから事態は急変した。
袋から剣を出した瞬間受付をしたコレットの顔が強張った。
「少々お待ち下さい」
コレットは裏に剣を持って行き、そして数分後戻ってきた。
「お待たせしました。遺品を持ってきてくださりありがとうございます」
「それは一体何なのですか?」
三世の問いにコレットは答えた。
「とある軍人の遺品です。行方不明だったのですが今回で死亡と判断されました。同時にマーセル盗賊団を正式な盗賊団ならびに国敵と認定されます」
「ちょっと待ってください。あの盗賊団ですよ?落し物拾っただけかも」
三世の言葉を止めるようにコレットは刀を鞘からゴリゴリと音を立てながら抜いた。
そこには固まって褐色色になった血がべったりとこびりついていた。まだ乾ききってないようで真っ赤な部分もある。
三世はもう何も言えなくなった。
彼らは言葉通りの存在だった。
「先に言っておきますがその軍人は間違いなく善人です。たまにギルドに手伝いに来てくれていたので私も知っている人でした」
「お悔やみ申し上げます」
三世は他に言葉が出なかった。
「というわけで報酬どうしましょうか」
コレットが珍しく困っていた。
「どうとは?最初の通り銀貨三枚から二十枚の間では?」
三世の言葉に首を横に振る。
「報酬を払う前に正式に盗賊団となったので正式な盗賊団の報酬になります」
「それはいくらくらいですか?」
「金貨三十枚とかですね。ただしもらうとめんどいことになります」
「既に金額が面倒なことになってますね」
絶対にトラブルになると確信出来た。
「少人数での仕事じゃないとか青銅級だからとか色々ありますが、一番は仕事内容の割に貰いすぎるということですね」
三世もそれには頷いた。
確かにお話してお茶とクッキー食べても子供達の面倒見てもらって3百万とか暴動が起きるレベルの話だ。
「かといってあげないと面倒なことになるのですよ。ギルドの地位やらメンツやらの問題で」
「うーん。どうしたら良いですか?失敗したということにしましょうか?」
三世の問いに首を横に振る。
「依頼で偽装だけはダメですね。信用がなくなります。お互いに。ということで金銭以外に欲しいものありますか?」
コレットの問いに三世は悩む。
「うーん。鉄級にしてくれとかですかね?」
「その場合だとこっちの冒険者ギルドからラーライル王国のギルドにお前のとこの青銅強いから鉄にしてやれよという文書を送りますが大丈夫ですか?」
コレットは笑いながら言う。
どう見ても喧嘩売っている文章になるだろう。
「すいません撤回します」
三世の言葉に賢明ですとコレットが返す。
「じゃあ何がもらえると納得行くでしょうか?」
三世の問いにコレットが答える。
「コネとかですね。本来なら継承権が無い王族との面会とかで使えますが今王族は忙しいので」
第一位継承権がいなくなると継承者がいなくなる。
そりゃあ王族は気が気じゃないだろう。
あわよくばという考えも出来る。
「うーん。他にコネ使えそうな人は」
三世とコレットが悩んでいたらルゥが間に入って来た。
「ねぇねぇ。じゃあ料理ギルドにコネって使えない?私料理勉強したり食べたりしたい」
ルゥの言葉にコレットがはっとした顔になった。
「良いですねそれ。料理ギルドの技術を提供ならお互い問題無いし料理ギルドも信用出来る人になら知識提供はむしろ進んでしているくらいです」
コレットの言葉に三世は頷いた。
「じゃあ料理ギルドのコネも兼ねて見学という形で行けますか?」
三世の問いにコレットは笑顔になった。
「了解しました。今回の依頼報酬は任務の内容から最低限の報酬とし、代わりに依頼者の望んだ料理ギルドへの見学と料理ギルド上役との謁見の場の提供とします」
なんとかお互いの納得する形で終わって三世はほっとした。
金貨三枚という最低限とは思えない報酬を受け取り、二人に金貨一枚ずつ渡して宿に戻った。
夜中、ルゥとシャルトが寝静まった頃に三世は考え事をする。
盗賊団という不審の塊はもちろんだが冒険者ギルドにも怪しい所があると。
今回軍人の遺品ということで剣が届けられたが、妙に怪しい。
既に行方不明だったと言ったがいつ行方不明だったと説明は避けていた。
刀の血から判断して、死亡したのは割と最近だ。少なくても一週間がたってないだろう。
どう考えても誘拐に関わっているのにこの情報は完全にスルーされている。
どこを信じてどこを疑えばいいかわからなくなってきた。
そして一つの薄い可能性にも気づく。
王女様が生きているのでは無いかという可能性に。
根拠も無い漠然とした可能性だが、せめてこの可能性が無くなるまでは手伝うと決めた。
「娘がいなくなるのは辛いですよね」
ルゥとシャルトを見ながら三世は一人呟く。
三世自身娘として見ているのか違う風に見ているのか良くわからない。
それでも、大切な存在なのには間違い無かった。
だからこそ考える。
何が起きているのか、これから何が起こるのか。
考えても答えは出ないが、それでも三世は考える。
少しでも大切な存在達に何がが起きないように。
ありがとうございました。
ちょっと見直しの時間が取れなかったのでいつもより誤字多いかもしれません。
その時は申し訳ありませんが報告くだされば嬉しいです。
ちょっと時間があまり取れなくて。
そろそろ毎日投稿が限界になってきました。
仕事が忙しくなる冬まではと思ってましたが思った以上に文章書くのに時間が。
遅筆な自分を恨みます。
それでも読んで下されば幸いです。