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気づいたらオーバーワークになるのが日本人の悪い癖

 

 時間が倍になればいいのに。

 急に出来ることが増えた三世は心からそう望む。

 まずはわんにゃんふれあいランド。

 変な名前のスキルがついてしまったがこれが想像の何倍も便利だった。

 治療に必要な物なら現代技術を駆使した物を創造出来る。

 しかもリスクやデメリットをほとんど無視しながら。


「るー。何するの?」

 ルゥを座らせて三世はルゥの顔を触って『診る』

 ある意味種族特性も混じっているからこれを治療行為の一環となるかは疑問だったが大丈夫そうだ。

 思った以上にこのスキルは汎用性がある。

「ちょっと待っててね」

 頭の中でイメージを重ねる。

 視力補強出来てかつ適切な物。

 そして三世の手が光り、次の瞬間ルゥの目に眼鏡がかかっていた。

「はい。これで良く見えるはずですよ」

 ルゥは最初は顔に何か当たるのが気になるようだ。

「んー。ちょっとこめかみに物が当たる感じがきつい?」

 多少の移動を考慮して鼻で挟むフィンチタイプに加えてこめかみで抑えるタイプの眼鏡にしたが不評のようだ。

「うーん。まあ慣れますよ」

 圧迫感を分散してるので身体に害は無い。きょろきょろ見回して感嘆の声を上げる。

「おおおおおお。本当に見える。部屋が広い!」

 楽しそうに顔をぐるんぐるん動かして周囲を見るルゥ。

「ちょっとお外行ってくる!」

 そのまま返事も聞かず靴も履かずに飛び出していってしまった。

 三世は今のうちにさきほどの情報を元にゴーグルタイプの物を用意する。

 冒険でも使える用に。


「ルゥ姉ご機嫌でしたね。帰ったら足を洗って差し上げないと」

 微笑みながらシャルトが話しかけてきた。

「ああ。いいところに来たね。ちょっと前の椅子に座ってください」

 三世は続いてシャルトの診察を笑顔で開始した。


 思ったとおりだ。

 三世は自分の見立ての正しさに喜んだ。

 この世界の魔法などの治療の効果は非常に高いが現代医療の入り込む部分は沢山ある。

 三世はシャルトの背中に直接触る。

「ああ。治療だとわかるのになんとも言えない背徳感がありますね」

「そろそろ君の為にハリセンを作ろうか私は悩んでいますよ」

 三世は頭が痛くなるのを抑えて直接『診る』

 骨折は全体的に治っている。

 確かに治っているがレントゲンで見た場合まだ骨に隙間が出来ている。

 目に見えないほどの隙間だが繋がってないのは確かだ。

 三世はその部分に直接脂肪幹細胞をぶち込む。

 それは骨と化して隙間を埋めていく。これで通常の倍以上の速度で治りきるだろう。

 実際の細胞治療は手術のサポート的なものでこんな使い方は出来ない。

 体を切開することなく、どのような患部でも直接高性能な細胞治療が行える。

 これがあちらで出来たらな。

 三世はそう思わずにはいられなかった。

 しかもまだ出来ることがある。

 三世の手は光り、そして次の瞬間薬が手元に出てきた。

「はいこれ。寝る前に取り出して噛まずに水と一緒に飲んでね」

 増血剤のカプセルが六十錠。

「それとこれは毎食後に噛んでも噛まなくてもいいから摂取してね」

 栄養剤のタブレットが百八十錠。

 三世の診断では最低半年の症状が二ヶ月で治療可能と判断されていた。

 わけもわからずに薬の袋を受け取るシャルト。

「これを使ったらどうなるんですか?強くなるのですか?」

 三世は笑顔で答える。

「二ヶ月で体が治ります。一緒に冒険に行けるようになりますよ」

 ぱぁーと笑顔になって飛びついてくるシャルト。

「ありがとうございます。どんなに苦い薬でもがんばります。その間は待っててくださいね!」

 実際は増血剤は味が無いカプセルだし、栄養剤に至っては甘くて美味しいタブレットだったが。


 三世は自分のスキルの成長を確かに感じていた。

 ありがとうわんにゃんふれあいランド……

 名前だけはどうにかしてほしかったが。




 そして治療行為の幅も増えたがこちらもかなり幅が増えた。

 エンチャント装備の制作である。

 三世は本を何回か読んだら初歩のエンチャント装備をマスターした。

 というより初歩しか出来ない。

 初歩は異なる力を込めた紙を組み込む。直接異なる力を組み込む。魔法陣を刻む。作り方を変える。

 そしてこれらには大きなメリットがある。

 全て低予算で作れるということだ。


 低予算で難易度が低いことに目をつけた三世は数を作って色々試す方向にシフトした。

 マリウスも自己流と言ってた通りマリウスの知らない技法も多少はあり、三世と一緒に新しいことに挑戦していった。

 これが非常に楽しい。

 この数日間三世は時間を忘れて何度もルカに叱られていた。

 初歩だから強力な効果はあまり無い。

 例えば装備の耐久や寿命を上げる。防御力を上げる。ブーツなら足音を減らす。腕や手の装備なら筋力に補正がかけられる。

 そういったものがほとんどである。

 ただ、簡単だからこそアレンジが初心者でも効かせ易かった。

 技法とエンチャントを混ぜる。

 エンチャントの効果の方向性を変える。

 例えば技法で足音が出にくい厚底ブーツに音を減らすエンチャントを付ける。

 走っても音が無音になる高性能なブーツが生まれた。

 新しい物。新しい事。三世には新鮮でとにかく楽しかった。

 練習もかねて数を作る。



「そんなに楽しい?」

「ええそうですね」

 三世は生返事をしながら作業に没頭し続ける。

「時間過ぎるの忘れるくらい?」

「ええそうですね」

 三世はコルネが話していることすら気づいていない。

「ルカちゃん返事も無くて困ってたよ?」

「ええそうですね」

 もう少しで新しい技法が生み出されそうな瞬間だった。

「はぁ。魔法士ギルド員か君は。教育的指導」

 コルネはため息を付きながら三世の顎を軽くはじく。

 三世は自分が倒されたと気づくことなく意識を失った。


 目を覚ますと妙に体がだるかった。

 寝すぎたのだろうか。

 時間を確認する。

 腕時計なんて何日ぶりに見るだろうか。

 昼の二時だった。時計が壊れてるのか三世は疑った。

「やっと起きたか」

 台所の方から声が聞こえる。

 ルゥ、シャルト、コルネが台所で座ってお茶をしていた。

「るー。おはよう。お腹空いたよね?スープとパンならすぐ出来るからちょっと待ってて」

 キッチンに走ってルゥが料理を始めた。


「ええと、事情というか状況を説明して欲しいのですが」

 三世は困惑しながらコルネに尋ねた。

「丸一日以上作業に没頭し続けるヤツヒサさんとマリウスさんを無理やり寝させて休ませました」

 少し冷たい視線を三世に向けながらコルネが答えた。


 そりゃあ体がだるいわけだ。

 三世は理解した。

「みんなに心配かけましたね。すいません」

「たまには良いです。したいことを続けるご主人は楽しそうなので。でもあまり心配させないで下さいね」

 微笑みながらシャルトは話す。

 急に大人びることがシャルトは増えた。何があったか三世にはわからなかったが。


「それとこれ。ルカちゃんがヤツヒサさんにって」

 コルネは一枚の紙を三世に渡した。

 その紙にはこう書かれていた。


 生産目録


 グローブ6対。

 ブーツ8足。

 シューズ2足。

 ガントレット4対。

 鎧下含むレザーアーマー5セット。

 レザーシールド二個

 外套二十着。

 マント四十着。

 ポーチ一つ。


 そして下の方に丸い女性らしい可愛い文字でこうも書かれていた。

[これら売りたいならうちで買い取るので教えてね♪]


 二十四時間を越える作業は伊達じゃなかったようでとんでもない量を作ってしまっていたようだ。

 全てエンチャント装備。

 初歩とは言えそこそこの値段になるだろう。

 他のエンチャントを試してみたくはあったが素材が高価だったり、宝石等触媒が必要だったりとなかなか難しい。

 そういえば。

 三世はあることが思い当たった。

 部屋の奥から白い小さな玉を持ってきた。

 ビー玉くらいの小さな玉。

 それは女学生二人からのお礼としてもらった宝玉である。

 確かモンスターの体内から出てきたとかの。

「珍しい物持ってるね」

 コルネがこちらの白い玉を見ながら言った。

「お礼にと頂いたのですが珍しいのですか?」

「そうねぇ。兎なら千羽に一個。イノシシなら百匹に一個かな。瘴気が出てたり強い生き物ならもっと高確率で出てくるけど」

「兎やイノシシからも出るのですね」

「そうね。強くなればなるほど出やすく、そして大きくなるわね。エンチャントの材料にもなるわね。使ってみるの?」

 その言葉に三世は反応してエンチャントの本を読み漁る。

 ルゥの用意した食事を片手間に本の世界に没頭する三世。

 コルネはそれを注意しようとしたがルゥとシャルトは首を手で止めて首を横に振った。

 やりたいことがあるならそれをしてほしいと二人は思ったからだ。

「もう。二人は甘いんだから。男はある程度しつけないと後が大変なのよ」

 自分も恋愛経験無い癖にそれっぽいことを言うコルネ。

 それでもコルネも三世の顔を見たら二人の気持ちはなんとなくわかるようだ。


 三世は記述のある部分を見つけた。

 宝玉。

 モンスターの体内で見つかる素材で、魔力が固形化したもの。

 道具の材料にもエンチャントの素材にもなる。

 ただし専門の人間じゃないとそれがどのような効果をもたらすのか不明。

 作るものによって方向性は決まるし悪い効果は出ないが。

 つまりランダム要素か。

 三世はさきほど怒られたことも体に残った疲労感も忘れてマリウスの元に向かうことにした。

「ご馳走様でした。ちょっと出かけてきます」

 ルゥとシャルトは笑顔で手を振った。

 コルネは苦笑した。

「これはもう一回教育的指導が必要かな」

 誰に聞こえるでもなく独り言を発した。


「師匠。相談があります」

 マリウスは眠そうな目をしていた。

 そういえば自分と同じようにコルネに寝かされたのだったか。

「おおなんだ。また新しい技術でも見つかったか」

 眠そうな目のまま楽しそうな笑顔でマリウスが尋ねる。

 良かった。そういえば同類だった。

 三世は心からそう思った。

「いえ。これがあったのでこれの使い道の相談を」

「なるほど宝玉か。ちょっと見せてもらうぞ」

 三世の手から受け取りマリウスがじろじろとそれを見る。

「うーむ。小さいしそこまで強力じゃないが綺麗な色をしてるな。芸術品にしてもいいくらいだ」

「全部がこんな色じゃないのですか?」

「大体同じ色だがここまで鮮やかじゃないな。白い濁った煙のような色が基本だ」

 三世は宝玉を受け取り自分でもまじまじと見つめる。

 確かに綺麗だった。

 自分にはビー玉にしか見えないが。


「それでどうしたい?」

「それに困りまして」

 二人は意見を出し合った。

 指輪、ブレスレット、アミュレット、手袋に埋めるなども意見が出た。

「うーむ。いっその事革以外で行くか?」

「例えばどのようなものでしょうか?」

「金属の指輪とかどうだ?」

 三世は新しい技術を知ることに魅力を感じ、喜んで了承した。


 まずマリウスは見たこともないとんかちを取り出し白い玉を砕いた。

 そしてそれを丁寧に磨き上げて白い小さな玉を四つ作った。

「五つ出来るかと思ったがこれくらいか」

「砕いても大丈夫なのですか?」

 三世の質問にマリウスが否定した。

「普通は無理だ。というよりただ割ると消滅する。難しいコツがいるから必要な時は俺に言え」

 物を作っていて尚且つ人がいない時のマリウスは本当に頼りになる。

 三世は頷きながらもマリウスに尊敬の念を送る。


「あまった破片や粉を利用して磨こう。これで指輪四つ分の玉が出来たぞ」

「師匠。せっかくなので一ついかがですか?」

「いいのか?」

「いつもお世話になってますし指導料と思えば安いくらいですよ」

「そうだな。ルカへの土産になるしそうさせてもらおう」

「そうですね。いつもお世話になってますし、怒られたら怖いですしね」

「うむ。そうだな」

二人は笑いあった。


「金属の指輪は作り方が色々ある。鋳造や鍛造のような溶かして固める方法から金属を直接曲げたり削ったりする方法だ」

「今回はどうしますか?」

「時間も早く終わるし今回は直接曲げてつないでいこう」

 マリウスは綺麗な銀に近い金属の細長い棒を取り出した。

 三世は見覚えのない金属だった。

「最初はシンプルに指輪の形に曲げろ難しいならその棒に合わせて曲げたらなんとかなる」

 ペンチと太さがだんだん細くなる木の棒を渡された。それには指輪のサイズが号で書かれていた。

 三世は事前に調べていたルゥとシャルトの指のサイズに合わせて金属を曲げていく。

 右手中指の大きさに合わせて。

 思ったよりもこの金属が素直に曲がり綺麗な指輪の形となった。

「次はつなぎ目を消す。つなぎ目にこれをくっつけて炙れ」

 三世は渡された小さな同じ色の金属片をつなぎ目に合わせて炙る。

 金属片だけが綺麗に溶け繋ぎ目に埋まる。

「その後水につけて冷やし、つなぎ目の余計な部分以外を削ったらリング部分は完成だ」

 三世は言われた通りの作業をする。

 時間こそかかるもののそこまで手間取らない。

 自分の器用が高いのもそうだがマリウスの指導が非常に上手い。

「師匠なんかなれてますね。アクセサリーとか売ってるのですか?」

 マリウスは最初にあったような真顔な仕事人の顔になった。

 今だからこそわかるがあれは照れた表情だ。

「師匠?」

 三世は不審に思いマリウスに更に尋ねる。

「嫁がな。アクセサリーとかが好きなんだ。遠方で療養中だからせめて送ってやりたくてな」

 少し顔が赤くなって言葉を紡ぐマリウス。

「立派じゃないですか。ちょっと思ったより本格的ですけど」

 今見たらわかるが最初にいった鋳造やらの製法もここで全て作れるようだ。

 金属アクセなら全て作れる設備を用意している。


 それほど奥さんを愛しているマリウスを三世は羨ましく思った。

 自分には女性のじょの文字すら出ていないと思って。


「リングの部分は終わったが玉を合わせるために少し加工する。うまく削っていけ」

「その後爪、宝石とかを止める留め金を作って爪を溶接し仮留め、最後に玉をはめて爪をきっちり玉にあわせたら完成だ」

 白い綺麗な玉が入った小さな指輪が出来た。

 シンプルな指輪だが金属自体がいいからか無骨だがそれなりに見栄えが良い。

「さて効果を調べようか。こういったものは装着したら自然とわかる。付けてみろ」

 三世はそういわれて気づいた。

 三つとも女性用のサイズにしてしまったと。

 何故かしらないが勝手に手が女性用の指輪にしてしまっていた。

「……サイズが合わない場合はどうしたら」

 マリウスは難しい顔をしながらチェーンを渡してきた。

「女性に送るのは良いが刺されるなよ」

「大丈夫ですよ。そういった相手は出来る予定ないので」

「そうか。なんだかいやな予感がするがそういうなら気にしないでおこう」

 雑談をしながら三世は指輪にチェーンを通して首にぶら下げた。

「うーん。どうも衝撃を一回だけ防いでくれるようです」

「ふむ。使用回数は?」

「ううーん。自然とわかるって少し不思議な感覚ですね。一日一回みたいです」

「なるほど。転ばぬ先の杖としてみたら悪くない効果だな。あとは銘を決めろ」

「銘ですか?」

「ああ。それで完成だ。せっかく作ったんだから名前を決めないと」

「師匠も作ったし師匠が決めるのは?」

「俺にそういったことを期待するな」

「自分も苦手なのですが」

「お前ルゥとかシャルトとかお洒落な感じでつけてるじゃないか」

「そう言われましても」

 二人であーだこーだ言いながら、結局[安全第一の指輪]になった。


[安全第一の指輪]

 一日に一回だけ防ぎきれなかった衝撃とそのダメージを無効にする。剣や槍などには効果が無い。




 家に戻るとコルネがにこにこと玄関に立っていた。

 その笑顔は鬼の形相に何故か三世は見えた。

「働くことは大切なことです。でもオーバーワークはダメだとコルネさん思うですよ」

 玄関でにこにこと、ただし冷たい声でコルネが話す。

 三世は自然と正座の姿勢になった。

「ついでに言いますとルゥちゃんとシャルちゃん放置するのもどうでしょうかねぇ」

「おっしゃるとおりです」

 三世は小さくなりながらぺこぺこと怒りが過ぎるのを待つ。

「んでんで、私はいいとしても倒れたら困るのは本人だけじゃないでしょう?」

「はい。全くもってその通りです」

「心配する方の気持ちを考えないのは悪い大人の見本ですよ?もちろん私も心配しますよ?」

「はい。申し訳ありません」

「よろしい。罰として私も夕飯ご同伴に預かりますね」

 コルネは普通の笑顔になって三世の手をひっぱり立たせて台所に誘導した。


 食事の後ゆっくりお茶を飲んでいる時に三世はルゥとシャルトに話しかけた。

「ちょっとプレゼントがあるので受け取ってもらえませんか?」

「る?」

「ご主人からいただけるのでしたら何でも嬉しいです。何でしょう?」

 すっと二人に指輪を見せる。

「わー。綺麗!ヤツヒサありがとう」

 素直に喜ぶルゥと対照的にシャルトは固まっていた。

 そして顔が赤くなる。

「あの……これはどういったことでしょうか?」

 顔を下に向けてぼそぼそ呟くシャルト。

 それを不思議そうに見るルゥ。

「大した効果は無いけど一応役に立つアイテムだからつけてもらいたくて。右手の中指につけて下さい」

 シャルトがそれを聞いて憤慨していた。

「ええそうですね。期待してませんでしたよ!ご主人様ですもんね。はいはいわかってますよ」

 少し拗ねながら声を荒げるシャルト。

 三世にもルゥにも理解出来なかった。

 理解出来るコルネはシャルトを慰めた。

「まあいいじゃないしゃるちゃん。私なんて貰えもしなかったのよ」

 こっちもこっち口を尖らせて拗ねていた。


「ああ。もう一つあるので差し上げましょうか?」

 三世は首にぶら下げた指輪をコルネに渡した。

「サイズが合えばいいのですが」

 コルネはいくつかの指に合わせてみてぴったり合う指を捜した。

 ぴったりあってしまったようだ。

 左手の薬指に。

「ここはダメです。なんというかダメです!」

 コルネが慌てて外す。

「うーん。作り直しましょうか。サイズくらいならたぶん変えれるので」

 コルネが指輪を物欲しそうに見つめた後、三世に返した。

「これは返すわ。なんか私にじゃなくて他の人の物っぽいの。なんでかわからないけど」

「うーん。誰のとして作ったわけでもないのですが」

「代わりにヤツヒサさん。今度私に指輪作って!効果無くてもいいので」

「え。ええ。わかりました。私で良ければ」

 シャルトがにやにやとコルネを見た。

「シャルちゃん何!?」

「いいえ。何でもありませんコルネ様」

 ただし目はにやにやしたままである。


「るー。これ綺麗」

 キラキラした宝石のような瞳でルゥは自分につけた指輪を見ていた。

「あれくらい素直な方がきっと幸せになれますよコルネ様」

「そうね。指輪は欲しいけど男の人に貰うってどうかなって考える自分がちょっと汚く見えるわ」

 三人は指輪について盛り上がっていた。


 三世は自分の指輪を見ながら考える。

 普通に考えたら三つ目は自分用に作ればいいのに手が自然と女性用を作っていた。

 一体誰に作って誰にあげるつもりだったのか。

 考えても三世には答えが出てこなかった。



他にも銀粘土とかでこねて焼くという指輪の作り方とかもあります。


ありがとうございました。

もうすぐ三十万文字です。

お付き合いくださり感謝の極みです。


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