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勉強漬けの日々。-説明会-

 こっこっこっと足音が響いた。

 ざわついた教室が静まり返る。

 受講者は熱心な人しかいない。

 この辺りが学校との大きな差だろう。

 実際に自分の金銭に直結しているからというのもあるが。

 周囲を見渡す。

 今度は知っている人はいなかった。

 三十以上がほとんどで自分の年齢でも浮いてないのがわかる。


 教官らしき男が入ってくる。

 見た目でいうなら軍人のような人だ。

 姿勢が良く、体格が大きく、そして常に何かを睨み高圧的な態度。

「商人の講義にきた。俺の名前はいう気はない」

 低い声ながらよく響く声。聞きやすい音が耳に残る。

 内容のせいで教室はざわめき立っているが。

「俺の名前は自分で調べるか俺が覚える気になるような人間になれ」

 ざわつく声を無視して目を瞑り時間を待ちだす教官。

 場が静かになるのを待っているとわかるまでずっと目を閉じて回りを無視する。


 場が静寂に包まれたらようやく目を開いて話し出した。

「まずは原点であり頂点の話だ。どうしたら儲け続けられるか」

「お前。何か言ってみろ」

 適当な生徒に指を刺す。

 高圧的な態度に怯みつつ当てられた男がにたにたした顔で話し出した。

「そりゃいかに法の穴を抜けつつ自分だけが儲かる場を作るかでしょ。奴隷を使ってコスト減らして安いものをいかに高く見せるか」

 三世は腑に落ちないが確かに答えではあるなとは思った。実際他の生徒も頷いている。

「そうか。0点だ。そのままなら確実に失敗する」

 男は教官を睨みつける。

 自分の考えは絶対だといわんばかりに。

 ただし教官と目が合った瞬間目を剃らす。

「くだらん答え以外にないか。次はお前。答えてみろ」

 教官は三世に指を刺した。

 三世は立ち上がり答える。

「技術でも加工でもとりあえず自分だけが出来る物を売ります。オンリーワンであれば売り続けることが出来るかと」

 教官は考え込んだ。

「ふむ。そうだな。50点だ。着眼点は悪くない。ただし理想論過ぎる。後追いのコピーの怖さもあるからな。それでも悪くはない。先ほどの阿呆に比べたら」

 悪くは無かったらしい。

 三世はほっとした。


「では答え合わせだ」

 教官が話し出す。

「まず最初に誤解を解いておこう。詐欺や搾取などのズル、反則、誤魔化し、要は『悪いこと』と一般的に呼ばれることは商人としてみたら避けないといけないことだ」

「別に善人になれというわけではない。最終的に儲からないからだ」

「詐欺で例えを出すが短期間なら大きな儲けが入るが客足は減ってくる。評判は下がっていくからな。また最悪国の介入で全財産没収だ」

「捕まるリスク。収入の低下。どちらも避けないといけない問題だからだ」

「実際に嘘つきの強欲商人と正直な強欲商人なら正直な方が稼げると統計でも出ている」

 強欲なのは必須らしい。


「だったら商人として生きるならそうすべきかと言うと善悪は関係無い。売っても無くならない売り続けられる物がある」

「そう善悪関係なく、『信用』を集めろ。商人として生きるということは信用されている人という意味だ」

 三世は言いたいことは理解出来た。出来る自信は無いが。


「次に商人として必要なのは知識だ。今日は交通という概念から二国だけ話す。詳しく知りたかったり別の国は自分で調べろ」

 教官はどこからかホワイトボードのような物を取り出し書き込み始めた。


 ラーライル王国

 神聖スピカ王国

 ガニアル王国

 ラスガルド帝国

 レスティマエル軍事連邦×


「以上が今ある五カ国だ。最後の国は放っておけ。どうあがいても国として機能していない」

「先生。何故機能してないんですか?」

 どこからか声が聞こえた。

 その声に舌打ちをして話し出した。

「次関係無い話は無視する。簡単だ。ドラゴニュートに喧嘩売って反撃で死に掛けてるからだ。しかもドラゴニュートはこの国を気に入ってもう三十年もなぶり続けている」

 予想の斜め上に哀れなことになっていた。

「どうあがいても商売できる国じゃないから無視しろ。今回注目するのはこの二国だ」

 そう言いながら教官はラーライル王国とガニアル王国に○をつけた。


「まずラーライル王国。国の特産としてみたら特に無しだ。別に凄く売れる何かがあるわけではない。ただし五カ国で一番裕福だ」

「理由は二つある。一つはこの国が一番稀人が多く来るからだ。そしてもう一つ。王族が何故か外交が上手い」

「王族は稀人の知識を外資に変えつつ安全を確保している。だから裕福だし稀人を手厚く保護する」


「次はガニアル王国。ラーライルに比べたら落ちるが上手くやっている国だ。特に食に対する拘りが強く食料売買で稼ぐならここだけでいいだろう」

「そして唯一ラーライル王国と国家単位での友情が成立している。二カ国での貿易は安定して稼げる。初心者ならこれがオススメだ」

「また特産品の中に米という食料がある。これは稀人の世界の物で高く買う人が多い。覚えておいたらいいだろう」


 教官が今日話したことをホワイトボードに纏めだした。

「とりあえず今日のことはここに書いておくから不安なら確認しろ。残りの時間は喜べ自習だ」

 教官は自分の席の上に束になった紙を置いた。

「一人一枚持っていけ。これを全問正解したら帰っていいぞ。出来ないなら二度と来るな」

 慌てて他の生徒が走って紙を取りに行く。三世は出遅れた。

 人を押し出して進むということがどうしても出来なかった。

 結局十分後にようやく教官の席の紙を見ることが出来た。

 回りの生徒はすでに始めている。多くの生徒が頭を抱えていた。


「好きに解いてもいいが答えだけはきっちり合わせろ」

 三世は恐る恐るその紙を見た。

 表裏に計算式が書いてあった。

 最初は足し算一桁。

 最後は掛け算の三桁。


 そういえば異世界で中世くらいの文明だったな。

 三世は今思い出した。

 元の世界が平和な為に自分達はしっかり学ぶことが出来た。

 先人の知識を纏めて覚える機会に恵まれた。

 三世は地球の先人に感謝をしつつ。


 問題をさくっとクリアして終わった。








 そしてあっという間の一週間が終わった。


 植物の知識とスカウトの歩行。安全な場所の見分け方から獣のさばき方。

 斥候の基本はこの一週間で何とかなったようだ。

 ただしルゥとシャルトは覚えることの多さでゾンビみたいになってしまったが。


 商人のほうは思った以上に覚えやすい先生だった。

 初日の常識関連から商売するときの注意点。商業ギルドや工業ギルドににらまれないように立ち回ったり書類の作り方。そして簡単な貿易方法。


 また何か覚えたいことがあるときは来よう。

 ただし暫くは無理だろう。

 帰りの馬車の中で死んだ顔になってる姉妹を見ながら三世は思った。




ありがとうございました。

明日明後日はもしかしたら更新できないかもしれません。

エターになったわけではなくPC触る時間が無い可能性があるからです。


更新無い時は何か行事がある時か仕事が重なってしまった時。

後PCがお亡くなりになった時だけです。


その場合も早めに連絡致します。

では再度ありがとうございました。

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