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職業訓練

長くなりました。

 

 三世達は今自宅にいた。

 遊びに来ているコルネとルゥとシャルトの三人でワイワイと楽しんでいる。


 その中に混ざりたい気持ちはあるのだが、性別的にも年齢的にも辛く感じる三世。

 コルネに二人を取られた三世はその空いた時間でエンチャントの本を読むことにした。

 ただ読むだけでも難易度が高く、理解するのに時間がかかる。

 時間はかかるが、学生の頃の勉強のようで、知識が増えていくことに楽しさを覚える。

 三世は、楽しみながらゆっくりとエンチャントについて理解を深めていった。


「ご主人。新しい提案があります」

 遊んでいたはずのシャルトが急に話しかけてきた。

「何でしょうか?」

「ご主人の呼び方をもっとペットらしくするのはどうでしょうか?主様とか旦那様とか、見た目的にはご主人様が一番にいいのですが」

 シャルトは割と呼び方に不満があるようで時々言ってくる。

 別に新しい提案でも何でもなかった。

「むしろヤツヒサだけでいいと私は思うのですが。少なくても様付けは身内にして欲しくないなぁ」

 三世にとって様と呼ばれるのは仕事やお店の中の話だからだ。

 実際に呼ばれると壁を感じてします。

「む、難しいですね。ではまだご主人と呼びます」

 名前を呼ぶのは恥ずかしいらしい。

 シャルトの感性がよくわからない。


「真面目に新しい提案があります」

 改めてシャルトが話しかけてくる。

「聞きます」

「学問所に行くのはどうでしょうか?」

 学問所とはこの国にある大人の学校だ。

 といっても近いのは職業訓練所らしいが。

「詳しく話していただけますか」

 わかりましたと頷き、話し出す。


 国が認めた職業と冒険者ギルドと魔法士ギルド、大きくわけてこの三つが学べる。

 冒険者としてレベルアップが期待出来るのが一つ。

 もう一つはこれなら運動でないため私も学べるとシャルトが言った。

 そして大きな理由があった。


「無料で受けられますよ」

「ほう。詳しくお願いします」

 シャルトの言葉に三世が激しく反応する。

「まず稀人様。つまりご主人はまだこの世界に来て月日が立っていないので国の支援として一週間泊まりコースが宿泊食費全て含めて無料になります」

「なるほど」

「そして奴隷はご主人についていけば無料になります」

「なるほど」

「詳しくはコルネ様が持って来て下さったこちらを」

 シャルトは三世にパンフレットを渡した。

 丁重な作りの革の表紙。

 その中に詳しく記述がされていた。

「でもお金が凄いかかるやつは自費になるから気をつけてね」

 コルネがルゥとじゃれながら話してきた。

 ルゥが持ったねこじゃらしをコルネがちょいちょいと手で叩く。

 普通逆なような。

 そう思ったが何も言わないでおこう。


 パンフレットを読む。

 全部で三種類まで受けられるが種類を増やすほど一つが薄くなる。

 朝昼夜と二時間ずつの講義があり一日三講義を好きに割り振れるらしい。


 肉屋や魚屋から軍人まで色々な職業があった。

 冒険者コースは当然受けようと思っていた。

「ああ冒険者コースは止めといたほうがいいぞよ」

 ごろごろと猫のように転がりながらコルネが話した。

「何故でしょうか?」

「それ名前の書き方とかマナー講座からよ。やるならもう一つ上からがいいよ」

「なるほど。オススメは何かあるでしょうか?」

 コルネがその言葉に考え込む。

「そうねぇ。斥候、狩猟、防衛、指揮。この辺りのコースは学びやすくて効果が高いわね」

「ふむ。シャルトはどれが学びたいですか?」

 シャルトは迷わず言った。

「スカウト。斥候コースですね。私とルゥ姉のスペックをフルに発揮出来るのはスカウトだと思うので」

「採取依頼にも狩猟依頼にも関わるからお金的にも良い感じよ」

 コルネがシャルトの後押しをする。

 三世は頷いた。

「それともう一つ受けたいコースがあるのですが良いでしょうか?」

「いいですよ、ご主人は何を覚えたいのですか?」

「はい。商人コースを受けてみようかと」


 話し合った結果、朝と昼をスカウト講義、夜を商人。

 そして獣人で奴隷の二人にはあまり関係ないから夜の間はコルネが遊んだり勉強を教えたりと色々してくれることになった。

 さっそく翌日から行こうかという話になったがその前にすることがあった。

 休暇願いだ。


 マリウス宅に行ってマリウスに一週間の休みを頼む。

 特に問題も無くあっさりと取れた。

 といっても今仕事を消化しきっているからだろう。

「ただし、来月は例の仕事が入る予定だからしっかり準備しておけ」

 マリウスが脅すように話す。

「準備とは?」

「前卵のカバン作ったときあっただろ?あれより酷い現状を想像しておけ」

「了解しました」

 練習だけは欠かさないようにしようと三世は心に誓った。


 城下町に行き、学問所に申請して宿泊する場所に着いた。

 今日から一週間はここに寝泊りする。

 三世はいい加減移動手段を何とかしたいと考える。

 と言ってもどうにもならないが。

 メープルタクシーもいい加減悪い気がしてきた。

 バイクや車があれば早いのだがそうもいかないだろう


 学問所の宿泊施設に入る。

 部屋を見ると簡易ホテルのような形状だった。

 一人用の椅子とテーブル。

 そしてちょっと大きめの一つのベット。

 既に時刻は夜。

 寝る時間な為三人は同じベットに入った。

 奴隷を別の部屋にするわけにもいかず、

 コルネに頼もうと思ったが遅刻の可能性を考え一緒に寝るしかなかった。


「えへへー。久々の一緒」

「三人で寝るのは初めてなのでとても嬉しいです」

「私も嬉しいよシャルちゃんとヤツヒサと一緒に寝るの」

 喉を鳴らして顔を腕に擦り付けるルゥと反対側で腕にしがみつき丸くなってくるシャルト。

 ただ最近は三世も戸惑うことが減ってきた。

 異性という気持ちでなく、娘のようなペットのような。

 そんな気持ちが大きくなってきたからだ。

 それでも美人が二人である。

 困るときは困る。それはしょうがなかった。




 朝の講義の時間が来た。

 朝起きて簡単な朝食を取りそのまま講義室に。

 講義室は学校の教室といっよりは会社の説明会のような感じだった。

 三人用の木製のテーブルのところに三人は着く。

 横を見るといつもと何も変わらない元気なルゥ。

 反対側は対照的に眠そうな目をこすっているシャルト。

 朝が弱いのは知っていたがいつもと違う場所で寝る為寝つきが悪かったようだ。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫です。始まったら何があっても起きますので」

 船を漕ぎながら言葉を返すシャルト。大丈夫だと祈りたい。


 三世は回りを見た。

 大体二百人くらいだろう

 何人か見知った顔がある。

 一緒に転移した学生だったかな。

 それを除いたら大体が二十歳くらいでほとんどが男。

 何人か年齢が高い人もいて一番上は六十歳くらいだろう。


 時間が来たのか雰囲気が変わる。

 授業が始まる雰囲気は非常に懐かしかった。

 学生の頃どうだったかあまり覚えていないが。

 かっかっと足音を鳴らして雛壇の上に上がる講師が二人。

 一人は女性。短い金髪がさらさらと靡く、幼い顔立ちに軽装の騎士団用のだろう金属鎧を着けている。

 というか見知った人だ。

「はーい。今日講師を務めますラーライル騎士団第二中隊隊長のコルネです」

 にっこりと挨拶をする。

 彼女を見下したり否定する者はこの場にいない。

 城下町で彼女を知らない人間はいないだろう。

「そして今回コルネ隊長のサポートを任されました冒険者のマサツグです。雑用要員なのでそこまで気にしないで下さって大丈夫です」

 もう一人は田中だった。

 いつもの魔法使いのような格好でなく今日はこっちの世界の一般的な市民の格好だった。

「それでは講義を始めます」

 コルネの言葉に教室に緊張が走る。

 シャルトもすっかり目を覚ましたようだ。


「まず斥候(スカウト)の大切な仕事は敵の感知。何かまで分かればいいけど最低でも接近する前にこっちから気づくように心がけることね」

「そのための周囲警戒を怠らないこと。場合によっては単独での偵察もありえるから音を殺す為に軽装非金属が推奨よ」

「後は剥ぎ取りや肉の加工。そして料理などが兼用されやすいわ。保存力の管理何かも仕事に入る場合もあるわ」

「これを覚えた上でに最初にマスターしないといけないことは自然を知ることよ」

「足跡や糞などの痕跡からどこまで理解できるか。フィールドを見て何がいるか予測できるか。そして今いる場所に食料があるかどうか」

「自然の食料は貴重よ。特に痛みやすい果物などをこまめに食べられるならコンディションの大きな差になるわ」

「軍人や騎士団ならこれに加えて少人数の偵察」

「冒険者でパーティーを組む場合は更にこれに加えて要素を要求されるわ」

「例えば弓や投擲武器がメジャーね。ナイフや手斧など」

「後はオススメしないけど対人特化もあるわ。盗賊や人型の魔物相手に特化する戦略ね」

 コルネが説明していくことがそのまま書き写してコルネの後ろの壁に田中がどんどんと張っていく。

 黒板は無いらしい。


「ということで今日してもらうことはこれです」

 コルネと田中が手分けして全員に教本を配った。

 紙束を紐で縛っただけの物だが。

 二十ページほどの量でその中には植物が載っていた。

 大体全部で五十種類ほど。

 この周囲の植物だ。


「はいこの教本を出来る限り暗記して下さい。出来ているか試験もします。七割超えたら合格。講義内で超えられなかったら午後の講義はキャンセルになります」

 コルネの声にざわつく教室。

「字が読めない人は他の人と協力しながら頑張って下さい。はい始め!あ、教本は終わったら返してね。余りそんなに無いから」


 周囲のいたる所から大きく必死な声が響く。みんな慌てて動き出す。

 周りを見渡すが全員必死にがんばっていた。

 三世はそれが嬉しかった。

 冒険者ギルドにいたのは暴徒みたいな人が多かった為少し不安だった。


 もちろんシャルトとルゥもがんばっていた。

 教本を睨めながら悪戦苦闘する様がわかる。

 記憶力は高く頭も良いが字を読むのがまだ苦手なシャルト。

 字は読めるが記憶にいつも鼻を使っていた為覚えが悪いルゥ。

 そんな二人を三世は助ける。

 二人に分かりやすく字を読んであげる。

 また解説やちょっとした所を説明する。


「ご主人。気持ちはありがたいですがご主人も自分の分をしていって下さい」

「るー。そうだよ。私達もがんばるけどヤツヒサもがんばって!」

「ああいや私は後でいいから」

「「ダメ!」」

 二人は三世のことを考えて拒絶する。

 あくまで迷惑をかけたくない。奴隷だからこそのスタンスを変える気は無かった。

 それを頭をかいて困る三世。

「うーん。じゃあちょっと待って」

 三世はそのままコルネの元に行く。

「試験お願いします」

 教本を配ってまだ十分ほどしか立ってなかった。


「はいじゃあこれは?」

 コルネが植物のイラストしか載っていない紙を見せる。

 緑豊かな葉でシダ状の見た目。そして新芽がくるんと丸まっている。

「ゼンマイです。若いうちなら食べられますし稀人の世界にもありますね」

「へーそうなんだ。じゃあこれは?」

「トルー草ですね。塗ると傷薬。食べると栄養剤になります。どうしても美味しくならないので嫌いですが」

「うん私も嫌い。次はこれは?」

「火茸ですね。一個で三時間燃え続けるので外での料理や焚き火に便利ですね」

 ぽんぽんと答えていき、十五問連続正解で合格となった。

 速攻で終わらせた三世に辺りがざわついた。


 そりゃあ全部覚えているに決まっている。

 この教本を作ったのは田中だと三世は気づいた。

 田中の覚えていることは三世も大体覚えている。

 最初の冒険の薬草集めの時に二人で調べたからだ。

 自分でもこの順番に並べるなと思うくらい教本に書かれていることは見慣れたことだった。


「ヤツヒサ凄い!もう覚えたの?」

 純粋に感動するルゥと小さく拍手をするシャルト。

 そして回りからかなりの注目を浴びてしまった。

「いえいえ。知っていただけですよ。というかルゥは全部見てるはずですよ?」

「るー。絵じゃわからない!」

 ここにきて嗅覚に依存していたことがアダとなったようだ。

「まあ二人とも合格できるようにしっかり見ますから。がんばりましょう」

 今度は素直に三世の教えを二人は受けた。

 シャルトはあっさり合格出来たがルゥがなかなかに苦戦した。

 それでも必死にがんばり残り時間三十分辺りで合格を貰えた。

 手を叩きあうルゥとシャルト。

「おめでとルゥ姉!」

「待たせてごめんねしゃるちゃんとヤツヒサ!」

 邪魔にならない用に教室を出た。


 まったりと時間を過ごし無言で昼を食べて午後の講義に出る。

 午後は同じ内容で今度は実技だった。

 実際の植物を見て効果を説明出来たら合格。

 今度はルゥが一番乗りでクリアした。

 鼻が使えるならルゥは今まで見た植物を粗方覚えている。食べれるなら完全に暗記もしている。

 周囲から一層大きな声が轟く。

 奴隷が……

 何故……

 獣人の奴隷に知識で負けたことに納得がいかないような雰囲気だった。

 そして三世も続いて試験をクリアする。


 後ろを振り返るとルゥがシャルトを教えていた。

 意外と上手く教えているようでこれならシャルトも大丈夫だと三世は思った。

 そして三世は暇になる。

 困ったら手を貸すが必要なようにも見えなかった。

 ぼーっとルゥとシャルトを見ていたらちょいちょいと背中を引っ張られた。

 後ろを振り返る。

 にこにことした少女がいた。

 確か以前家に来た一人だったと三世は思い出した。

「確か笹山さんだったっけ?」

「いえすおふこーす。覚えにくいならささみと呼んでくださいな」

「了解。それでささみさんどうかしましたか?」

 ささみは顔の前で両手を合わせた。

「へるぷみー」

「ええいいですよ。どの辺りからします?」

 笹山は笑顔のまま、確かに困った顔をする。

「あっちのほうを」

 笹山が指差した方角を三世は見た。

 教本を鬼の形相で睨みつける羽嶋ゆまがいた。


 最初の日から三世を気にし続けた唯一の少女。

 教師が見捨てても彼女だけは最後まで三世達のことを心配し続けた。

 そんな彼女は遠くにいっていて、今は鬼の顔をしながら青くなる化物と化していた。

「あれは一体何が?」

「暗記科目苦手みたい。私教えるの苦手で。何とか出来るならしてもらえないかな?」

 笹山が手を合わせてこちらを拝んでくる。

 後ろを見ると順調そうなシャルト。

 時間があるし手伝うことにした。

「いいですよ。ちょっと行ってきます」

 三世は羽嶋の元に歩み寄った。


「すいません。ちょっといいですか?」

「今忙しいから!ってヤツヒサさんじゃない!」

 羽嶋は今気づいたようだ。それほど集中していたのか。

「色々お世話になってありがとうとか恩が返せないとか言いたいことあるけど今すいませんいっぱいいっぱいなので」

 一度も教本から目を離さない。ずっと鬼の形相のままだった。

「いえ。お手伝いさせていただこうかと」

「いらない!自分の分をしないとだめでしょ?」

 羽嶋は同級生に話すように三世に話した。

 必死なせいだろう。

「いえ私もう終わってるので」

「うっそ!?」

 羽嶋が始めてこちらを見た。鬼の形相は解けている。

 三世はこくんと頷いた。

「だったらお願いします。恩重ねて申し訳ないけどちょっと私無理」

 半泣きの状態で羽嶋はこちらに懇願してくる。

「大丈夫ですから落ち着いて下さい。ゆっくり言っても間に合いますから」

 植物の特徴付けをしながら丁寧に説明していく。

 絶対に間違えたらいけない毒の部位や危険な植物。

 そのあたりを重点に繰り返し反復して覚えさせる。

 三世も集中して教える。

 羽嶋は確かに物覚えが良い生徒では無かった。

 しかし集中力は高く諦めていない。

 三世は自分がそのようなタイプだった為親身になって教えていく。


「やりました!合格しましたよ!」

 羽嶋は残り五分、最後の合格者となれた。

 最初の講義で二割。今回も一割ほど合格していないものがいる中で十分な頑張りといえるだろう。

「よくがんばりましたね」

 三世はいつもの癖で羽嶋の頭を撫でる。

 えへへと喜ぶ羽嶋。

 年相応の顔つきにようやくなった。

「って年頃の女性に頭撫でたらダメだよ!」

 我に返って羽嶋がこちらに説教しだす。

 回りは何を言っているんだという顔になっていた。

「まあ授業料と思えば安いんじゃないかな?」

 笹山が羽嶋に言った。

「すいません。ついいつもの癖で」

「いつもってうらやまいえなんでもないわ」

 羽嶋がごほんごほんと咳払いで誤魔化す。

「ご主人。お疲れ様でした」

 とっくに合格していたシャルトとルゥがこちらに合流した。

「あら。また増えたのね」

 羽嶋がちょっと冷たく言う。

「すいません。うちのゆまっち嫉妬してるだけなので」

 笹山の言葉に羽嶋が真っ赤になって怒り出す。

 それを無言で眺めるルゥとシャルト。

「増えてるってことはゆまっちワンチャンあるで」

 笹山は肘を羽嶋に当てながらニヤニヤしていった。

「いやないから」

 冷静に断る羽嶋。

 それを見てルゥが一言呟く。

「耳を生やせばわんちゃんあるんじゃない?」

 三世とルゥ以外が笑った。

「いやいや。流石に獣耳が好きなわけじゃないですよ。ねぇ?」

 三世の言葉をみんなが聞かないフリをした。


「るー。わんちゃんになるんじゃないの?」

 ルゥの小さな呟きを聞いたのは誰もいなかった。


「お世話になりました。これお礼です」

 にこにことした顔のまま笹山が三世に白いビー玉くらいの小さな玉を渡した。

「これは?」

「野生生物とかの中で時々見つかる宝玉ですね。そんなに高いものじゃないけど売ったら銀貨十枚以上にはなるよ」

「ああ。それ渡すのか。うん。いいと思う。お世話になったお礼の一部にもなるし」

 笹山が渡したものを見て羽嶋も頷く。

「へぇ。こんなものあるのですね。それでこれはどうしたらいいものなのでしょうか?」

「うーん。装備製作の一部の材料になると聞いたけど売るのが一番かな。出回る数少ないからうまくかみ合えばけっこういい値段になるよ」

 羽嶋が答えた。

 三世はありがたく白い宝玉を受け取った。

「それと問題解決してくれたり色々お世話になりました。みんな大分マシになってきたから私達は完全に独立してやることにしたよ」

 しどろもどろな敬語を使いながら羽嶋は三世に話しかける。

「無理に敬語使わなくてもいいですよ。後私じゃなくてコルネさんがしたことなんで私は何もしてませんよ」

 じゃあ普通に話すねと羽嶋が言って続けた。

「コルネさんに言ったらヤツヒサさんにお礼しろって言われた。まあ私もヤツヒサさんにお礼しないといけないと思ったし」

「いいんですよ。強いて言えば二人と仲良くしてくれたら嬉しいですかね」

 三世はシャルトとルゥを見る。

 シャルトはルゥの後ろに隠れて威嚇していた。

「見ての通り人と付き合うのが苦手な子なので」

「それなら私達の得意分野よ!」

 羽嶋と笹山は得意顔で言い切った。


 コルネも合流し五人でどこかに出かけた。

 女子会を楽しんでくるそうだ。

 シャルトが少し心配だが大丈夫だろう。


 一人で夕食を食べる。

 朝食昼食の時も思ったが自分が贅沢になっているのに気づく。

 決してマズイわけではない。

 むしろ美味しい部類なはずなのに舌が上質な料理にならされて違和感を訴え続けていた。

 それでもとりあえず黙々と食べる。

 一人で食べる食事は思った以上に寂しかった。


 そして一人夜の講義の準備を始めた。





ありがとうございました。

斡旋してくれないハローワークみたいなものです。

しかもチート無双ですね。

ただ一緒に学んだ相手が先生になっただけですが。



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