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異世界転移でうだつのあがらない中年が獣人の奴隷を手に入れるお話。  作者: あらまき
成長する獣人奴隷。獣離れ出来ない甘党人間
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迷探偵るー

2018/12/28

リメイク


ルゥパートです。

話的には書きやすい(勝手に動くから)ですが文章にするのが難しいですね。



 ルゥは一人家の中でむふーと言った満足そうな表情を浮かべていた。

 手を腰に当て、胸を張って威張るような格好をし胸元に見えるエンブレムを誇示するように。


『食料被害対策:特別協力者ルゥ』


 肩書きを挙げるのが趣味の村長と、ルカの協力の下マリウスといったルゥの事が好きな人達により作られた特別なエンブレム。

 木製の本体に文字を彫りこみ、その部分に墨を流し込む。

 そんな丁寧な作業の後に金属で周囲を補強。

 裏地は肌に当たっても不快感を覚えない皮製にして紐を通し首に掛けられるようになっている。

 ルゥ本人の脳内ではとてもカッコいい物だが、実際は迷子札にしか見えなかった。


 始まりは簡単だった。

 三世とコルネを見送った後にルゥは食器を片し、村長のところに向かい、自分も村の為に手伝いたいと提案した。

 その様子に村長はいたく感動し、それをマリウスとルカに話したら二人は感心し、ルカがそういう事ならちゃんとした肩書きをあげようと提案してそういう話となった。


 といっても、何か命令があったり警備や巡回にルゥが参加するわけではない。

 人と行動ルートも違う相手だからこそ変わったアプローチをかけたい。

 また人と一緒にいても速度でも嗅覚でもルゥの足を引っ張ってしまう。

 そんな理由から、ルゥはソロでの自由活動で今回の騒動の調査と原因特定を突き止める任務を命じられた。


 きりっとした顔で玄関に向かい、かっこつけのために帽子を被り――帽子は耳が隠れて不快だった為そっと帽子を脱いで元の位置に戻し、ルゥは一人で村に繰り出した。




 まず、ルゥはこの前荒らされたという果物の保存庫に向かった。

 近くに来ればどこかすぐにわかった。

 数人の村人が警備の為に待機しているからだ。


「お疲れ様です!」

 村人はルゥをを見て目上の人のように丁寧に挨拶をした。

 ルゥはちょっとだけ誇らしかった。


「るー。中に入っていい?」

「もちろんです。ただこちらはもう復旧しているので特に見るべき場所はないと思います」

「はーい。一応いってみるね」

 そう言ってルゥは扉を開けてもらい、中に入った。


 中には見たことある果物や見たことない果物でいっぱいだった。

 量、種類共に多く匂いでルゥは酔ってしまいそうな錯覚に陥る。

 そしてその匂いの中に僅かに動物のような匂いが混じっていた。

 果物の臭いが強くて何かまではわからないが、確かに獣の臭いだった。

 保存庫の復旧が完了している為、他に分かる事は何もなかった。


 外に出てルゥは警備をしている村人に尋ねた。

「るー。荒らされたのって右奥あたり?」

「全体的に荒れてましたが特に酷かったのはその辺りでしたね」

「ありがとう。後入ってすぐの右上の箱の中、傷みかかってるよ」

 ルゥは挨拶の後に腐りそうな果物を教えてあげ、別の場所に向かった。



 次にルゥが行ったのは精肉を保存する場所、今日襲撃された場所である。


 そこに行くとさっきより多くの人が警備をしていた。

 周囲あわせて十人ほど。

 入り口を固めている数人を除いたらぐるぐると回りながらピリピリした空気を出している。

 その人達も、ルゥに気づいたら怖い空気を消して微笑みながら挨拶をしてくれた。

「お疲れ様です!」

 全員丁寧に、深く頭を下げてお辞儀をする。

 丁重な扱いにルゥはちょっと恥ずかしくなってきた。


 狭い村な上にフィツの所でがんばっている女の子。

 いつも明るく誰にでも変わらず笑顔を振りまくルゥは村の中で人気者となっていた。

 ただし、恋愛感情を持つものは悉く裏で教育的指導を受けていたが。

 人気ではあるが、そういうのは許されないと考えられていた。




「るー。みんなお疲れ様!中はいっていい?」

「もちろんです」

 入り口にいた人が脇にのけ道を開ける。

「中は冷えるのでこれをどうぞ」

 脇にのけた一人がルゥに上着を貸し出す。

「ありがとう」

 ルゥは上着を受け取り、身に着けてから中に入った。

 中は冷蔵所になっていて、予想以上に冷え込んでいる。

 氷点下ほどではないが、冷蔵庫くらいの寒さはあった。


 本来ならばここに、豚や牛が加工してつるされているのだろう。

 しかし今ぶら下がってるのは針金状の何かのみで、下に骨がちらばり食べ散らかした後が散乱している。

 無事なのは奥にあるベーコンやソーセージなど加工済みのものだけだった。

 後は食い残しと骨しか残ってない


 残念ながら、ここでは嗅覚を頼りにすることは出来そうにない。

 ルゥはしかめっ面をしながらそう考えた。

 おそらく、奥に血抜きの施設があるのだろう。

 鉄を感じるような血の強い匂いのせいで嗅ぎ分ける事が出来なくなっていた。


「よし。全くわからん」

 ルゥが何故か満足そうに頷きながらそう呟いた。

 難しい事を良く考えている三世のように、何か知恵を働かせようと思ったが、寒くて何も考えられない。

 ルゥはこの場所から出る事にした。


 

 外に出てから上着を帰し、ルゥはゆっくりと考え事をはじめた。


 …………。


 ……………………。


 …………………………………………。



 が、必死に考えても何も思いつかない。

 というかまず何を考えていいかがわからない。

 ルゥは眉をハの字に曲げた。


 ルゥは最初に村長に言われた言葉を思い出した。

『好きなようにやっておくれ』

 優しい穏やかな顔でルゥに任せるその言葉。

 単純に孫を見る気持ちになっただけだが。


 だがルゥはそれを無上の信頼と受け取っていた。


 好きなように。

 つまり自分の好きなとこだな。

 お腹が空いてきたルゥは次にパンの貯蔵庫に行くことにした。


 周辺警備はいるがその貯蔵庫に見張りはいなかった。

 誰も狙うなんて思ってないようだ。

 果物と肉というよく食べられる食料を優先して警備しているためそこには誰もいない。


 嗅覚に集中したルゥは、びっくりするほどおいしそうな匂いが漂ってくる事により魂をゆさぶられる。

 そしてそのまま、ふらふらーと中に入っていった。


 扉を開けたら日持ちしそうなパンが所狭しと並んでいる。

 どれも数日以内に食べるから貯蔵庫というよりただの一時預かりのような場所。

 だから入っている物はほぼ新しく、小麦の焼けた匂いがルゥを更に魅了していく。

 そこで、ルゥは自分のお腹が空いている事に気が付いた。


 そういえば調査で回っていて昼の時間も過ぎている。

 誰もいない。

 ルゥは自分の欲求に我慢できそうになかった。




「るー。るぅは悪い子になってしまった……」

 ルゥはしょんぼりしながら、お店の横のベンチで座りパン見つめ、齧った。

 中にクリームの入ったサンドイッチ状のパンを、ルゥは頬張り幸せそうにしていた。

「おや。なんでルゥちゃんが悪い子なの?」

 露天でパンを売ってるおばちゃんがルゥに笑顔で話しかける。

「るー。お外で買い食いしちゃったから」

 ルゥの中では三世に貰ったもの。

 三世に上げた分の残り。

 それ以外は許可無く食べるのは悪いことだった。

 もちろん人の物を取るという発想なんて全くない。

 例え飢えて死んだとしても、ルゥは絶対に他人の物に手を出さない。

 それをすると三世が困り悲しむと知っているからだ。


「別にいいのよ? ご主人様もルゥちゃんがお腹空いて泣いている方が悲しい気持ちになるわ。おばちゃんが保証してあげる」

 そう言っておばちゃんは胸をドンと強く叩いた。

「……そっか。だったら後で言っても怒られないよね?」

「もちろん。もし怒られたらおばちゃんに言いなさい。そんなご主人様、私が怒ってあげるから」

 おばちゃんの冗談混じりの軽口はルゥにとって新鮮で、とても楽しかった。


「よく食べるねぇ。もう一個おまけにあげよう」

 パン三つかるくぺろりと食べたルゥにおばちゃんは更に一個渡す。

「わー。これ何?」

「チーズのパンよ。中にチーズ、生地にチーズ。更に上にチーズ乗せて焼くから濃厚で美味しいわよ。もしかしてチーズ嫌いだった?」

 ルゥは首を横に振り、お礼を言ってから嬉しそうにもっふもふとしたパンをかじった。

 ふわふわの生地に中にしょっぱいチーズ。

 そして上はカリカリになったパン混じりのチーズ。

 どのチーズも違う味がして、とても美味しかった。




 笑顔でおばちゃんとお別れし、ルゥは村を散歩する。

 警備でいつもより人は多いが概ねいつも通りの風景である。

 多少ピリっとした空気はあるが、良くある事らしくそこまで問題になるほどではないらしい。

 途中で立ち寄ったフィツに尋ねてもあと数日これが続かない限りは問題ないそうだ。


 それでも胸にある肩書きの為に、村の人の期待の為に何とかしたいと思い、ルゥは村を歩き回った。

 村の人に挨拶をして、村の人と話して、少しでも情報が見つからないかと探り続けるルゥ。

 そんな時――ルゥの鼻が何かを嗅ぎ取った。


 それは食料庫と同じ肉の匂いだった。

 ルゥは全力でその方角に走った。

 獣人の特性を全開での疾走。

 村を出て草原を走り、木と木の隙間を縫うように速度を緩めず走り続ける。

 だが、どれだけ走っても追いつけない。

 どうやら同じ匂いのナニカも走って逃げているらしい。

 ルゥもそれを全速力で追い……気づいたら対象の匂いは消えていた。


 基本的に、追いかけっこでルゥが負ける事はない。

 だからルゥは見失うなんて事を考えてすらおらず、首を傾げた。

「……あれー?」

 きょろきょろ回りを探るが、影も形もない。

 ルゥは気のせいだったのかと考え、しょんぼりしながら村に戻っていった。


ありがとうございました。

そろそろ二十万文字ですね。

書くのはいいのですが読むのって大変ですよね。

お付き合い下さりありがとうございます。


二部からタイトル変えようか悩みましたが最初から追って下さった方もいらっしゃる(と思う

ので

何か無い限りはこのままで行きます。


では再度ありがとうございました。

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