人を助けることが出来る獣人奴隷
2018/12/24
リメイク
ルゥパートです。
幼稚に書きすぎて作者も忘れますが身長めっちゃ高いです。
猫っぽいけど犬っぽい何かです。
誰に聞けば料理はうまくなるのだろう。
あまり物事を考えないルゥだが、この時ばかりは珍しく真剣に悩んだ。
普段から美味しいものを食べさせてくれるルカに習うべきか。
それとも料理の店を開いているフィツに習うべきか。
どっちとも仲良くしてくれるからどっちでもいいなとルゥは考え、その結果両方に行くことにした。
「こんにちはー。ルカいるー?」
仕事場でなくマリウス宅に行ってみたが誰もおらず留守だった。
「んー? あれー? 匂いがあるからいると思ったんだけどなー」
ルゥがそう言いながらドアを閉めようとしたら、突然目の前が真っ暗になった。
誰かに目を両手で塞がれたようだ。
その匂いにルゥは覚えがあった。
優しい匂い、そして今はおいしい匂いがしている。
いつも食べてる匂いとおんなじ匂いだ。
「だーれだ」
少女の楽しそうな声にルゥがぱーっと微笑み答えた。
「ルカ! ルカでしょ!」
「あったり!」
ルゥは後ろを振り向いて後ろにいる少女と手を取り合ってぴょんぴょんと跳ねた。
身長差のせいでルカはずっとつま先立ちだが。
「どうしたの? 何か忘れ物?」
キャッキャと楽しそうにしながらルカはルゥにそう尋ねた。
「違うよ。ルカにお願いがあって来たの!」
「んー? ルゥちゃんは何をして欲しいの?」
「料理教えて!」
「任せて!」
恐ろしく早いテンポの会話。
お互いの事を知りあっているからこその問答である。
ルカは腕まくりをしてぐっと拳を握った。
「それでどういった料理を教えて欲しいの?」
ルカの質問にルゥは悩んだ。
単純に美味しいものだったらフィツにもルカも勝てない。
だからこそ、何か特別な物が作りたかった。
二人と差別化出来るような特別な物が――。
「るー。ヤツヒサのためになる料理って何だろうな」
ルゥの質問にルカがため息をついて答える。
「デザート以外ね。ヤツヒサさん自分で甘い物作るからこっちまで作っちゃったら糖分取りすぎになっちゃうわ」
まったく男ときたら……とルカは小さく呟いた。
「るー。甘い物以外で好きそうなもの……何かいいのある?」
「るー。じゃあハンバーグでも教えようかしら」
ルカがルゥの口真似をしながら答える。
そんなルカにルゥはうれしそうに抱き着いた。
「るー。んじゃソレお願いします!」
百八十センチという高身長の女性が百五十を切ろうというくらいの身長の女の子になつくという異様な、そして微笑ましい光景が繰り広げられた。
二人はリズムを取って歌うようにテンポよく会話をしだした。
「はいまずたまねぎのみじん切り!」
「るー。目が痛いけどがんばるー」
ルゥは泣きながらも手際良くたまねぎを包丁で切っていく。
「次そのたまねぎを炒めましょう」
「炒めるってのはどのくらい?」
「軽くでいいよ。色が変わればそれでOK! 玉ねぎの食感が嫌ならも少し余分に炒めましょう」
「るー!」
たまねぎそのものが苦手なルゥは余分に火をかけた。
「はい次お肉を準備します。オーソドックスに牛豚合挽きにしましたが好きなお肉を使って下さい」
「はーい!」
「そして肉たまねぎに塩コショウ! 卵とパン粉を混ぜましょう!」
「はい質問! パン粉って一体なーにー?」
「はい答えましょう!固くなったり乾いたパンを細かくしたものです」
「なるほどるー!」
ぐちゃぐちゃと肉その他を混ぜるルゥ。妙に楽しそうだった。
「はい混ぜたら平たく形を作ろう」
「はーい! 平たく平たく」
ぺったんぺったんと音を立てながら空気を抜き平たい小判状にしていく二人。
「油を敷いて焼きましょう」
「ましょー」
ジューという音と肉の焼ける匂いがルゥの食欲を刺激してよだれが出てきた。
「急いで食べるよりぐっと我慢して出来るまで待ったほうが美味しいから我慢しようね」
ルカは背伸びをしてルゥの頭を撫でる。
「るー。我慢するー」
「はい両面を焼いたら水を入れてしっかり蓋しましょう!」
「るー! 蒸し焼きだね! フィツがしてた」
「そうそう。流石詳しいわねルゥちゃん」
「えへへー」
中に入れた水が無くなりルカが木の串を刺した。
「はい完成でーす」
「わーい」
二人で拍手をした。
「というわけでハンバーグです。詳しいレシピは書いておいたから後で読んでね」
「はーい! ありがとねルカ」
ルカの用意したレシピを受け取り、そのままルカに抱きついた。
「ぶえー。潰れる。胸で顔が潰れる」
ルゥの胸に圧迫されるルカ。顔は楽しそうだった。
「ごめーん」
それを軽く謝るルゥ。
「ちなみにハンバーグを作った訳はー」
ルカがパンを横にスライスし、その中にトマト、レタス、ハンバーグを挟み、マヨネーズケチャップを混ぜてソースを作った。
「はい。即席ハンバーガー! 忙しいのを言い訳にまともに食事を取らない馬鹿共に最低限の野菜を取らせるための便利料理です!」
おーと驚嘆し拍手をするルゥ。
「ヤツヒサさんも忙しくなると自分を犠牲にしそうだから片手で食べられるものがあるといいからね」
「確かに」
うんうんと頷くルゥ。ただしよだれはさっきから出っ放しだった。
「じゃあルゥちゃんもハンバーガーにして一緒に食べようか?」
ルゥは勢いよく返事をしてすぐにハンバーガーを作り、二人は談笑しながら食べた。
ルゥは見た目と違い中身はまだまだ子供である。
体の成長が遅かったためまともに教育も愛情も受け取れずに奴隷になった。
体こそ取り戻したものの、中身はまだまだ幼い。
それを素直に受け入れられるのはルカだけだった。
三世にとっては可愛い娘で、ペットで相棒でもあるが
女性なためどうしても一線を引いて接する。
一緒に風呂とか言われても正直三世は非常に困る。
しかしルカは見た目で気にしない。
年こそ十四歳とまだ若いが頼りない父を持ち、父を頼むと母に言われてからずっと、そんな父を支えてきた。
ルカか三世なら大分マシだが、それ以外の人相手だとマリウスはいまだ口下手チキンでだった。
嫌なことがあったとか人嫌いとかではなく、心底純粋に、ただただチキンなだけである。
ルカは人一倍苦労をしながら、父を助け、そしてお金儲けの楽しさを知り、気づいたら同世代の中でも特別大人びてしまった。
見た目大人の子供。
見た目子供の大人。
お互いが素のままで受け入れられるため彼女達はお互いを親友と思っていた。
「さて悪いけど私午後用事あるからちょっと抜けるね」
「るー。まだ秘密にしてるんだっけ?」
ルカにはマリウスにも秘密にしてることがあった。
ただ悪い秘密でなくいつか驚かしてやりたいって気持ちと、中途半端なものを見せたくないという気持ちからだが。
「そうね。ここだとなかなか学べないし。どこかで長期休暇取れて町に行けたらいいんだけどね」
「今度一緒に城下町行く?」
「いいね! 父さんに言ってみるわ」
そしてルカは家を出ていった。
ルゥもマリウス宅の戸締りをしてから移動を始めた。
次に向かう場所に――。
「こんにちはー!フィツいるー?」
料理屋に突撃するとフィツが話をしていた。
数人にかこまれてフィツが困った顔をしている。
「忙しい? 帰ったほうがいい?」
おろおろとしながらルゥが尋ねる。
「ああいらっしゃい。大した話じゃないから良いよ」
「るー。でも困った顔してるよ」
「まあすぐ終わるよ。せっかくだし聞いていってくれよ。臨時職員さん」
「はーい!」
臨時職員と呼ばれてルゥは喜んだ。
フィツはいつも優しい。
なんでルゥにこんなに優しくしてくれるのか疑問だったが割とすぐにわかった。
この人、子供なら誰にでも優しいからだ。
聞いてみたら、自分は子供の頃苦労したから自分の分だけ子供に幸せになってほしいということらしい。
「というわけでもう一回話してくれ」
フィツの言葉に男性が困った顔で話し出した。
「えー。私は今回独身男性の代表としてきました。ジャンケンで負けて……。お昼も外食したいので昼十二時にお店開けませんかと打診していました」
「なるほど。でもフィツさんじゃ無理だよね?」
ルゥの質問にフィツが頷いた。
「実際時間が足りないんだ。夜中まで開けている酒場を止めれば昼起きれるしむしろ俺もそうした。が、それをしたら酒飲みの暴動になるだろうな。だが俺も気持ちはわかる。しかしがんばっても昼三時が限界でな」
男性とフィツが悩んでいた。
「るー。昨日の夜の残りとかをサンドイッチにして挟んだら?」
ルゥが提案する。
さっきルカに聞いたことだった。忙しい男なら片手に食べれるものにしろと。
「流石に外食でそんなしょっぱいものは喜ばないだろう」
とフィツが言うが男性は首を横にぶんぶん振った。
「いいじゃないですか簡素な食事。それで安ければ言うことなしですし誰でも出来るなら店長直々に作らなくてもいけません?」
そう男の一人が言うと、フィツは驚いたような表情を浮かべた。
フィツの中では食事とは満足いくものでないと……という考えが強かったからだ。
「そうか。そんなんでもいいのか……。じゃあ解決だな。近いうちに昼に簡単な食事を提供できるようにしとくわ」
そんなフィツの言葉に男性が一人、笑顔で礼を言い帰って言った。
簡単な物ならフィツが作らなくても良い、そしてこの店の従業員は女性が多い。
女性の手料理が食べれるかもという浅はかな考えを持ったのは言うまでもないだろう。
「ありがとなルゥちゃん。せっかくだし次からも意見あったらどんどん言ってくれ」
「るー。ルゥが役にたてるなら!」
フィツを取り囲んでいた男の一人がフィツの正面に立った。
次のフィツへの相談相手は村長だった。
「すまんが村が大きくなることになってな。店が増えるんだ。すまんが食事できる場所がここだけじゃなくなるんじゃ」
フィツは答えた。
「むしろそれは望ましい。競える相手でも共に研究できる友でも俺は歓迎なくらいだ。ただ……問題はその次だ」
フィツの言葉に頷き村長は続けた。
「というわけで今のうちに店の名前をつくっておいて欲しいんじゃ」
その言葉にフィツが苦悩の表情を見せる。
「くそっ! 俺にはそういったセンスが無い! 店の従業員も興味が無い! つーわけでルゥ! 助けてくれ」
精神年齢一桁と思われるルゥにすがるフィツ。
ただしルゥもセンスは独特な上に独創的だった……。
「るー。ごはんがおいしいよ亭とか?」
なるほどど頷くフィツに手を横に振る村長。
このまま決めたら未来永劫後悔するだろうと思ったからだ。
「時間はまだあるからもっと色んな人に聞いて決めておくれ」
そう呟きながら苦笑いを浮かべ、村長は帰っていった。
二人は顔を見合わせ、声を揃えて言った。
「ヤツヒサを呼ぼう」
二つ目の問題も解決した。
解決したという事にした。
「んで最後だがこれは別にこれはうちの問題ってわけじゃない」
フィツの言葉に横にいた女性が頷いた。
彼女がフィツを取り囲んでいた最後の一人である。
「はい。この村は害獣や腐敗等の対策のために食料庫をいくつかわけてるのですが、そのうちの一つ、果物の保存庫が荒らされていました」
果物の保存庫は二種類あり、一つは果物屋の在庫など即時出し入れする場所で、もう一つは村全体の備蓄兼配布用など長期保存と緊急時用を想定した場所である。
荒らされたのは後者だった。
「というわけで害獣対策の手伝いと、うちが使う果物が減るっていう報告だ」
「るー。大変なことじゃないの?」
「大変だな。それでも村が餓えるほどじゃない。年に三回くらいあることだな」
「るー。じゃあ私も捕まえるのお手伝いする!」
ルゥの言葉にフィツが笑う。
「そうだな。獣人のルゥちゃんならすぐに見つけられるだろう。次の被害があったら本当に頼むよ」
それに対してルゥは任せて!と腕まくりをしてみせた。
最後の女性も礼を言い帰っていった。
「それでルゥちゃん。まだ残ってるって事は何か用事があったんじゃないの?」
フィツが忙しそうに店を開く準備をしながら尋ねた。
「料理を教えて欲しいの!」
「今でも教えてるぞ?」
「今私が作れそうなの教えて。そろそろヤツヒサにご飯作りたいから」
ルゥは期待した眼差しをこちらに向けてくる。
フィツはそういった子供の未来を見据える目が大好きだった。
「いいぞ。ただし忙しくなるからな、今から店を手伝ってくれ!」
「もちろん! がんばるよ!」
ちょくちょく店の手伝いをしているルゥはどこに何があるのか大体知っている。
ルゥは手を洗い、エプロンをつけて帽子を深く被り、厨房に入っていった。
店の開店と同時に人が入ってくる。
三時という中途半端な時間とは言え、フィツの食事を楽しみに来る人は少なくはない。
フィツが何かを紙に書き、それをカウンターの入り口から見えやすい場所に立てた。
【ウチの可愛い従業員の練習に付き合う権利:三割引】
「るー?店長これは?」
「注文入ったら俺が教えるから死ぬ気で作れ。客に出すものだ。間違っても失敗するなよ」
優しかったフィツの眼光が鋭く光る。
声も今までみたいな優しさが無く、低音が響き脅すような口調。
フィツは誰にでも優しい。
ただし、料理の事以外は……。
「わかりました!」
ルゥは震えながら大きな声で返事をする。
今逆らうのだけは許されないと本能で察していた。
意外なほど、ルゥの練習に付き合うという注文が入った。
「三割引はいいな」
「三割引なら頼むか」
「可愛……三割引ならそりゃ頼むよな!」
そんな声が広がり、注文が殺到とする。
メニューは店長お任せになり、何も選択出来ず失敗する可能性もある。
それでも、多くの男性が注文した。
「はい。今日はこれまで。ご協力ありがとうございました」
フィツはそう呟き、書いた紙を撤去した。
その瞬間、ブーイングが店に響いた。
酒場の時はともかく、それ以外の時では滅多にない光景だった。
「うるせぇ!次にまた昼三時からルゥちゃんが暇ならやってやるから次来い!」
その瞬間ブーイングが歓声に変わった。
「あーお疲れ様。給料は月末にでもまとめて払っとくな」
ルゥは体力の限界を超え、部屋の隅のソファーにうつ伏せに寝転がっていた。
耳もぺたっとしていて返事も無く、返事の代わりに右腕をちょいと上げた。
「お疲れ。これで何品か覚えただろう。また次もやるかい?」
ルゥはまた右腕をちょいとあげた。
「おう。やる気があるやつは歓迎だ。がんばったしお礼にキャラメルでもいるか?」
耳がぴくっとして右腕がちょいっと上げる。
さっきより少し高く右腕があがっていた。
「おう。沢山あげるから夕飯の後にでもヤツヒサと一緒に食べな」
ちょいっと右腕をあげるルぅ。
そしてタイミングに合わせてルゥのお腹が鳴った。
ぐーきゅるるるー。
妙に悲しそうな音で鳴いていた。
「あー。何か食っていくか?」
「いい……。ヤツヒサと食べる」
その言葉にフィツは微笑み、そのまま仕事に戻っていった。
数分ほど休憩して体力が戻ったルゥは、フィツに挨拶にいった。
今度ヤツヒサを連れてきてくれと頼まれながら、ルゥはキャラメルを大量に貰った。
そして店を出て家に帰る。
もうヤツヒサも帰っているだろう。
そう思うとルゥの足取りは軽かった。
三世に会って早く一緒にご飯を食べたい。
手元にあるキャラメルの誘惑に耐えながら、ルゥは急いで家に帰った。
一個だけ……我慢できなかったのは誰にも内緒である。
ありがとうございました。
二部も始まりました。お話のストックもそれなりにあります。
でも既に後書きに困りました。
一言だけでいいかもしれないなと思う今日この頃。
それはそれで味気ないなと思う自分もいますが。
一つだけいえるのは
後書きまで見てるということはここまで見てくださったということ。
これを見てる人がいることをいつも祈って文章を作っています。
最後まで読んで楽しめてるかいつも悩んでいます。
もし楽しんでいただけたら幸いです。
では再度ありがとうございました。