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番外編-成り上がりに憧れて

2018/12/20

リメイク(と言っても軽く直しただけだけど)


もう少し番外編にお付き合い下さい。

お茶に濁しですが


 ここは最初異世界に転移した時の拠点。

 その中で三人の男子生徒がニヤニヤと気持ちの悪い笑顔を浮かべていた。

「ああ……。やっと地獄が終わった」

 そのうちの一人がぼそっと呟き、二人の男子生徒はこくんと頷いてみせた。


 彼らは六組の生徒である。

 だが、彼らは三世達を追い出すのに一切手を出していない。

 というのも、彼ら三人ともあまりクラスに馴染めておらず、こっちの世界でも、元の世界でも空気のような扱いを受けていた。

 そんな彼ら三人の不幸は、三世達が出て行ってから始まった。


 といっても、六組の生徒に心からの悪人はいない。

 たとえ三世達を追い出し、四組の生徒に牙を向いたとしても、六組内の生徒には基本的に優しい。

 だからこそ、男子生徒三人組が虐げられるという事はなかった。


 狩りなどの戦闘行為を行う必要が出た時、三人はこう告げられた。

「お前ら三人ともザコだからな。戦いに参加しなくていいぞ」

 茶髪でちゃらちゃらした見た目の、いわゆるヒエラルキー上位である同級生は、本音七割三割同情で三人にそう言った。

 運動が苦手で元の世界でもあんまり活躍出来ていなかった三人はその通りだと思い、狩猟チームに参加しなかった。


 そして当たり前だが、何もしないわけには行かない。

 もうここは異世界で、自分達で出来る事を見つけないと食っていくことすら許されない。

 その為三人は、女子に混じっての安全な作業を手伝う事にした。

 戦闘班に見回りをしてもらっているうちに果物を取ったり、洗濯や炊事の手伝いである。

 仕事自体はそれなりに出来、単純な労働力として活躍出来ていたと言っても良いだろう。

 ただ。その仕事をしている男子は三人だけの為、とにかく気まずかった。


 別に扱いが悪いというわけでもなく、多少頼りにされている部分もあっただろう。

 それでも、女子達に変に気を同情され気を回されるのがとても辛かった。

「村井君こっちに果物あるから取ってくれるかな?」

「小和田君掃除とかありがとうね。後は私達がやってるから休んでて」


 中途半端な腫れ物扱いな上に病人扱いが混ざったような扱いで、クラスからどんどん浮き離れていっている自信があった。

 ただ、それでも誰一人、三人をいじめなかった。

 男性三人を追い出した主犯も。

 四組にいやがらせする人も。

 誰も三人をいじめなかったのだ。

 しかし、ただとにかく居心地が悪い。


 そして気づいたら六組の七割くらいが外国にいって残りが四組に取り込まれていた。


 必然的に四組が主体となり、やり方が一気に変わった。

 その為、三人の仕事量は大幅に減少して自由時間が大きく増えた。

 そして何より、慌ただしい環境の変化で三人を気にする人がいなくなり、彼らに同情の目を向ける者がいなくなった。

 それが三人には何よりもありがたかった。

 三人はあらゆる意味で、目立つ事を恐れていたからだ。




「さあ。これからが俺達のターンだ」

 村井高志(ムライタカシ)はそう呟いた。

「内政チートの時間始まるよー」

 小和田修(オワダオサム)がそんな言葉に続いた。

「そういうのが大好きな俺に任せろー」

 大類岳人(オオルイガクト)が更に言葉を続ける。

 三人は蚊の鳴くような声で回りには聞こえないように話していた。


 大部屋の中でわざわざ部屋の隅で三人でニヤニヤしながら小声で呟く。

 そんな彼らのあだ名は、今日から『隅っこ三人組』となった。



 三人はお互いのスキルを確認しあう事にした。

 パラメータの方はお互い尋ねない。

 自分が大体1だからお互いそうだろうと考えあっているからだ。

 合っていても違っても……せつない。


「それでライはどんなスキルだ?」

 小和田が尋ねる。

 ムライの後ろに文字を取り、彼はライと呼ばれていた。


「逃げ足アップ。ついでに逃走系アイテムの製作、使用の色々アップ」

 村井はそう答えた。

「お前スキルまでチキンなんだな。ライだけに雷のように早く逃げるってか。エクレアってあだ名にすりゅ?」

 大類がそう言ってちゃかすように笑うと、村井は気障なポーズを取って微笑んだ。

「褒めるなよ。泣くぞ」

 そんな村井の反応に二人は楽しそうにケラケラ小声で笑った。


「それで俺はこれだ」

 そう言いながら小和田はパチンと指を鳴らすと、その指先から火が現れた。

「なんと……有能」

 大村が純粋に褒め、村井が悔しそうにその火を見つめた。


「それでどのくらいの火力が出るんだ?」

 村井が尋ねる。

「え? これが限界」

「おうふ」

 村井を除く二人は悲しそうな表情でそう同時に呟いた。


「しかも成長性超低いって言われた」

「悲しい」

 村井が本当に悲しそうに小和田の肩をぽんと叩いた。

「すまない。無能ですまない」

 小和田はそう呟き、そっと火を消した。

「流石はあだ名オワタだな。悲しい結果に終わった」

「あんまり褒めるなよ。泣くぞ」

 村井の言葉に小和田が笑いながらそう呟き、二人は大類に注目した。


「さあいけオルガ。お前の力を見せてみろ」

 小和田が小さく呟く。

 オオルイガクトだからオルガと呼ばれているのだが……。

「そのあだ名はやばい。主に流行とかそう意味で。止めるんだ」

 大類は困った表情でそう呟いた。


「ならガックン。さあ君の力を見せてみろ」

「任せろ。我が力を見せてやろう」

 村井と小和田の二人は気づいていた。

 こういう時は大体悲惨な結果になると……。


 大類は剣を創造した。

 目の前に突然現れる両刃の両手剣。

 まるでラノベの主人公のような能力に二人は目を丸くした。

「まじかよ」

 村井が呟く。

「大当たりじゃねえか」

 小和田もそれに頷き悔しそうに呟いた。

 だが、そんな強力そうな能力を持った大類の様子がなにやらおかしい。


「ふふふ。これの刃にちらっと触ってみて」

 大類の言葉に頷き、小和田が傷つかないようにソフトタッチで刃の部分に触ってみた。

 その瞬間、背中にぞわっとするようななんとも言えない不快感に小和田は襲われた。

 例えるなら、アルミホイルを歯でかんだような気分である。


「どう?」

 大類が尋ねる。

「なんか微妙に不快になった。RPGで攻撃が二回連続で外したくらいの僅かな不快感だが」

 そう答える小和田に大類は満足そうに頷く。

「で?」

 そう尋ねる村井に。

「それだけ」

 と大類は答えた。


「ええぇー」

 二人は残念そうに声を揃えそう呟いた。


「ちなみに生き物は当然、壁も切れないぞ」

 そう言いながら部屋の壁を突く、傷がつくどころか剣が当たる傍から消えていった。

 貫通すらしていないようだ。


「更に言えば、ギルド長からも悪い意味でお手上げのお墨付きだ。凄いだろ?」

「お前が一番だ」

 村井は本日始めての同情を大類に向けた。


「まあそんなことはどうでもいい。内政チートをするぞ」

 小和田がテンションを上げ、小声で呟いた。

「うむ。非モテ非リア充三人組の逆転人生はここしかない」

 村井が頷きながら呟く。

「ではガックン。是非お知恵を拝借」

 小和田の言葉に合わせて村井と小和田は土下座をする。

 それに大類はうむと一声呟く。

「まずは何よりマヨネーズだな。割と簡単で効果もでかい」

「ほほー。メモメモ。さあどんどん言っておくれ」

 村井がメモを取り出す。

 そして大類が言葉通りどんどん続けていく。

「食べ物系ならからあげは鉄板だな。俺ならカレーもスパイスから作れる。技術で言えば水車と肥料だな。肥料は怪しいが水車なら小さいの作ったことあるからいける。続いて数字だな。中世くらいの世界観っぽいから0の概念や掛け算割り算の暗算だけでもそれなりに凄いんじゃないかな」

「鐙と大砲も一応いけるぞ。ビバ異世界小説達先人の知恵よ。そしてボードゲームだな。元値を最小限に最大効果をもってこれる。将棋やチェスだな。流行ったらそれだけで色々いけるぞ。俺将棋ならそこそこ出来るし。とりあえずはこんなもんかね」

 大類の言葉に小和田が満足そうだった。

「うん。いけそうだね。さあ輝く明日に向かってがんばろう」


「おー」

 小和田の掛け声に全員で答え、手をあげ三人でハモりながら掛け声を挙げた。

 しかしこんなときですら彼らは小声であった。




 そして三日後

 三人は沈んだ顔をしていた。

 隅っこ三人が落ち込んでると気づいた生徒の一人がそっとオニギリを数個彼らの傍に置いた。

 完全に珍獣扱いである。


「えー反省会、反省会の時間ですよー」

 小和田がテンション低く囁く。

「提案ライ。回答ガックン。はーいよーいスタート」

「からあげ」「もうある」

「マヨネーズ」「もうある」

「カレー」「もうある。高級食扱いでスパイスは秘伝。実行不能です」

「水車」「もうある」

「肥料」「俺らの作れる物よりもこっちのほうが優れている」

「0の概念」「もうある」

「数学全般」「大体ある。ただ識字率は低い。中世と考えたらとても高いが」

「大砲」「無いけどもっと強い兵器が沢山ある」

「鐙」「もうある」

「チェス」「もうある」

「将棋」「もうある。割と皆弱くて教えたら銀貨一枚もらえた」

「いいなー」

「はい終わりー。結果全滅でした」

 小和田が締めくくるのに大類が追加で答えた。

「ちなみにトランプすらこっちにあったぞ。これ完全に大昔からこっちの世界に転移者沢山きてるわ」

「輝かしい明日はどこだ」

 三人は気づいたらおいてあったオニギリを食べる。

 米をこの世界で見た事なく、ここにマトモな調理器具もないのに何故かオニギリがある。

 そんな疑問に彼らは気づかなかった。



「はいシャイニングロードの為の第二段いくよー」

「はい。この世界に実行していない優秀なものがあります」

 小和田の言葉に大類が応える。

「ほう。いってみたまえ」

 村井がそれに乗る。

「はっ。官僚制であります」

「素晴らしい。実行できないがな」

 三人はがくっと落ち込んだ。


「とりあえずすぐ実行出来そうなのは無いから地道に環境を改善してからチートをしよう」

「賛成」

 村井の提案に二人が頷き答えた。


「じゃあ今から一週間後に冒険にいこう。危険は避けるものではあるが、それでもそれなりの準備をしてがんばってみよう」

 村井の提案に三人は一週間で出来ることを探した。



 そして一週間がたった。

「それじゃあ結果発表ー」

 村井の言葉に二人が拍手をする。

 今日は三人の傍にお饅頭が気づいたらおいていた。

「その前に最近ここにいると毎日食べ物置いてくれてる人いるけど誰だ?」

「わからん。気づいたらあるんだよな」

 村井の質問に小和田が答え、大類も首を横に振った。


「まいいや。クラス行事とかでこっそり置いていってくれたんだろう。ボッチーズのために」

「とりあえず俺から報告しよう」

 大類がそっと紙を広げる。

 それは手作りのマップだった。

「とりあえず今後の安全そうな場所で何が手に入りやすいかを調べました。果物、または牙がサーベルタイガーみたいになってる兎が今一番のオススメですね。難易度的な意味で」

「有能。今後のパターン次第でどこ行くか作戦組みやすいし。じゃあ次オワタ」

「へい。あっしはこんなものを」

 小悪党みたいな話し方をする小和田は、槍を三本持ってきた。

「紐を貰って尖った石と木を結んで作った槍でござんす。一応コルネ様に見ていただきやしたところ十分実践に耐えると保障済みでやんす」

「有能」

 小和田の持ってきた槍を三人は確認する。すぐに壊れそうだがそれでも数回は使う事が出来るだろう。

「じゃあ最後に俺はこれを」

 村井は灰色の玉を持ってきた。

「それは?」

 小和田の質問に村井はにこやかに答えた。

「煙玉」

「お前忍者かよ」

「意外と簡単だった。たぶんスキルのおかげ。ただこれ火がいるんだよ」

 村井が悲しそうに言った。

 それに大類が続く。

「じゃあ役にたたないな。ああどこかにすぐに火種を用意できる人がいたらこの煙玉に使い道が出来るのに」

 そして二人でちらっと小和田を見る。小和田は自分を親指で指さしきめ顔を作る。


「いえーい」

 三人は声を揃え、小さくハイタッチした。


「じゃ行こか。とりあえず安全第一で。煙玉を持ったオワタはオワタにならないようにしてくれよ」

 村井の一言に小和田は村井の頭をこつっと軽く叩く。




 そしてその日の夜。彼らは部屋の隅でまた小さくなり話し出す。

「はい反省会はじめ」

 村井の一言に二人が答える。

「はい。なんか妙にでかい蜂とその巣がありました。絶対やばいやつでした」

 まずは小和田が答えだした。

「うむ」

「なので煙玉投げて追い出したのを確認して巣を破壊して逃げました」

「うむ。完璧だったな。惜しむらくはハチミツだが、いかんせん知識がないしなにより怖い」

 彼らは今まで他の生徒達が恐れ近づかなかった存在を排除したという事実に、気づいていなかった。


「はい続いてワタクシがハナシマース」

「今は真面目に、なっ?」

「うぃっす」

 大類が話すのを村井が注意する。割といつものことである。


「兎が沢山いました。理由はわからないけど。めっちゃでかくて牙生えてたな。マジでサーベルタイガーみたいでちょっと面白いカッコ可愛いかった」

「場所によっては角が生えてるらしいぞ」

「こーえー」

「こーえー」

 大類と村井が漫才のように呟いた。


「というわけで落とし穴掘って埋まったのを槍で三人で刺す作戦、うまくいったね」

「結果五匹の狩猟が完了しました。血の臭いも穴ふさいだら誤魔化せるという悪くない事実も知れたし」

 大類はそう呟き、二人は頷いた。

 地味に、三人で五匹というのは今までの六組の狩猟班にも負けないスコアだが、三人がそれを知る方法はなかった。

「うむ。反省会終わり」

 村井がそう言って話を〆た。


「はい続いて時間の計画準備ー」

 今度は小和田が司会になっていた。

 気づいたらお茶が置いてある。

 湯呑に入った緑色の液体。

 本当の意味でのお茶である。

 三人はそれを、特に気にせず飲んだ。

「あ。俺の好きな味だわ」

 大類はそう呟き嬉しそうな表情をした。

「お前しぶいな」

 三人の視界の隅に、突然羊羹が入ってきた。

 慌ててそちらを向く三人。

 しかし、そこには誰もいなかった。


「これ一体誰だろうな」

「わからぬ」

 三人はお茶を飲みながら羊羹をかじった。


「作戦会議と言っても、今回は兎の牙全部根元から取ったからそれで何かするかの相談なんだけどにゃー」

 小和田は二人にそう呟いた。

「予定は?」

 村井の問いに小和田が答える。

「新しい槍。壊れる前にこっちの牙をちょっと削ってまっすぐにして。後は弓矢の矢じりなんかもいけるかも。この辺は試行錯誤しながらだが」

「うむ。とりあえずどこかの町にいって冒険者になるまでに出来るだけのことをしておこう」




 三人は目指せ成り上がりーなどと言いながら、ワイワイ小さな声で騒いでいた。

 今日も差し入れをしているのが同級生の女の子だという事実に、三人は気づけなかった。


ありがとうございました。

本編はまだ進められませんがその間でも少しは楽しんでいただけたらいいなと思っています。

キャラ自体は魅力あるはずなのに自分の技量が足りずに全然キャラを生かしきれていません。

私は単純に技量不足です。

逆に言えばまだ技量に伸び白があると思って出来るだけ時間を取って文を書かせていただいています。

時間ギリギリまで使うからそのせいで誤字脱字の確認が甘くなるのは本当に申し訳ないと思っています。


それでは再度ありがとうございました。

ここまで付き合ってくださったということは楽しんでいただけたと少しは過信しても良いのでしょうか?

これからもがんばっていきます。


また本当初期の初期から読んでくださった方。

どこを楽しんでいただけたかははわかりませんが、

そのスコップがこちらに届いて本当に幸せです。

もしよければ今後もお付き合い下さい。

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