気づいたら効率を求めるのは日本人の悪い癖
2018/12/04
リメイク
ありがとうございます。
本格的な冒険はまたの機会に
初めての依頼を達成し、青銅級冒険者となって五日間が経過した。
ただ、階級が上がったからと言っても初日とやっていることは何も変わっておらず、この五日間も初日と同じように薬草採取を繰り返していた。
強いて違うところをあげるとすれば、胸元に青銅のマークが入ったエンブレムを縫い付けたくらいである。
もちろん薬草採取を選んだ事にはしっかりとした理由がある。
まず、単純に安全でかつ、何時でも仕事があるというのが大きかった。
低賃金な上に数が必要な依頼の為、募集がなくなる事がないのだ。
次に青銅級となって行ける場所が増えたため、より高価な薬草を入手出来るからだ。
依頼料も銅級の頃のような子供のお小遣い程度の稼ぎではない。
銅級と青銅級にはそれほど大きな差が存在した。
続いて、ルゥが活躍できる為だ。
ルゥの嗅覚は予想以上に優秀で、多少珍しい薬草や花なども、一度でも嗅げば即座に見つける事が出来た。
最後にメンバーの問題。
特に三世とルゥが当てはまるのだが、装備が貧弱である。
これを理由に討伐や護衛任務を避けた。
師匠お手製ライダースジャケットだけは革装備にもかかわらず下手な鎧より耐久があることがわかった。だが、おしくて早々使えるものではない。
だから冒険中は自作の安い革の服か移動しやすい布の服を着て過ごした。
そんな薬草塗れの五日の生活は、成果だけで考えたら決して悪くないものとなっていた。
端数を切り捨て、衣食住を省いた純利益で一人頭銀貨三十枚は稼げた。
ちなみにルゥは初日だけは三世と泊まったがそれ以降はコルネと宿を共にした。
お世話になりっぱなしも悪いのだが、連続の不眠は三世が耐えられなかったからだ。
ついでに言えば、多少の徹夜には慣れている三世でもベッドの上で寝られない夜にはなれていなかった。
寝られなかった理由はお察しである。
「なんというか薬草しか取ってこなかったな」
「割と稼げたのがなんとも癪ですが」
田所の愚痴に田中が返す。
フルプレートは無理にしても最低限の防具一式くらいは揃えられるため田中と田所にとっても悪い話では全くなかった。
「それに二つほど大切な教訓を得られたので満足です」
「どんなものかご教授いただいても?」
田中の発言に三世が尋ねてみた。
「もちろんです。一つは知識は大切だということです」
そう冒険者は文字も読めない人間が多い。
その場合依頼内容を代わりに読み、必要な書類がある場合はギルド職員が代筆する。
その場合、当然手数料が取られる。
つまり、本の知識を持って冒険に出られる人の時点で一握りとなるのだ。
薬草を採取するだけでは普通はこんなに稼げない。
逆に言えば、本をしっかり読んで事前に情報を集めるだけで、薬草稼ぎでも生計を立てられるほど稼げるという事になる。
「それはよくわかりますね。それでもう一つは?」
「はい。獣人と正面からやりあうのは絶対に駄目だということです」
三人はルゥを見る。
もらった小物入れを首にかけ小首をかしげるルゥ。
その巾着袋に入っているのは金貨二枚。
キリを良くする為にいくらか三世の稼ぎも入っているが、ほとんどルゥが自分で稼いだ金額である。
単純に速度が違うし器用も高い。
何より嗅覚が非常に鋭く、薬草採取において役に立つのは当然、途中で野生動物が近づいた場合も即報告してくれた為、戦闘を一度も経験せずに済んだ。
「敵対するつもりは無いですが……獣人は本当に優秀ですね。まあもしかしたらルゥだけかもしれませんが」
「にしても今日でお別れですか。少し寂しくなりますね。私達だけでは薬草採取は こんなに効率良くできないので稼ぎ方を変えないといけません」
そう言って田中は溜息を吐いた。
それだけ、ルゥの存在はありがたかったという事である。
「そうですね。そろそろ本業というか師匠から修行を受けないと。まだまだ見習い以下なので」
「三十分で靴一足あげるのが見習い以下とか異世界は怖いな本当」
田所が引きながらそう呟いた。
「今日はこれから用事がありますので私達はここで失礼しますね」
三世の言葉に田所と田中は頷いた。
「はい。お元気で。是非また一緒に冒険しましょう」
三世は手を伸ばしてきた田中、田所と順番に握手をした。
ルゥもそれに習い、田中と田所に「またね」と微笑みながら握手をした。
三世の初日と合わせて六日ほど過ごした臨時冒険者生活は、これにて幕を下ろした。
これよりカエデの村に戻り、ルゥとの二人生活が始まる……が、その前に三世はギルド長の部屋に向いノックをした。
「入りたまえ」
ルーザーの返事を聞き、三世はドアを開け、深々と頭を下げた。
「失礼します。青銅級冒険者ヤツヒサ。入室します」
「きたか。用事はわかっている」
「はい。そのお願いをしに来ました」
そう言って頷いた後ルゥを見つめる二人に、ルゥは首を傾げた。
今回ルーザーに頼んだ事は、ルゥの能力とスキル調査である。
初日は食べすぎて寝て、それ以降も仕事が終わると寝るか食べているかで出掛けるタイミングがなかったので、結局最終日の今日まで来れなかった。
「ではルゥの能力とスキルを視る。本来なら本人のみに話をする事だが……奴隷だからヤツヒサ。君に伝える。問題はないな」
「もちろんです」
三世はルーザーの言葉に頷いて答えた。
ルーザーの言葉に、奴隷扱いにするがすまないという謝罪の意味も込めているのだろうなと三世は感じた。
「……。ふむ。とても優秀だな」
ルーザーが一言呟いた。
「筋力三素早さ五賢さ二器用八魔力一耐久三精神一。体力がとても高い。しかも見る限りまだ失った栄養も時間も取り戻しきってない。一月したらまだ伸びているかもしれんな」
そう、ルゥはまだ成長期を取り戻している最中だった。
急成長した後でも身長は伸び続け、一週間で十センチ以上伸びて現在百七十を超えており、そろそろ百七十六ある三世の背を越しそうになっていた。
「器用が妙に高いのは獣人の特性ですか?」
「いいや。獣人も平均三だ。これは弓使いの平均くらいはある。理由はわかってる、良かったな。お前のスキルの影響だ」
どうやら三世の獣医絡みのスキルは、上げたらあげただけ自分の奴隷を強化できるらしい。
問題は、三世自体器用以外全ての能力がほぼ死にスキルと化してることくらいだろう。
「スキルは無し。そりゃあそうだ。本来は一流を超えたものだけに与えられる神の加護だからな」
「なるほど。ありがとうございました。ルゥの為に何かしてやれることってありますか?」
「無い。獣人は人より体力がある。強いて言うなら今のうちに字に慣れされておくと文字を読めるようになる可能性が出てくるな。本来知能の低い獣人だ、がヤツヒサのスキルで知識が共有されてるからだろう。妙に成長率が高い」
「わかりました。絵本でも買ってみましょう」
「それがいい……。今日で帰るのだろう。次は魔物――は無理にしても魔獣の討伐をするといい。やつらの皮は非常に扱いが難しいが強力な防具になる」
「そうですね。扱える技術を身につけるよう努力します」
その答えを聞きルーザーは満足そうに頷いた。
そしてそのままいつものように礼儀正しくお辞儀をして三世は部屋を退出した。
それの見様見真似で深くお辞儀をするルゥ。
そのしぐさは親の真似をする小さな子供のようだった。
ギルドを裏門から出て、表通りに差し掛かり少し歩いたあたりでルゥが突然駆け出した。
驚きつつも、三世も見失わないように急いで走って追い掛けた。
その先にいたのは、コルネと馬車を引いているメープルさんだった。
「こんにちは。足が必要かな?」
コルネが笑顔でそう挨拶をした。
ルゥはメープルさんに跳びかかり、抱きしめて撫でた。
メープルさんも少し嬉しそうな様子を見せていた。
「こんにちは。そうかもう一週間ですものね。メープルさんも傷が良くなったようでよかったです」
メープルさんの毛並は以前のように綺麗で美しい状態に戻り、傷は全く見えなくなっていた。
もう何ともないんだといわんばかりにメープルさんは鼻を鳴らせた。
「ルゥちゃんもメープルさんのこと好きなの? 主従揃って動物好きなのねぇ」
そうコルネがルゥに尋ねると、ルゥはこくんと頷いた。
「うん。なんかヤツヒサに似てるから」
ルゥはそう答えた。
三世はどこが似てるのか必死に考える。
が、自分とメープルさんが似てるところはおもいつかなかった。
馬面というわけでもないし……。
「似てるかなーメープルさんは可愛いけど三世さん別に可愛くないし」
コルネの言葉に三世は苦笑しつつ、一つの答えを予想してみた。
「きっとメープルの匂いですよ」
「それか!」
三世の答えに、コルネは手をぽんと打った。
「それでこちらとしては早い移動は助かるのですが良いのですが? ある程度自立出来ましたしお世話になり続けるのも申し訳ないのですが」
「むしろ乗ってくれた方がいいわ。私も友人の移動に協力したいしメープルさんは今日妙にやる気だし」
足を地面にこすりやれるぞとサインを出すメープルさん。
メスなのに妙に男前だった。
「それとも私が友人だと嫌かにゃ? 獣耳ないから」
コルネがいたずらっこのように笑いながらこちらをニヤニヤ見る。
「友人になるのは嬉しいですね。こんなおっさんに若い友人が出来るのも少々気恥ずかしいですが」
「なら乗ってっておくれ。ついでにご飯でも食べて行こうかね」
そんなコルネの言葉に、三世とルゥは微笑みながら頷いた。
馬車に乗ると、今まで乗ってきた馬車との違いに驚いた。
体感速度も違うが、なにより安定性が違う。
揺れが恐ろしいほどに少ないのだ。
「何度か普通の馬車を経験するとこれの凄さがよくわかりますね」
「そりゃ今や騎士団のトップに追いつこうという馬と騎士団がお金をかけて作った馬車だからね。出来が違うよ」
コルネが自慢そうにそう言った。
「騎士団ってお金があるんですね」
「別にそうでもないよ? でも安い物を買っていくだけだと、仕事する人にお金が入らないからね。だから騎士団は率先して高い物を揃えるの。馬車とかも国内で作ってる人にわざわざ特注品を頼んだりしてね。そうやって高価なものを出来るだけそろえるの。馬車はもちろん、武具とか儀礼用の道具とかね」
コルネは頭を掻いて何かを考えるように言葉を続けた。しどろもどろな部分も多く、本人もあまりわかっていないらしい。
「んでんでそうやって経済とかを回す? とかよくわからないけど、沢山使うことが城下町を発展させるための公共事業の一環だって。そのせいでお金が沢山でて行くから騎士団自体は貧乏な時も多いよ。だからたまにやってくる盗賊を狩ったりしてお小遣いを溜めてる団員とかもいたりするよ。私も偶にするけど」
コルネが笑顔でそんな物騒なことを自慢しだした。
「えぇ……盗賊狩りで稼ぐのですか」
「うん……冒険者と違って給料は出るけど少ないからね。流石に隊長の私はそうでもないけど。それでも私は給料低いよ。事務仕事投げっぱなしにしてるし」
「え。いつも宿とか食事とか馬車代まで出してもらってますが」
「ふはははは。全部騎士団が支払います。私の給料は少ない代わりに衣食住は全て騎士団の金で賄えるのだ。もちろん数人程度なら他の人の分もOK。そういう契約なのです理由はわからないけど」
コルネがよくわからない給料制度について自慢しだした。
ただ、コルネ本人が良くわかっていない事なので、聞いている三世も良くわからなかった。
「まあ私が迷惑をかけていないなら良かったです」
「それは別に。ああでもルゥちゃんの服は私の私物から着れなかったやつを何着か上げたから今度それは返して欲しいなと」
「それはもちろんです。今は少し無理ですが、もう少し金銭に余裕が出たら――」
「それも良いけどブーツ作ってくれない? 材料持ち込みで。作って欲しいのよね」
「良いですけど私が加工出来るかわかりませんよ?」
「大丈夫。出来るようになったらでいいから。可愛いやつよろしくね」
コルネはウィンクしながら三世に媚びるように頼んだ。
「ははは。出来るようになるようにがんばりましょう」
そう言って三世は微笑んだ。
村の入り口に到着し、メープルさんがこちらをじーっと見つめて来た。
コルネがすっとメープルの瓶を渡してくる。
それを三世は手に掬い、メープルさんの前に差し出した。
メープルさんは当然のように、それを優しく舌を使って舐めとった。
「これ地味に凄いのよね。うちの騎士団でも出来る人いないわ。仲良い人は手かまれるし仲悪い人にはそっぽむくし。私は噛まれました」
「そうなんですか?」
舐め終わったメープルさんの首を反対の手で撫でながら三世がそう呟くと、コルネはこくんと頷いた。
「あ、そうだ。ちょっと待ってねメープルさん」
三世は自分のバックからペンダントを取り出して見せた。
「お世話になったのに何も返せないのは悪いと思って」
そう言いながら三世はメープルさんの首にペンダントをそっとかけた。
三世が最初に作った赤いルビーのペンダント。
何回も作り直しようやく実用的な見た目に収まった。
宝石留めは既存のものだが、それ以外は全て自分の手製である。
「首回りも調整してますし、師匠にも見てもらったところ、全力で走っても切れない程度に丈夫になりました。馬にペンダントがお礼というのもおかしいかもしれませんが、他に思いつきませんでしたので」
メープルさんは何時もより激しく、頭を三世にこすりつけた。
目がハートマークに見えるのは気のせいだろう、コルネは怪しみながらそう思った。
「なんかちょっともやもやする」
ルゥがぷくーっと頬を膨らませてた。
「わかるわ」
コルネも頷く。
「別にお礼として問題もないし悪いことしてないけど人間の女性じゃなくて馬にペンダントあげるの見るとなんか嫌よねー悪いわけじゃないけどさ」
「ねー」
コルネとルゥが二人仲良く三世を見つめ――訂正、ジト目で見た。
「……次材料が入ったら準備させていただきます」
「しょうがないわね」
三世の言葉にコルネがそう答えルゥは手をあげて喜んだ。
「まあ材料は自分で用意するから私はともかくルゥちゃんのは用意してあげなさいよ」
「もちろんです。もう少し待って下されば実用的なものも出来ますし」
「……そうじゃないんだけどなぁ」
そう小さくコルネは呟くが、その声は三世には聞こえなかった。
一同が三世の家の前に着くと村長を先頭に十数人ほどの人が集まっていた。
その中にはマリウスとルカの姿もある。
「言われてた掃除終わったぞ。思った以上に酷かったから前のテーブルは置いたままもう一つテーブルをつけたぞ。大部屋の窓から出てすぐ外にゴミ捨て場おいたからそこに革ゴミなどを入れてくれたら一週間ごとにでも回収しよう。ベッドはどう考えても使い物にならなかったから新しいものに換えておいた。事情はそこの隊長さんから全部聞いてるから安心しておくれ。あとは台所に火をつける道具もつけておいた。これでスイッチ一つで調理も出来るぞ。何。全部余ってたり、貰ったりしたもんじゃから気にしないでええよ。とまあ色々とさーびすもしたのでな、最初の約束は果たしてもらうぞ」
と村長はにっこりとしながらそう言葉にし、同時に後ろにいる大体十五人ほどもにこにこしていた。
あちらは約束を守った。つまり、次はこちらの番である。
最悪ルゥにお金を借りることになるが仕方ない。情けない飼い主になるだけだ。
「では今からフィツさんの食事所へ行きましょう。もちろんコルネさんも一緒にどうぞ」
三世の言葉に一斉に歓声があがり、御馳走になりますの大合奏が響いた。
「事前に帰る日を村に伝えたけどまずかった?」
小さな声でコルネが尋ねる。
「いえ。不義理をしなくてすんだので助かりました」
「お金無くて冒険者してたんじゃ」
「はい。この日の為に」
「そっか。足りなかったら貸してあげるからがんばれ」
ぽんとコルネが肩を叩いた。
なんとかなりますように。
三世はそう強く願った。
店に行くと既にフィツが食事の準備をしていたようで、大量の食事がテーブルいっぱいに並んでいた。
「さぁさめないうちにとっとと食べてくれ。酒は自腹で払えよ」
フィツの声に呼応してルゥと三世以外は食事を開始した。というより奪い合いを始めた。
「いくらくらいになります?」
小さな声で三世はフィツに尋ねた。
考え込む仕草をした後フィツは答えた。
「端数は負けて銀貨五十枚だな」
元の値段を知らないが、そんな安い物ではない事くらいは理解出来る。
そしてありがたい事に、丁度所持財産である。
三世はそっと銀貨五十枚を手渡した。
「すいません」
「気にすんな。これでも赤にはならん」
フィツはカラカラと笑いながらそう答えた。
二人が話しているそこに、すっとルゥが割り込んできた。
ルゥは真剣な顔ですっとフィツに何かを渡す。
それは金貨だった。
「おい嬢ちゃん!これ!」
突然の行動にフィツだけでなく三世も驚いた。
「そこから足りない分全部出して」
強い視線でルゥは言葉を続けた。
「代わりに! 残ったお金で! 作れるだけ作って!」
非常に真剣な顔をしていると思ったがそうではなかった。瞳は真剣ではなく野生のソレで。よだれが微妙に口の端から洩れている。
「これでいいんだよね? お金出したらご飯沢山食べられるんだよね!?」
三世のほうに向き耳をパタパタさせながらルゥは尋ねてきた。
「……フィツさん。出来るだけ栄養あって沢山食べられるものを……作れるだけ作って貰えますか?」
「……どのくらい食べる?」
「この十五人にコルネさんと私を足してそれと同じくらいは最低でも……」
ルゥは今まで一度たりとも腹いっぱい食べた事がなかった。
確かに山のように食べていたが、実は遠慮しているということくらい三世もコルネも理解してる。
特に三世はスキルを使ってルゥの体を診ている。
ルゥの体は、未だに飢餓状態を抜けていなかった。
だからこそルゥはお腹いっぱい、しかも美味しいものが食べられると思い……我慢の限界を超えた。
「ほらお嬢ちゃん。こっちにおいで。これ美味しいわよ!」
しらないおばさんがルゥをテーブルに招く。
さっきの声が聞こえたのだろう、その顔はやさしく孫を甘やかすソレだった。
嬉しそうにルゥは走り出し、食事を始めた。
それに合わせてコルネがこっそり三世とフィツの方に顔を出した。
「食材の買出しとか雑用くらいなら手伝うわ。一度くらいはお腹いっぱい食べさせてあげたいものね」
コルネの言葉に三世が頷く。
「よし! なら俺の全力を見せてやるか!」
フィツは気合を入れてそう叫んだ。
コルネは言われたとおり買出しに向かった。
それこそ村の肉屋野菜屋が空になる勢いで。
今日掃除を手伝った人の中に果物屋の女性がいて、その人も材料集めに手を貸してくれた。
三世は続々と空になる食器を洗い続けた。
フィツは次々来る食材より早い速度で延々と料理を作り続ける……。
実に二時間、ずっと食べっぱなしのルゥがようやくご馳走様と満点の笑顔で呟いた時には、ほぼ全ての食材が残っていなかった。
その量、実に百人分はくだらないだろう。
「終わったか」
フィツがテーブルに体を預けダウンしていた。
「ありがとうございました」
「いや構わない。久々にいい修行になった」
そう答えるフィツだが、声に力がない。
途中から作るのにルカも手伝ってくれていた為、ルカもダウンしていた。
――コレが毎回じゃないといいのですが。
三世は心の底からそう願った。
コルネとメープルさんは帰るタイミングを失い、また泊まることとなった。
ダウンしたルカをマリウスが抱えて帰った。
明日から来いとマリウスは三世に一言伝えた。
久しぶりの本業である。
三世はルゥを連れて家に戻った。
そこで見たのは、良い意味で変わり果てた我が家だった。
特に台所が変わり果て、まるで別の家のようである。
コンロのような物が付けられていたりシンクが綺麗になっていたりと近代的なキッチンのように変わっていた。
ダイニングルームにはテーブルが四つほど並べられており、その横にカーテンで区分けした小さい作業場も作られている。
そちらには今まで使っていた傷だらけのテーブルと椅子が一つおかれており、革の加工道具が綺麗に分け揃えられていた。
「これは村長にちゃんとお礼言わないといけませんね」
何を作ったら喜ぶか考えながら三世はもう一つの部屋を確認に向かった。
寝室に唯一置かれていた汚れたベッドはなく、大きなダブルベッドが一つとギリギリ成人男性が納まるくらいの小さめなベッドが一つ置かれている。
それを見てルゥは、どうやら限界だったらしくふらふらと小さなベッドに入り込み丸くなって寝だした。
それを見た三世も自分にも睡魔が来ていることに気づく。
疲れすぎて眠たい事にすら気づいてなかった。
――準備やもろもろは……明日で良いですね。
そう三世は考え、ルゥの頭を一撫でした後大きなベッドに入り込んだ。
ありがとうございました。
田中は魔法の練習と習得に
田所は魔物の情報と野生生物の退治に
そのあたりに準備に行きました。
次会うときはどうなってるかわかりません。
再度ありがとうございました。
毎日何回も言うの変な気がしますが見ている人のタイミングもわかりませんしとりあえず毎回言っておきます。
読んでくださるだけでやる気が出ます。これからもお付き合い下されば幸いです。