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結局の所、断るという選択肢は誰も想定していなかった。

ここから新しく七部始まります。

七部とわけていますが、別に特別何か変わるというわけではありません。


ただ、少しずつ冒険者らしいことを出来る様にはなってきた彼らを見てくだされば嬉しいです。

でも基本的にまったりいくので、いつも通りすろーな感じでまったり流し読みして下さい。

 

 ラーライル王国に深い傷跡を残した行方不明事件が、決着を迎えてそろそろ一月が経とうとしていた。

 その深い傷跡はなかなか癒えない。最終的に廃村にした村も一つや二つでは済まなかった。

 それでも、時間が終わり、英雄が生まれ、人々は必死に前を向いて生きた。


 その中でも、被害の少ないカエデの村周囲の浄化作業や復興は終わり、そろそろ村人も元の村に戻れそうだった。


 そう、そろそろ日常が……戻ると良かったのですが……。

 三世八久ミツヨヤツヒサは、借りている宿舎の前で待機している二人を見つけた。

 そこにいたのは、コルネとグラフィが仲良く、とても良い笑顔をして三世を待っていた。

 この時点で、三世は緩やかな日常を諦めた。



 そうして、また王の政務室に連れて行かれる三世。本当にフットワークが軽いというか王らしくないというか。

 今回は三世一人では無く、出来るだけ獣人を連れて来て欲しいという要望が王からあった為、ルゥ、シャルトに加えてユウとユラも連れてきた。

 騎士団の見張りに見守られる中、王城の中を進み、王の政務室に向かう一行。

 騎士団員は、グラフィを見かけるたびに背筋を伸ばし一礼をしていた。

 未だに慣れないらしく、グラフィは居心地悪そうに、恥ずかしそうに頭を掻いていた。

 そうしているうちに、目的の場所の前についた。


「ラーライル騎士団中隊長コルネ、並びにラーライル王国軍、英雄グラフィ。冒険者ヤツヒサを連れてきました。失礼します」

 代表してコルネが敬礼をしながら扉の前で叫ぶ。

「入れ」

 王の一言により、一同入室した。ユウとユラとシャルトはかなり緊張していた。

 事情を知っている三世と、緊張から遠い存在のルゥはそのまま普通に入った。


 全員が立ったまま待機している中、豪華な机に肘をかけ、王はそこに座っていた。

 中年で人当たりの良さそうな顔立ち。恰幅が良いという言葉では足りない体格。それでいて、どこか恐ろしい風格をしていた。

 王は、その場で全員に命令を下した。

「これより話すことを、他で話すことを禁ずる」


 ただそれだけの命令。にもかかわらず、強烈な威圧感を放っている。

 人間の国の中で最も外交能力の高い王。フィロス・アーク・レセント。その底知れぬ恐ろしさを三世は肌で感じた。

 誰もがこの場を動こうとしない。その時点で、契約の様に全員が命令に納得していた。


「というわけで、獣医殿。相当面倒なことになってるので、ちょっと話だけでも聞いてくれないかな?」

 その直後に、まるで性格が反転したかのようににこにこしたまま下手に話し出す王、フィロス。


 これが王命の一つの理由。王の普段の性格はかなりマイルドだった。


「あと基本的に敬語とか敬うとかいらないから。遠慮よりもばしっと意見言ってほしいからね。それに仕事場まで息苦しいの嫌だし」

 そう言いながら、フィロスは全員をソファに座る様指示を出した。

 コルネは全員分お茶を用意していた。


 王の変わり身にユウとユラは驚き、呆然としている。王という立場を理解しているからだろう。三世にとってはもう慣れたものだった。

 それ以外はみな平然としている。グラフィは事前に知っていたのだろう。

 ルゥは内心が理解出来るから上っ面は意味が無い。

 シャルトは……あまり他人に関心が無いからだろう。三世もどうにかしたいが、シャルトの境遇を考えると何も言えなかった。



 威圧感が無くなり、フィロスと茶菓子を食べだすコルネのゆるい空気により、ぐだぐだした雰囲気の中、話が始まった。


「とりあえずこれから話すこと本当に内緒の話だから気をつけてね」

 フィロスはしーっと手で合図を出し、三世と四人の獣人が頷いたのを確認して話し出した。


「まずね。行方不明事件の黒幕、というか組織がわかったよ。ただ、その組織はもう壊滅している。だからこれ以上あの騒動が起きることは無いよ」

 フィロスは軽い口調で重たいジャブを放ってきた。

 だが、三世はただ頷くことしか出来ない。フィロスが終わったと言い切るということは、つまりそういうことだ。そしてそれは一般人の自分が触れて良いことでは無い。

 それに加えて、何故かフィロスが自分に気を使ってくれた様な気がした為、三世は深く追求しないでおいた。


「それでも、その組織の証拠から、相当数の人間が関わっててね。うちの貴族とかも含めて……最悪なことに領地持ちの貴族も裏切っててね」

 疲れた顔をするフィロス。だがそれ以上に疲れてげんなりした顔をしているコルネとグラフィ。相当大変な何かがあったらしい。


「つまり、その貴族の調査とかのお願いですか?」

 三世の質問に、フィロスは首を横に振る。

「いんや。軍と騎士団協力して総出で関わった貴族の首を飛ばし、関係者の捕縛並びに処刑まではもう終わったよ」

 その言葉に合わせてうんざりしながらコルネとグラフィはうんうんと頷いている。相当大変だったらしい。

「しかも給料安かったし」

 グラフィはそうぼやいた。


「では、私に頼みたいことって一体何でしょうか?」

 三世はフィロスに急かす様に本題を尋ねる。

 何故ならルゥが話に飽きて眠たそうに欠伸をしているからだ。

 あの事件以来、ルゥとシャルトに相当心配をかけた為、三世は二人に罪悪感を覚え逆らえなくなっていた。


 フィロスも、眠そうなルゥを見て話を早回しで進めだした。


 裏切っていた貴族の領地を没収してみたら、相当酷い生活を領民にさせていたらしく暴動寸前。領主の首をそこ広場に晒すことで暴動は収まり、暫くは国庫から支援しないと回らない状態だった。

 その中でも特に酷い目に合っていたのが獣人達。その中の一部の獣人達が反乱を起こし、町の外に集落を作って生活を始めた。

 相当酷い目に合ったらしく、人に対して憎しみと恐怖を覚えている為、話し合いすら出来ない。


「ということで、獣医殿行ってくれない?」

 フィロスは、軽い口調で三世に、相当な無茶振りのストレートをぶん投げてきた。

「相談していいですか?」

 三世の質問にフィロスは頷き、後ろの四人と相談することになった。


 ルゥは迷うことなく賛成。助ける人がいるなら、出来る限り助けたい。

 シャルトは反対。他はとにかく、三世が危険になるなら好ましくないらしい。

 ユウとユラはそもそも参加不可だった。牧場の管理が忙しい為、遠方に出ることは出来ない。


 三世は答えが出せずにいて、多数決は機能しなかった。

「うーん。正直自信無いので断りたいのですが」

 三世は上手いこと物事が運び、無事に終わる未来が見えなかった。

「だよねぇ。じゃあ、獣医殿は誰ならうまく行くと思う?」

 困った顔のフィロスの質問に、三世は思い当たる人物をあげた。


「コルネさんですね。優しい上に強い。交渉も出来る人なのでこういう場で最適だと思います」

 三世の言葉に、コルネはばつの悪そうな顔をして頬を掻いていた。


「じゃあ、君達はもし命令を受けたらどうする?」

 申し訳無さそうな顔で、フィロスはコルネとグラフィに尋ねた。

「皆殺しにします」

 コルネは迷わず答える。

「見せしめの処刑の後、全員に損害賠償かけて奴隷にする」


 三世はその答えが予想外だった為、酷く驚いた。二人ならきっと助ける方向に行くと無条件に思っていたからだ。

 だが、それは有り得ない。最初にフィロスは言っていた。これは反乱だと。

 例えこちらの貴族に問題があったとしても、獣人達は国に反乱をしているのだ。国家に所属する二人の答えは一つしか無かった。

 それは、三世の知らなかった『当たり前』だった。


「それがね、国を動かすということなんだよ」

 三世の内心を見切ってか、フィロスは申し訳無さそうな顔で三世に伝える。

「じゃ、じゃあ他に優秀な冒険者を雇うとかは……」

 三世は慌てた様に答えを探す。自信が無いことを受ける様な度胸は三世には無かった。

 そう、受けないといけないあと一歩が無い限り、三世は勇気が持てない。


「最初に言った通り、この話は内密な話なの。国の名誉の問題もだけど、事件が余り表に出るとまずいことがあってね」

 直接アルノと関わった三世だからこそ、この話が来たのだ。もし来ていなければとうに『ただの反乱』として処理されている。

 自分が受けないと間違いなく処理されるだろう。だが、その獣人達の運命を背負う覚悟はなかなかもてそうになかった。


 更に、フィロスは悪い情報を持ってきた。

「ちなみにね、今回反乱を起こしている獣人は皆、醜い見た目と呼ばれて迫害を受けてきたらしいよ。そうは思わないけど、目立つとやっぱりねぇ」

 そう言いながらフィロスは、三世に資料の束を渡した。それは騎士団が必死に調べた、反乱を起こした獣人の一部の情報だった。


「あ、受けます」

 ちらっと見た瞬間、三世は考えるよりも先に口が動いていた。

「は?」

 ぽかーんと口をあんぐりあけて理解出来ない物を見る目で三世を見るグラフィ。

 逆に、コルネとフィロスはやっぱりと小さい声で呟いた。


「見せて見せて!」

 ルゥの言葉に頷き、三世はルゥとシャルトにその資料を見せた。

「「なるほど」」

 その資料に描かれた絵を見た瞬間、二人は声をハモらせ、三世の気持ちを理解した。


 その資料にはイラストが書かれていた。そこに映っているのは、大きな、そしてもふもふした狼だった。

 記述に寄ると、集落で最も人から遠い獣人。人の要素は全く見られないが、獣人と共にしてることを考え、獣人と推測。

 全長は三メートルを超え、高さも人よりはるかに大きい。


 そう。三世はその白いもふもふに心を奪われていた。

「じゃあ、全権渡しておくから後はよろしくね」

 三世は何も言わず、ただ頷いただけだった。

 脳内は既に獣人を救うこと、もふもふを救うことしか考えていなかった。



ありがとうございました。


もっと沢山書いていきたいですが、

ふかのうですね。なかなかうまく書けません。なろうの先輩方を尊敬します。

もっともっとと、気持ちばかり焦ります。そういう時に、感想や評価のおかげでがんばれています。

ふーむ。もう思いつきません。まあ言いたいことは、動物って可愛いですよね。という真理だけですが。

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