呼び方が違うだけでそれはただの何でも屋さん
2018/12/03
リメイク
ちょっと情報一度詰めすぎて煮詰めすぎた気もしますが
皆さんその辺りはきっとなれてると思いますのでそのまま行きます。
「冒険者になるということで本来だったら私が冒険者についてお話するんでーすーがー」
コルネがくるくる回りながら手を広げ歌うように話す。
「今回は適任がいるのでこれから行きましょう!」
ビシッと決めポーズを取り大きな声でコルネは叫んだ
その声にルゥもびくっとして起きる。
「ふぁ?!何?ご飯の時間」
寝ぼけながら起き上がるルゥ。
それを皆で微笑ましく見守りながらコルネに付いて移動した。
「ハイドーン!」
コルネに連れられいつもの冒険者ギルドの裏口からギルド長の部屋にコルネが突撃する。
「そろそろ扉が壊れるからもっと静かに入ってくれ!」
叫ぶルーザー。
「ほう?私にそんな態度を取ってもいいのかね?」
いつもと違う偉そうな態度を取るコルネ。
それを睨みつけるルーザー。
そしてコルネが一言ぽつりとつぶやいた。
「冒険者志望三人連れてきたんだけどなぁ」
素早くルーザーは席を立ち……。
「お茶を入れてこよう。お茶請けは何がいいかい?」
人が変わったような優しい声がルーザーから響いた。
「全員お腹すいてるので軽食でもあればぐっどですかね」
「あいわかった。軽食と言わずしっかりとしたディナーをここに持ってこさせよう」
ルーザーは書類を持ってこちらにくるっと振り向いた。
その顔はとてもいい笑顔であった。
用意された山のような食事も無くなり、ルゥ以外全員が紅茶を飲みながら一休みを始めた。
ルゥは一人で全体の九割ほどを食べそのまま部屋の隅で丸くなって寝ていた。
「すいません。沢山食べてしまって」
「いや構わない。それくらいはお安い御用だ」
ルーザーはニコニコとしていた。
「さて冒険者ということだが。三人でいいかな?」
「はい。三人でパーティを組もうと思ってます」
「大変結構。冒険者と言えども信頼関係は大切だ。仲間を増やす予定なら当分先にすることをオススメする。下位ランク冒険者は外れも多いからな」
「ランク分けはどのようなものなのですか?」
田中の質問に黒板のようなものを持ってきてルーザーが書き記す。
カッパー(銅)ランク0見習い。通称屑鉄級
ブロンズ(青銅)1下位
アイアン(鉄)2中堅
シルバー(銀)3
ゴールド(金)4
プラチナ(白銀)5
「以上だ。最初のカッパーは誰でもなれる。信用を得たらランク1。これが本当の冒険者だ。そして一流として認められたらシルバー級になれる」
「まあ今は下位の話だ。君達は騎士団隊長の後ろ盾とギルド長の推薦がある。書類もいらない。今日から冒険者だ。説明もあったと思うが義務や罰則も無い。しかも信用は既に足りてる。1回依頼をこなしてくれたら即青銅級に上がってもらう。あまりに酷いと除籍処分になる事もあるが……そこは信用している。次に実際の依頼内容について説明する」
ルーザーは楽しそうに黒板っぽい何かに書き足す。
個人依頼:誰でも依頼出来る。トラブルも多いがこれが冒険者の依頼の中心。
委託業務:国家運営に関わる業務。清掃や見回り、警邏や危険の排除など。基本的に報酬が安い。
軍事業務:軍人との連携に関わる業務。演習から戦争の傭兵まで。
「以上だ。君達に軍事業務をさせるつもりは無い。というか念のため禁止にしておく」
「なぜですか?」
予想はつくが念のため三世は尋ねる。
「危険だからだ。冒険者を塵芥程度と思ってる軍人も少なくない」
「騎士団は違うからね!むしろ委託業務出したり受けたりする側だからね!」
ルーザーの言葉にコルネが慌てて応える。
「うむ。コルネの答えの通り王立騎士団は軍事関係ではない。むしろ騎士団も軍人から嫌われている」
黒板っぽい何かに書き足す。
ラーライル王立騎士団:民の味方。基本エリート。
ラーライル王立軍:国家の守護者。エリート嫌い。冒険者嫌い。治安に悪影響。ただし階級が上になるほどマトモになる。
冒険者:何でも屋に近い。軍事関係が免除される代わりに魔物対策に優先的に取り組む事が義務付けられている。ならず者が多い。
「なんかゴロツキっぽいの多いですね」
若干ゴロツキっぽい見た目の田所がそう呟いた。
「そんなもんさ。こればかりはどうしようもない。先に言っておくが軍人も冒険者も騎士団も国には必要なものだ。無くなったら国が滅ぶ」
ルーザーはそう呟いた。
過去に軍人不要と唱えて処罰された異世界人がいたという事を加えて。
「さて話に戻るが君達に受けて欲しいのはまずは委託業務だ。何なら私から優先的に回してもいい。理由は銅級に任せる個人依頼など碌なものがないからだ」
「質問いいですか?」
田中が尋ねる。
「なんだ?」
「なんでこんなにおんぶにだっこなんです? 普通は自己責任の世界なのにものすごくよくしてくれるのはわかります。でも理由がわからないのが怖くて」
田中の質問に三世は確かにと思った。
異世界人の特別待遇にしても凄すぎるし、神託で『良くして』と言われたくらいでこんなに支援をされるのを普通とは思えない。
「いい質問だ。そしてその答えは簡単な事だ。信用出来る冒険者は何人いても足りないのだよ」
ルーザーがそう応えた。
「冒険者にはもう一つ業務がある。誰でも出来るが出来たら鉄級以上で受けて欲しいが」
黒板に書きしるす。今回は短かかった。
瘴気攻略
「どこの誰が創り出したものかわからないが魔族という存在がいる。その魔族は瘴気をはき続ける。そして瘴気が蔓延した場所からは魔物が出てくる。瘴気の中に必ず魔族がいるわけではない。いる可能性もあるが。いない場合は瘴気の中心点を浄化すればそれで瘴気は消滅する」
「もし魔族がいた場合は?」
「逃げろ。とにかく逃げろ。それだけだ」
田中の質問にルーザーは一言告げた。
「では瘴気を攻略した証拠などはどうしたらいいのですか?」
三世が尋ねる。
「まず瘴気攻略を受付に言って、その後に瘴気を攻略する。その場合はすぐに報酬がもらえる。次に依頼を受けずに瘴気攻略を行った場合だが、その場合報酬が欲しいなら頭の中を魔法で覗く」
「そんな事が出来るんですか?」
三世の質問にルーザーは頷いた。
「ああ。ただし、その場合犯罪行為などしてたら即バレる。隠したいことも全てな。だから出来るだけ事前受付したほうがいいぞ」
とルーザーがニヤリとしながらそう言った。
「ちなみに魔族が塒にしている拠点はそちらのイメージするダンジョンの様な代物だ。実力がついたら挑戦してみるのもいいだろう。見たことも無い宝とか名誉がもらえるぞ」
「どのくらいの冒険者なら出来ますか?」
「白銀級20人は欲しいかな」
「しばらく考えなくても大丈夫そうですね」
三世の言葉に田中と田所は頷いた。
ルーザーが依頼を用意してくれていると言ったが田中と田所は断った。
『冒険者として一からやってみたい』というのが理由らしい。
もちろん三世もその気持ちはわかる為、反対する事もなかった。
「なら最後のアドバイスだ。明日の明朝。七時にギルド正門は開く。出来るだけ早めに準備して行くことをオススメしよう」
――ああ……依頼って早い者勝ちなのですね。
「依頼って壁に貼ってある紙を早いもの勝ちで取るやつですか?」
「個人依頼はそうだ。委託業務は壁にない物もあるから受付に話を聴けばいい」
「了解しました。ギルド長。これからお願いします」
「うむ。ちなみに職人でも冒険者を兼任しているヤツは多いぞ。材料を自分で取れるからな」
三世はそういえば革を加工する前の皮に拘ったことが無かったことに気づいた。
「アドバイス助かります。色々試してみます」
「うむ。そっちも期待している」
その後コルネの用意した宿に三人は泊まる事になった。
ルゥは三世と一緒に寝るつもりだったが、コルネと一緒の部屋で寝る事になった。
正直とてもありがたかった。。
ルゥは三世と一緒じゃなくて残念そうにしていたが、コルネと一緒でも十分楽しそうだったのでたぶん問題はないだろう。
「私は装備も無いし能力も低いので。多分邪魔になると思います」
三世がベッドの上から二人にそう話しかけた。
「大丈夫ですよ。最初なので戦わないでしょうし」
田中がそう応える。
「警備とかあたりでさくっと終わらせて青銅級になりましょう。そこからがスタートっすよ」
少しずつ不慣れそうな敬語が取れてきた田所が言葉を付け足した。
見た目も中身も体育会系なのだろう。
「わかりました。二人ともよろしく」
三世の言葉に二人は笑い、頷いた。
朝になり、ルゥを連れてコルネと別れ、ギルドの正門に待機する。
時間は6:55
最初の関門がそこにあった。
ぎゅうぎゅうつめで並ぶ100人は下らない人数。
そしてその過半は見た目のガラが悪い。
半裸に近い格好で薄い皮ジャケット1枚だけだったり剣を抜き身で持ち歩いたり酒ビン片手にだったり。
女性もいるが相応にガラが悪い。
ここだけ文明崩壊後の世界のような有様になっていた。
コルネが用意してくれた服装に着替えたルゥが非常に目立っている。
可愛らしいワンピースタイプのスカート一体の服。その下に長ズボンをはいている。
色合いは多少地味だが、汚れても目立ちにくく洗いやすい服にしてくれたからだろう。
靴だけは足に合わせて歩きやすい靴を用意したが、靴自体履きなれてないルゥが大丈夫だろうかと三世は少々心配だった。
足首まである長い赤い髪は栄養が足りたのかとても綺麗でキューティクルも整っている。昨日までの髪と打って変わって、キラキラした輝かんばかりの髪になっていた。
見た目もそんなルゥと一緒に並ぶと必ずトラブルが起きると予想された。
それとは別に、単純に怖いのでごろつきの傍に並ぶことが出来ず、三人と一匹は諦めて後ろのほうで縮こまりながら時間を過ごすことにした。
七時になり、門が開くのと同時に人が雪崩れのように押し込んでいく。
待機する事わずか十五分で中に入っていったほとんどの人が外に出て行った。
その集団の中には、依頼を受けられないであろうこちらを見てほくそ笑む者もいた。
結局人の流れが途切れた後でしか、ギルドの中に入ることが出来なかった。
ありがとうございました。