番外編-ヴィラン分隊
ゴーン……カーン。ガランガラン!
森林の中を、耳が痛くなるほどの音量の鐘が鳴り響いた。
それは休戦の合図で、条約を軽視する獣人ですら必ず守る絶対のルールの一つだった。
「おーい。全員生きているかー?」
グラフィは適度に気の抜けた声で周囲に呼びかける。無事とは聞かない。無事な奴などいないからだ。
既に周囲から獣人は撤退していると思われた。
呼び声に応じる為、よろよろと人がグラフィの元に集る。きっちり九人全員がグラフィの元に集った。満身創痍だが、今日は誰も欠かさないで終わることが出来たので良い日と言えるだろう。
視界の遮られる森林で、片方の陣営人数最大十二人の小さな戦場。
それは身体能力の優れた獣人の絶対優位な状況。その上しっかりとした拠点も無く、相手の隙も突けないから、ゲリラ戦を行うしかない戦場。
こういう地獄のような戦場が、ヴィラン分隊の日常の一つだった。
侵略側ではあるが、今回の任務は別に勝つことでは無い。ただ敗北しなければ良い。
拠点も無い森林戦。勝敗を決定するのは敗北を認めるか全滅させるのみ。勝利条件が厳しすぎる。
ただ、今回を引き分け以上に持ち込むことが出来たら、次の戦場で有利に立ち回ることが出来る。ヴィラン分隊の任務は次の戦場で勝つ為の布石だった。
「よーし。生存確認。おら、とっとと帰って飯だ飯。酒が飲みたい奴は明日病院行って問題無かった奴だけな」
グラフィの声にブーイングが上がる。だが、それはただの恒例行事。じゃれあいの一種で、本気で今日酒を飲もうと考えてる奴はいない。
満身創痍で傷だらけ。こんな状態で酒を飲むと死にかねない。それに緊急手術が必要な場合、酒のせいで麻酔が効かない場合もある。ついでに言えば体力も限界に近い。
酒を飲む元気も無いし、飯を食べるのすら億劫になっていた。
結局グラフィが誘った飯屋に来れたのは、部下のジョーただ一人だった。
身体能力が高く、獣人に匹敵するジョー。
隠密行動が得意で単独なら獣人からも逃げ切れるサト。
防御魔法が得意で主な任務は障壁を張ることのティーム。
植物の知識が豊富で材料が無くても解熱剤と痛み止め、消毒薬が作れるイシ。
体力は低いが力自慢のドルト。
馬から牛、またはイノシシにすら乗れる乗り物が得意なスーロル。
広範囲の攻撃魔法が使えるカテイル。
罠技能が高くスキルにまで昇華しているジェルク。
近接戦力がグラフィを除いたら一番高いガルイ。
隊長にこの九人を加え、ヴィラン分隊と呼ばれていた。
ついでに言えば、未来で順番に頭に数字を入れられる奴らでもあった。
ラーライル軍の分隊は十二人編成だ。だが、ここに配属されたいと希望する者は基本いないし、いてもすぐに逃げ出す。そして逃げない残った奴でもずっといるわけでは無い。
森林戦より一月ほど前までは、もう一人部下がいた。ヴィラン分隊の中でも五番目位に古参で、隊長のグラフィととても仲が良かった。
戦場で死ぬ奴に実力はそれほど関係無い。運が悪い奴から死んでいく。その部下は、とびっきり運が悪かった。
唯でさえ、ガラが悪く軍部の評判を落とすと毛嫌いされているヴィラン分隊だが、最近の嫌われ具合は異常だった。原因はわかっている。以前の乱暴騒ぎの所為だ。
獣人と人の戦争ではいくつかルールが追加され、戦争がゲームの様になっている。
例えば、時間制限。戦闘範囲指定。そして、敗者の奴隷化だ。
戦争区域で一定数の差が生まれた場合敗者側は一人軍人を相手国の奴隷にしないといけない。ただし、ある程度国は奴隷を選ぶことが出来る。
例えば人陣営が負けてもヴィラン分隊が奴隷に落ちることは無い。もし敵になった場合少人数でのゲリラ戦の得意なヴィラン分隊は最悪の相手になるからだ。
そのためヴィラン分隊が負けた場合、別のスケープゴートが選ばれるようになっていた。
だから獣人陣営側が多少無茶な人員を送ってきても、人陣営に文句を言う資格は無い。
獣人側は、その日の負け分の奴隷を赤髪の小さな女の子にした。彼女を軍人と言い張り、引き渡してくる獣人軍。
その子の顔は怒りに満ちていて、猿轡を噛まされ、顔には痣が出来ていた。服もボロの布着れのみで、体の汚れも獣人でなくても臭うほど酷い有様だった。
グラフィは、ニヤニヤ顔で引き渡して来た獣人を殴りつけた。どうしたら子供をそんな扱い出来るのか、グラフィには信じられなかった。
だが、事件はこれで終わりでは無かった。小隊長。その時の人陣営軍の現場の最高責任者だ。小隊長は笑顔でグラフィをたしなめようとする。
「まあまあ。良いじゃないか雌ってだけで獣人は変わり無いんだし。雄の奴隷と番にでもして数を増やさせたら奴隷も増えるし。ね?」
小隊長も別に本気でそう思って言っているわけではない。そもそも小隊長は獣人自体にほとんど興味が無い。だから、その言葉がグラフィの逆鱗に触れたなどと、夢にも思わなかった。
グラフィは獣人を殴りつけた拳を、そのまま反転させ、裏拳を小隊長に叩き込んだ。裏拳が当たった瞬間、上官は吹っ飛び、びぎゃっ、と奇声を上げて気絶した。
小隊長は顎と鼻の骨折に歯の損傷で全治三ヶ月。上官暴行に繰り返しの命令違反。ただし、軍の人員は非常に厳しく、人柄を無視したら有能であるグラフィを首にするほどの余裕は軍には無かった。
この時はグラフィも反省した。どうせなら獣人も上官もきっちり殺しておけば良かったと後になり悔やんだ。
ついでに部下に迷惑をかけたことを少しだけ反省した。
首にはならなかったが、その代わりヴィラン分隊は嫌がらせの対象となったからだ。
今まで以上にきつい戦場の指令が増えた。しかも本来あるはずの事前情報すら上でもみ消され何も知らないままでだ。
装備品も穴が開いていたりサイズが小さかったりと細かい嫌がらせが増え、配給の食糧は腐った物が混じっていた。
これにはグラフィも気にし、ヴィラン分隊の解散を示唆したが、部下は全員拒否した。
「隊長に被害が集中してるんで俺ら実質無害なんで。しばらくデコイ頼みます隊長」
「装備品は俺が変わりに用意しますよ。元から軍の微妙だったし」
「食料はぶっちゃけ市販のよりまずかったし。そんなに困らないよな?」
部下達はちゃかしながら、ヴィラン分隊を続ける意思を示した。口には出さないが、全員グラフィ以外の隊長を受け入れる気にはならなかった。
それは心情的な理由でもあるが、即物的な理由でもある。
ヴィラン分隊はスペシャリストではあるが、落第生でもある。基本的に長所よりも短所の方が大きい連中だった。それを理解し、使いこなせたのはグラフィが司令官として優秀だったからに他ならない。
例えばカテイル。広範囲の攻撃魔法という強力な特技を持っているが、威力にムラがあり、連発出来ない。
その上、長期の戦場に居続けると精神が不安定になり、異常をきたす。この状態だと魔法は全く使えない。
カテイルだけでは無い。この部隊にいる連中は大なり小なり厄介事や心の病を抱えている。人として壊れている側の存在だ。
特別な技能が無いから軍にしかいられない。特別な技能が有っても、他に問題があり軍にしかいられない。
どっちにしても、金目当てで軍にいる、まともでは無い存在なのは確かだった。
そんな人材を集め、使いこなして成果を残しているグラフィ。小隊長に嫌われていても、勝率という数字の結果を残し続けていた。
それが尚の事、他の部隊を刺激し嫌がらせを加速させる原因になっていた。
森林戦が休戦になってから翌日。朝になって全員が揃っていることにグラフィは見つからないように安堵のため息を吐いた。
休戦その日のベットの上で冷たくなっているという経験は一度や二度では無い。
経験則ではあるが、負傷の翌日朝を乗り切れば死亡する可能性は低いと思って良いだろう。
だからこそ、翌日の朝に全員揃っているという意味は非常に大きい。
彼らが入る病院は軍病院では無い。軍人なら無料の病院はあるが、ヴィラン分隊はそこに行くつもりは無かった。
理由は二つ。一つは嫌がらせを避ける為。流石に医療従事者が何かをすることは無いが、他の軍人が何をしてくるかわからない。緊急性の高い治療の妨害。入院中の暴行。考える限りの嫌がらせという名前の仕返しを行うだろう。元気な時に返り討ちにする分尚の事危険が多い。
もう一つの理由は、単純に軍病院よりも一般病院の方が腕が良いからだ。その代わり多少割高ではあるが。
全員そろって精密検査。ここ最近はずっと同じ病院に行っているが、検査の度に必ず叱られる。
医者でも看護師でも、誰でも皆同じように『体を大切にしろ』というお叱りを受ける。
グラフィは誰にも言えないが、これが楽しみだった。自分を人間扱いして心配してくれる人がいるというのはそれだけで嬉しかった。
恥ずかしいから誰にも言う気は無いが。そして、分隊員皆、同じ秘密を抱えていた。
検査の結果。全員大なり小なり無数の怪我。軽くても骨折。一番酷いのはドルトで、腕が千切れかけていた。
獣人と正面からぶつかり合い、その時噛み付きを腕で防いだ時の怪我だ。
体躯が良いドルトだから千切れかけで済んだ。他のメンバーだったら腕か、もしくは首が宙を待っていただろう。
入院から手術、リハビリも込めて半年の期間が必要と医者に宣告された。
半年。一番怪我が重たい奴の治療が終わるまでの時間がヴィラン分隊の休暇の時間だった。
半年働かず飲み食いどころか多少遊んでも生きていける位の報酬は昨日の森林戦で出る。
当たり前だがこの給料は特別だ。他の軍人の平均月収の百倍は下らない。それでも、この金額に文句を言う軍人は誰もいない。
グラフィはそれが残念だった。もし文句を言われたら喜んで仕事を譲る気だからだ。
十人程度の少人数で、同じ数の獣人を、視界の封鎖された場所で戦いたいならどうぞお譲りしましょう。しっかり稼いで下さい。
そう言いたいが、そもそも口で文句を言う人自体いない。偶に喧嘩を売ってくるのと、影からこそこそ嫌がらせする奴と、直接嫌がらせする上官しかいなかった。
その日の夜は、約束通り酒場を借り切って派手に飲み食いした。グラフィの奢りということもあり、部隊員は全力で金を使うように飲み食いをする。そこに遠慮の二文字は無かった。
部隊の半数は明日から入院。三人は手術が待っている。それ以外も要経過観察。通院の必要があった。
ドルトに到っては明日から半年日程が埋まりきっている。騒ぐのは今日しか時間が無い。
ヴィラン分隊は戦場から帰る時は必ず今日みたいに派手に騒いで酒盛りをすることにしてた。それは、次に同じメンバーで飲めるとは限らないからだ。
次の日、部隊は暫くお休み。各自は治療に専念しつつ、自由な時間を過ごす。
部下達は全員、厄介な事情を抱えている。それは偶然ここに厄介な事情持ちが集った訳では無い。厄介な事情が無い限り、こんな所に残る奴はいない。
真っ当な常人が抜けて、異常者だけが残ったという、だたそれだけのことだった。
その事情にグラフィも首を突っ込む気は無かった。ただ、長い付き合いだから何となくわかることもある。
カテイルは病気の治療。ジョーは借金。他の連中も、大体金のかかる何かを抱えていることだろうとも予想出来ていた。
そして、一月前に死んだ部下は病気を抱えた母の介護の為だった。
グラフィはその母の元を訪ねた。遺品と遺書はもう届けられていた。遅れたのは軍からの直接の報告と恩給金の支払い。部下の母はグラフィから直接手渡しして欲しいと言った為、今日まで遅れることとなったのだ。
グラフィは恨まれていることはわかっていた。直接文句を言う為か、または復讐の為か。だが、それは確かに正統な権利でもある。グラフィは全てを甘んじて受け入れるつもりだった。
普段はしないような立派な正装。銀に輝く鎧に礼装用の儀剣。王に会う時でもここまでしない位真っ当な格好。似合わないが、それでもその位はしないと申し訳が立たないとして、今日の為にグラフィは一式買い揃えていた。
「失礼します」
慣れない敬語を使いながら、グラフィは部下の母と対峙した。
「ご苦労様です」
痩せ過ぎてボロボロになった老婆。病気が重いのだろう。後が無いとわかる。だが、老婆のその姿勢は背骨が曲がっているとは思えないほど背筋を伸ばし、気丈に振舞っていた。
グラフィには後光が見えた。座る体力すら無いはずなのに、背筋を伸ばして直立不動に立ち、暖かくグラフィを迎えるその姿は神々しさすら感じるほどだ。
事務的な言葉で死亡報告をし、恩給金と遺産を手渡すグラフィ。遺産と言っているが、これは全てグラフィの金だった。一月ほどの余った金を全てこの中に入れている。
その位しないと、部下に対して報いきれないと思ったからだ。
部下の母は、恩給金は両手で受け取った。恩給金は金貨の枚数が書かれた紙だから持つことが出来る。母は、それを大切そうに両手で握り締めた。
「すいません。その抱え切れない遺産を持てるほど体力がございません。テーブルに置いておいて頂けますか?」
グラフィは頷き、傍のテーブルの真ん中に置いた。
儀礼的な死亡報告も終わり、特に何も起きずにその場は終わった。
恨み言も無ければ泣き喚くことも無かった。グラフィの拍子抜けした顔に、部下の母は微笑みながらこう言った。
「あの子は私の所為で死んだのです。恨まれるべきは私にあります。何故、あの子が尊敬し続けたあなたを、私が恨むことができましょうか」
本心なのか、嘘なのかわからなかった。老婆の姿は相変わらず神々しく見え、その思考を計ることすら出来ない。
グラフィは一礼し、その場を立ち去った。泣いてしまいそうだった。だが、目の前の人が泣いていないのに自分だけが泣くわけにはいかなかった。
そして、一月もしないうちにその人は亡くなった。
亡くなった後、グラフィに遺書が二枚、届けられた。
一枚には恩給金の紙が一緒に入っていた。
『【国を守る為に最後まで戦った私の最も尊敬する最愛の息子の遺産です。お使い下さい】この言葉と共に、私の代わりに孤児院に寄付をして下さい」
もう一枚の紙は短くシンプルだった。
『遺産という名前のあなたのお金はお返しします。あなたの為すべきことの為に使って下さい』
何も言っていなくても、母だからお見通しだった。部下は金を全て母に渡していたから遺産らしい遺産などある訳が無いと、母としてわかっていたのだ。
この事は、グラフィにとって新しい傷になり、そして、新しく生きる理由にもなった。
グラフィ自身にも、部下と同じ様に特別な事情がある。だが、それは金銭に全く関わりが無い。
ではグラフィは報酬を何に使っているかと言うと、部下達の食事代にしていた。
休暇中のグラフィは暇な部下を連れて酒と飯を奢り、娼婦の代金を支払っていく。自分は絶対に抱かないが。
部下達はグラフィに集り、グラフィは自慢し、自分の権力を振るうように金をばら撒く。
外から見たら非常に醜い光景だった。だが、内情はもっと醜い。
部下達は多額の報酬をもらっているが、足りたことなど殆ど無い。食事代すら削って自分の事情に報酬全てを費やす。それほどまでに、部下達の事情は重たかった。
その分グラフィが部下達の面倒を見た。だからこそ、不安定でロクデナシの彼らでも、隊長にだけは従うことに抵抗は無かった。
入院から半年後。全員本調子となり、軍からの辞令が届く。あらゆる理由により、
単独行動の多いヴィラン分隊だから特殊な任務が多いが、今回はその中でも特に酷かった。
任務内容はただの偵察。ただし、一個大隊が守護している場所に対しての単独の任務だ。
大隊、つまり千人程の人員に十人で特攻してこいという任務だ。もちろん偵察だから戦う必要は無いが、戦わずに済む可能性は限りなく低い。
それでも、ヴィラン分隊の今までの任務よりはまだマシな内容だった。直接戦闘を避けて良いなら獣人はそこまで怖く無い。
何より、部下の一人のサトは隠密のエキスパート。得意なことを発揮出来るヴィラン分隊は間違いなく軍有数の実力と言って良い。
任務はわずか一月、それも七割がたサトが一人で達成した。準備と陽動を協力し、後はサトが単身で獣人に擬態して侵入するというとんでもない方法でやり遂げていた。
嗅覚や音すらも完全に利用し、獣人を騙しきった。獣人は軍としては適当だ。兵士では無く戦士と言う方が近いだろう。
国同士の条約すら覚えていないくらいだ。分隊同士の決戦なら十二人までと決めているが、十三人だったり十四人だったりする。
数という概念が適当なのだろうか、それでも少ないことが無く、いつも人を超えて出すからグラフィは良くイラついていた。
ただし、伏兵などの使い方はしないし戦場でも大体皆単独行動をする為、人側が有利な状況になっていた。もし獣人が軍事行動を理解したら人では絶対に勝てないだろう。
だからこそ、サトが侵入しても誰も気づかなかった。それ所か新しい仲間と勘違いし、付近の精密なマップをサトに渡し、作戦内容、目的や方法を全てサトにぺらぺらと話した。
その場所を守っている理由は、付近に獣人の村があるから。その場所を占拠されたら村を人に取られるから嫌という理由だった。
軍人が色々な意味で利用しているから取られると面倒になる。だから守るらしいが、村から見たら軍人の搾取が酷いから開放されたい。
それを上に報告し、ヴィラン分隊の仕事は終わった。
今回は誰一人怪我が無かった為、一日飲み会をして次の日にまた新しい任務に就く。
怪我以外で彼らが休むことは無かった。
そんな命を捨てるような生活は、例の集団行方不明と襲ってくる死体の事件が起きるまで続いた。
突然国の内部から村や町が荒らされ、騎士団だけでは手が足りず、軍も騎士団と協力体制を取った。そして、ヴィラン分隊にまさかの防衛任務が告げられた。
最初は金にならない仕事だからグラフィは拒否した。
普段ならヴィラン分隊に護衛任務を任せるなど有りえないことだった。ヴィラン分隊の護衛任務と比べたら、初めてのおつかいの方がまだ成功率が高い位だ。
だが、命令拒否は認められなかった。軍にも既にそんな余裕は無くなっていた。それは緊急事態と呼んで良いほど状況はよろしくなかった。
行方不明者の出た町に、騎士団や軍が駐在しても、行方不明は止まらなかった。それどころか、騎士団からも軍からも行方不明者は出ている。そして、歩く死体になっていた。
市民の不安の心配し、この事は騎士団も軍も機密として話すことを禁止した。
普段こういう場合なら、ヴィラン分隊は一番厄介な場所に捨て駒兼切り込み役になり、金を稼ぐのだが、今回は相手の所在地がつかめない。
そうなると、トラブルの原因で大体邪魔になるヴィラン分隊は、厄介払いも兼ねて僻地防衛に飛ばすのが良いだろうと軍も考え、こういう命令を下した。
当たり前だが、ただの防衛任務だから、給料が安い。ヴィラン分隊のモチベーションは消滅寸前だった。
やりがいも無い仕事につまらない田舎の村。その上防衛任務とヴィラン分隊にとって最悪の任務だ。
そんなことを考えるヴィラン分隊の部下達と違い、グラフィは嫌な予感を感じていた。
今まで居なくなった部下達が、自分を下の世界に引っ張り下ろそうとするような、そんな不気味な予感だった。
ありがとうございました。