7 バレたので本音を語る
お読み下さりありがとうございます!
「本当に人間なんだね。」
「そうです…人間しかいない世界から迷い込んだん…」
さわっ
「どこ触るんですか!!」
ボコッ!
お気楽王子の手がボクの腰を撫でたので顔面に拳を打ち込んだ。
お気楽王子改めセクハラ王子!!
「本当に尻尾がない…なんて可愛いんだ!」
「尻尾がある方が可愛いでしょ!!」
思わず本音で言い返した。ボクの拳に怯みもしないのが悔しい。
するとエーランド先生がボクを取り上げ、抱きしめる。
「チハヤ!尻尾ならいくらでも見せてあげるし、触らせてあげる。だから私の番になってくれないか?」
番って、獣人の伴侶でめちゃくちゃ束縛されるアレ?
「イヤです。」
即答した。
自由がなくなるなんて耐えられない。
今度はシェルヴェン侯爵夫人がボクを奪い取った。
「うふふ…エーランド先生が振られるところなんて初めて見たわ。面白い物を見せてくれたお礼に何か欲しい物があったら言って頂戴。私にできる事なら叶えてあげる。」
近くで見ても超絶美女だ。
ぽーっと見惚れていると、私でも良いのよ?って…妖艶なお姉さま…かっこいい。
「じゃぁ、そのドレスを作った人を紹介して貰えますか?弟子入りしたいです!」
「あら…そんな事で良いの?」
「はい!そんな素敵なドレスに囲まれてお仕事したいんです!」
「可愛いお願いだけれど、簡単すぎてつまらないわ。」
「ふにゃぁ…!」
普通はつねる流れだと思うんだけど、また腰を撫でられた。お姉さまならこれくらい触られてもイヤじゃない。
「うふふ…さっきと反応が違うわね。女が好きなの?」
「素敵な人ならどっちも好きです…。」
男でも女でも巨乳でも貧乳でも。
こんなえっちぃ人と密着してたら意識しちゃうよー。
「もう降ろして下さいぃ…」
恥ずかしくて目が回りそう。
傍から見たらゆりゆりしいだろうけど、ボク女装子だからね。女の子になりたい訳じゃないし、ゲイでもない。
でもイケメンなだけじゃ興味は無い。と言うかまだ誰かを好きになった事がない。どっちもアリだと思うけど。
未熟者にフェロモンダダ漏れ系はヤバいです。
「とにかく、騒ぎになりそうだから一度お城に行こう。」
セクハラ王子がそう言う。ホントに王族なの?
ベルンハルドが王子(仮)に代わって主催者に挨拶をして会場を出る。セブランももちろん一緒だ。
…セブラン、カーリンさんとの別れを惜しむのは良いけど、ちゃんと一緒に来てくれないと帰れないよ。
用意された馬車は地味でいかにもお忍び慣れしてます、と言った雰囲気だ。…狭い。
「それにしてもチハヤが人間だったなんて驚いたよ。」
「本当に知らなかったのか?」
セブランの今更な言葉に呆れる王子(仮)。
「手を出されたら簀巻きにしますから。」
実行済みだよ!
「その強さはいったい何なんだ。」
「それ、何度も聞かれそうだから後で良いですか?」
あんまり言いたくないから1度で済ませたい。
馬車が止まり、降りると舟着き場だった。食糧などの輸送用運河だそうだ。
君を食べられたらどんなに良いか、とか言われても引くだけだよ。王子(仮)はキラキラしすぎてイマイチ好みじゃない。
舟に乗って通用口から入り、泣いて崩れたメイクを落としてから王の私室に案内された。
「また抜け出していたのか。」
呆れ顔の豪華なオジサマはもしかして…
「国王陛下におかれましてはご機嫌麗しく…」
「麗しくなぞないわ!」
やっと執務が終わって息抜きをしようかと言う段になって火急の用事などと…
と、ぶつぶつぼやいている。ボクが悪いわけじゃないけどちょっと罪悪感。
「要件はこちらの人間の事です。」
「人間だと!?」
うわぁ、すごい剣幕!うちの父様にも引けを取らないよ!
「…う、あの、人間の世界から迷い込みましたチハヤと申します。」
ドレスの裾をつまんで優雅に頭を下げると、頭を両手で掴まれた。ひぃっ!
頭を撫でまわして見つけた耳を引っ張られる。痛い!
「やめてください、痛いです!」
手を払いのけて耳を押さえる。ちょっと切れて血が滲んだ。
「す…すまぬ!!本物だとは信じがたく…傷つけてしまったな。典医を呼ぶか?」
これくらい大丈夫です。
「ふやぁん!!」
また頭を持たれて耳を舐められた。舐めとけば治るって言うけどさぁ!勝手に舐めないで。
「人間も耳は性感帯なのか?」
「知りません!!」
こんなとこ舐められた事なんてない!!
それにしてもボクがここまでされるがままだなんて、この王様強すぎる!
反撃する隙もないとか…
王子(仮)が引き離してくれた。
能天気ワールド(笑)