5 舞い踊る花びらのように
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「セブラン様、カーリン様とはどのように知り合われたのですか?」
お嬢様の仮面をかぶったまま質問する。
セブランは照れながら学生時代に背が高い事を悩んでいた彼女に耳を伸ばして私の方が背が高いと言い張ってみたら笑ってくれて元気が出たと喜んでくれたんだ。その笑顔が目に焼き付いて離れなくて…と語ってくれた。
なにそのほのぼのエピソード!きゅんとくるんですけど!?
で、妹溺愛兄がお前になんか妹は渡さないとあれこれ言って来る、と。
どうしたもんかなぁ。カーリン様はセブランと結婚したいと思ってるんだろうか?それよりちゃんとプロポーズしたの?
あとで色々聞こうと思っていたら会場がどよめいた。
階段の上の踊り場を見るとイケメンが巨乳美女をエスコートしている。
イケメンはエーランド先生、お相手はフラメンコ風のドレスで豪華な金髪にピンクの大きなけも耳…もしかして豚さん?
ボン・キュッ・ボンどころじゃない。どどーん!きゅっ!ばばーん!だよ。
ボクが好きな服はゴスロリ系だから羨ましくないもん!鹿鳴館風のドレスがめちゃくちゃ似合いそうだけど羨ましくないもん!!
…詰め物の検討は後ほど。
シェルヴェン侯爵婦人たら、どんな取引をしたのかしら?エーランド先生にエスコートして頂けるのは公爵以上のはずなのに…
そんな囁き声が聞こえて来た。本当に大人気なんだなぁ。
階段を下りて主催者に挨拶に行く先生を見ていたらシェルヴェン公爵夫人の後ろ姿が目に入った。ホルターネックで大胆に背中を露出したドレスはウエストを強調するように腰に細い紐が付いていて蝶結びしてある。そして背中どころかお尻の割れ目の上あたりまで露出して……
くるんと巻いた可愛い豚さんの尻尾を堂々と人目に晒している。
豚さんの尻尾がこんなに萌えるものだったなんてぇぇぇ!!
お姉様と呼んでしまいそう…
はっ!
何もかも忘れる所だった!
「セブラン様、踊りませんか?」
エーランド先生も来た事だし、練習の成果を披露しなくては。
セブランの知り合い達からお前が誘えよ!とか言われているからボクから誘ったらまずかったかな?曲の合間に手を取り合ってホールへ進み出て向かい合って1礼。
セブランの左手にボクの右手を乗せ、左手はセブランの肩に。肘が下がらないように、セブランは肘を重ねてボクの肩甲骨に手を添える。
磨き上げられた床を滑るように踊り出すと会場の空気が一変した。
花吹雪が見えるレベルで踊れたと思う。
知り合い達がわっと集まって何があったんだ、奇跡か?と興奮している。
セブランの上司のアルトゥルさんにダンスを申し込まれ、セブランを見ると頷いたので踊る。
セブランと違って踊りやすい!
すると踊り終わるやいなや次のダンスを一斉に申し込まれた。どうしよう?
困っていると爽やかにイケメン登場。
「チハヤ、完璧だったよ。私とも踊ってくれますか?」
すっと手を差し出され、知らない人よりは知っている人を選ぶのは仕方ないよね?
「エーランド先生、よろしくお願いします。」
先生に導かれ、ホールの中央へ進み出る。
向かい合って立つと周りに誰もいない事に気がついた。
ええ!?
独壇場ってやつ?
練習でやったステップにアドリブも入れて振り回されるような方向転換もして最後はイナバウアーみたいに背をそらせてフィニッシュ!
割れんばかりの大歓声!
先生、すごい!!人気は見た目だけじゃなくてリードの凄さもあるんだろうな。自分が上手くなった気がするもん。
飲み物を飲みながら一休み。
先生はご婦人方に拉致されて行った。
そのご婦人方にかなり睨まれた……
けどまぁ男性方からはチヤホヤされて気分が良いから平気。するとやって来ましたヴァクトマイステル伯爵。
「チハヤ嬢、私と一曲踊って頂けますか?」
チラリとセブランを見てから
「私はセブラン様と踊るために練習して参りました。アルトゥル様はセブラン様がお世話になっておりますし、エーランド先生は教えて下さったダンスの仕上げです。もう他の方はお断りしようと…」
「私がセブランより劣ると?」
「いいえ、決して!ただカーリン様しか目に入らないセブラン様に私を見て欲しかったのです。」
困った顔で微笑むと、伯爵は憮然としながら説明してくれた。
「セブランはカーリンと結婚させて欲しいと言うが聞けばカーリンは申し込まれていないのに返事もなにも、と言う。それにカーリンは背が高い事に劣等感を抱いているようなのでカーリンより背の高い男の方が幸せになれるのではないかな?」
やっぱりプロポーズしてなかったのか…
「セブラン様…、なぜプロポーズしないのですか?カーリン様のお気持ちを確かめもせず、許しをもらったとして何の意味があるのですか!」
このヘタレ!
「あ、うぅ…その、なかなか会う機会もなくて、気ばかり急いてしまって…」
「カーリン様!カーリン様はセブラン様の事をどのようにお考えでいらっしゃいますか?」
余計なお世話なのは分かってるけど黙ってなんていられない。カーリン様はおずおずと口を開いた。
「…私は… きちんとプロポーズして頂きたいと思っています。この身長に劣等感は感じますが、セブラン様だけは学生時代から一緒にいて劣等感が全く気にならない方です。でも友人としてしか見られていないのではないかと、ずっと寂しく思っておりました。」
「ずっと好きでした!!愛しています。スラリとしたその姿に一目惚れしたのです!どうか、私と結婚して下さい!!」
この場でプロポーズかよ!
カーリン様が嬉しそうだから良いか。
衆人環視の中での両思いのプロポーズは伯爵も無碍にはできないだろう。
「お兄様、私達の結婚を許して下さいますか?」
「…はぁ……仕方がない。お前の幸せ以上に大切な事はない。お前がどうしてもその男と結婚したいのなら認めよう。」
会場中が祝福の嵐。大変な盛り上がりで2人に踊れ踊れと囃し立てる。
大丈夫かな?