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1 迷子の子猫ちゃん

お読み下さりありがとうございます。

能天気なお話を楽しんでもらえたら嬉しいです。

「いらっしゃいませ〜!」


ここは獣人達の国の城下町。

仕立屋さんで働くボクは異世界転移して来た人間で16歳の男の娘!


カワイイ服を着てナンパ男を騙して遊んでいたら気持ちの悪い奴に目を付けられて追いかけられた。


身の危険を感じて路地を逃げ回っていたら、いつの間にかこの世界に迷い込んでいたんだよねー。


夢中だったから来た道も分からないし、向こうへの未練は服の秘蔵コレクションくらい。だからこっちで働いて可愛い服を手に入れられればそれで良い。


お金貯めてお気に入りだった服をオーダーで仕立ててもらうんだ!


で、お約束通り言葉が通じたけど字は読めなかった。この世界は言葉はどの国も同じだけど文字は地域によって違う。可愛さを武器に働くのも考えたけど水商売は賞味期限が短い。


特技が活かせる職業が良いよね!


そして狙ったのは経理。ソロバン教室に通っていたから特技は暗算!

字が読めないなら読み上げ算にすれば良いじゃん! と考えた。

そして好きな物に囲まれる職場といえば仕立て屋さん。こっちの世界に既製服は売っていないから、服屋といえば仕立て屋さん。


この職場はボクの幸運の賜物です!



----------------------------------------------------------




ここに来てすぐに声をかけてくれたロップイヤーのもっさりしたおじさんが、親切に役所に連れて行ってくれた。たまたま付けていた猫耳ヘアピンのおかげで人間だとバレずにただの迷子として扱われることになった。


周りを見るとけもみみだらけ。この世界で人間がどういう扱いを受けるか分からないから隠しておく。


親切なウサ耳おじさんが家に泊めてくれると言うので素直にお邪魔したら、いやらしいことされそうになったので簀巻きにしてやった。ボク見かけによらず強いんだよ。


恩を仇で返すような事してごめんね?

でもボク、身体を売る気はないの。恩返しをする気はあるからできる事があったら言ってね。

え? ダンスのパートナー? 踊った事ないよ。


「ダンスは教える。正装であれば問題ない。今からではドレスは借りる事になるが……」


ドレス!!

着たい! それならやる!


「よろしくお願いします!!」


もう手を出さないと約束させて拘束を解く。

ドレスはおじさんのお母さんのだからデザインが古いかも知れないと心配してくれたけど、クラシカルなドレスも良いよね。


夕食の前にお母さんに紹介してもらう事になった。

挨拶をしたらなんて可愛らしいお嬢さん!て抱きしめられた。あわわわっ! 付け耳取れる!!


「こんなに獣性が薄い子、まさか攫って来てたりしてませんわね?」


おじさんと同じロップイヤーのお母さんは俺を抱きしめたまま不穏な事を言う。ん? 獣性が薄いって何だろう?


「道に迷って困っていた所を助けていただきました。そのお礼にダンスのパートナーを引き受けたんです」


分からない言葉は後で質問することにして、おじさんをフォローする。

でも、まぁそうだったの、と余計に心配させてしまった。迷子だもんね。


お母さんはボクの話から、この国の文字が読めないほど遠くから攫われたのではないか、と思ったようだ。


それよりも。


「ドレスを着た事がないので、とっても楽しみです!」


サイズ直しも必要になるだろうと夕食の後にドレスを選ぶ事になった。楽しみ!

家も大きいし、普通にドレスがあるし、夕飯がフランス料理みたいで豪華だった。


おじさん、もしかして貴族とか?


「言ってなかったかな? 子爵だよ。貧しくはないが豊かでもない。文官で地味な仕事だからモテなくてね」


好きな人がいるんだけど伯爵令嬢だからあちらの家族が許してくれない、常々ダンスのパートナーすら見つけられない甲斐性なしなんて馬鹿にされてたから今回の話を持ちかけたんだ、と言われた。


……好きな人がいるのにボクにやらしい事しようとしたの?


「いや、その! 出来心というかヤケになっていたと言うか、自分が人の弱みにつけ込むような酷い人間だったら彼女を諦める事が出来るかも知れないって……、考えて……」


最後の方はほとんど聞き取れないくらいだった。


論理がおかしくなるくらいテンパってたのは理解したけど後ろ向きな発想がイラっとする。ボクにできる事ないかな? 考えて見よう。


「じゃあ、パートナーとして大切な事を伝え合おうね。ボクは千早。貴方の名前は?」


未だに名乗り合っていなかった事におじさんのヘタレ具合が現れている。


「セブラン=クロンクビスト、父が隠居したから子爵を継いだけどまだ27歳だ。チハヤは14歳にはなってるよね?」


……おじさんじゃなかった。


社交界デビューは14歳だそうでそれ以下だとパートナーとして連れていけないんだって。ボクは16歳です!!


14歳に手を出そうとしたの!?


Yes ロリショタ No タッチ!


ダメだからね!!


お母さんの部屋に行ってドレスを見せてもらう。デビュタントに着たと言うドレスは上品なピンクのシフォンを重ねたふりふりのスカート。上半身はキャミソールのようになっていてオフショルダーで胸に大きなリボン、腰回りとスカートのあちこちにバラの花が飾られている。肩ひもはキラキラとした宝石のような物が付いている。


「これを着て欲しいわ」


そんな大事な物を貸しちゃっていいの!?


「孫に着せたくて取っておいたけど古くさいって言われそうだもの。きっと新品を欲しがるわ」


それは確かに否定しきれない。


「ボクこんな素敵なドレスが着られるなんて夢みたいです……」


うっとりとするボクにお母さんは嬉しそうに侍女を呼んだ。サイズが少し大きかったので調節してもらうためだけどここで初めて男だと気付いたようだ。おへその位置が男女で違うんだって。しっぽがない事も驚かれた。


靴はこのドレスに合わせて作ったのがぴったりだった。ドレスは大きめ靴はぴったり。男女の差かな? 小物はお母さんにおまかせになった。娘ができたみたいで嬉しいと言ってくれた。ボクも嬉しい!


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