"ただいま"の言葉と共に
創作お題bot(@asama_sousaku)より
『"ただいま"の言葉と共に』
君と別れてから数年がたった。
僕はあの後祖父の家で過ごす事は出来た。父親もなんだかんだで仕事が忙しかったらしい。僕はほぼ一人暮らしのような生活をしていた。僕が成人する一年前に祖父は亡くなってしまった。祖父の最後には僕一人がついていたが、祖父は笑って息を引き取っていった。僕はそれを見て思った。
...僕も君と一緒に笑って死んでいきたい...
君の事を。君と一緒に生きていきたい。そのためには僕の生活を安定させなければ、君を迎えに行くことは出来ない。
一人気持ちが憂鬱になった時は最後に撮った写真を見て、君をいつか迎えに行く事の決意を固めていた。
さて、僕はやっと君を迎えに行く準備が全て完了した。でも僕は君がいる所を知らない。君の実家を訪ねて聞くしかないだろう。覚えているのかは確かではないが。
~*~*~*~
...懐かしい。君と歩いた通学路。一緒に帰ったらあの日。君はなんだかんだで僕に優しかったね。
通っていた公園を越えれば君の家は直ぐそこだ。
懐かしさに心を飛ばしているうちに君の実家についた。君のおとうさん、おかあさんがいるかは分からない。それでも君を迎えに行くための第一歩だ。
そうして僕はインターホンを押す。
「はい。どちらさまですか?」
出てきたのは君のおかあさんだった。
「すみま...「迎えにきてくれたのね?」
...なんで君のおかあさんが知ってるんだ?
「なんでって顔をしているわね。あの子が帰ってきた後、泣きながらあの子教えてくれたの。いつか、あなたが迎えに来てくれるって。泣きながら楽しそうに話していたわよ。取り敢えず家の中に入りなさいよ。お父さんもいるからね。少し話しましょう?」
...君の両親はいい人だ。僕にはもったいないぐらいだ。
そうして僕は家の中に入って行った。
~*~*~*~
いきなり君のおとうさんが話しかけてきた。
「おう、ひさしぶりだな。うちの娘を迎えに来た王子様ってか?いいねぇ、若いねぇ。娘の事頼むぞ。あの子は別れてからあなたの事ばかり言っていたからな。また泣かせたらただじゃ置かないぞ!娘を持ってけぇ!」
...会って直ぐにそこまで言われるとは思っていなかった。
「ありがとうございます。僕は娘さんをもらって行きます。ですが、結婚は出来ません。僕たちは同性愛者です。法律的には結婚は出来ません。それでも良いのですか...?」
僕は聞く。結婚は出来ないから。君を一生法律的には独身のままにさせるから。
「うん?そんなことか?そんなことはどうでもいいんだ。娘が幸せになったらそれでいいからな」
...おとうさん...
思わず涙が出てきた。
「ぐすっ...ありがとうございます...ありがとうございます...」
僕は少し泣いてしまった。
「いいんだ、いいんだ。娘と一緒になったらあなたも俺たちの娘だ。胸張って生きていけ!困ったらいつでも頼ってくれていいからな」
本当にありがとうございます...
「それはそうとあの子がそろそろ帰ってきますよ?」
ん?帰ってくる?
「そうだったな。あなたも一緒に待つかい?」
...どういう事だろう?
「どういう事ですか?彼女は仕事なのでしょう?帰ってくるって...?」
君のおとうさんははっとした。
「あぁ、あの子はね仕事の出張があったらお土産を持って帰ってくるんだ。その時に家に帰ってくるからね。帰ってきた一日は泊まってから一人暮らしの家に帰るんだ。だからあの子をここで待つかい?」
...そういうことなら...
「待たせて貰います。彼女の驚く顔を見たいので!」
~~~~
私は歩いていた。今日はやっと出張から帰れる。
そう思えばさっきお母さんから「早く帰って来て」とか言われたけれどどうしてだろう?私は疑問に思いながら歩いていた。
中高生が話ながら歩いていく。
...ふと貴女の事を思い出す。
別れてから数年がたっているが連絡も何もない。
.....貴女は忘れてしまったんだろうか?
!私はなにを思っているのよ!思わず首を振る。
スマホを開き、あの時最後に撮った写真を見る。
......よし!取り敢えず家に帰って休もう!
そんなことを思っていたらいつの間にか家の前だった。
家の扉を開く。
「ただいま。...あれっ?」
いつもよりも靴が一つ多い。
私は疑問に思いながらリビングに向かう。
リビングの扉を開く。
「ただ...いま...」
......目を疑った......えっ.....
そこにいたのは。
貴女だった。
「やぁ、元気だったかい?」
私は手に持っていたお土産の紙袋を落とした。
バサッ!そんな音がしているが気になんてならなかった。
「......え...っ...」
貴女は私に向かって話してくる。
「驚き過ぎて言葉が出ないようだな?」
貴女はソファに両親と一緒に座っている。
...何この状況...
「えっ、えっ!な、なんで貴女がここにいるの!?」
貴女はやれやれと言ったような眼差しで言ってくる。
「はぁ...酷いやつだな君は。僕がここにいるということは君を迎えに来たのさ。もしかして僕がいらないとでも?」
...むっ...ひさしぶりとは言え酷い言い様...
「そんなわけないじゃない!一体何年間待ったと思っているのよ!貴女がいらないなんて言わないじゃない!絶対に貴女だから必要なのよ!」
貴女は面食らったような顔になり言う。
「そこまで言ってくれるなんてね...ありがとう。ここまで待ってくれて。やっと君と一緒にいれる。約束を果たしてくれるかい?」
...馬鹿なことを言うのね。そんなの「はい」しかないじゃない。
私は貴女に近づいて話す。
「はい。当たり前よ。貴女に約束を果たしてもらわなきゃね?」
私は貴女に抱きつく。
「ありがとう、迎えに来てくれて。ありがとう、約束を果たしてくれて」
「いいや良いさ。僕もありがとう。約束を覚えていてくれて」
私たちはクスリと笑う。
私は言っていないことを思い出す。
「"ただいま"」
貴女は言う。
「"おかえり"」
私たちは笑いあった。
あの後私たちは一緒に暮らしている。
結婚は出来なくてもこれから二人でずっと一緒にいれる。
それだけでも幸せだ。
これからも笑い合って過ごしていこう。
貴女と離れる事はもう無いのだから...
読んでくださりありがとうございます。
これが最後のお話になってしまいました。
ハッピーエンドにはなったと思います。
「僕」と「私」を巡るお話でしたが僕も私もこれから幸せだといいなと私自身も思っています。
このお話が読んでくださった方の何かに成ればいいかなと思っています。
もちろん楽しんでいただけたら一番最高です!
ありがとうございました!