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さぁ、お別れの時間だよ

創作お題bot(@asama_sousaku)より

『さぁ、お別れの時間だよ』



「はぁ!?何言ってるのよ!」

私は叫んでしまった。

「すまないが...うるさいよ...」

あっ。叫びすぎてしまった。

「ごめん...」

ここは私の家。私の家に貴女が遊びに来たと思ったら、いきなり家族に会わせてくれと言う。

一応貴女が私の家族に会ってはいるけれどそれは『友達』としてだ。『恋人』としては会ってはいない。そうして会うと私の家族が理解してくれるとは思わないからだ。

私は貴女の手を握る。

「なぁ...いつかは言わないといけないだろう?」

...うん。それはわかっているよ。

「でも!私は否定されるのが一番怖いよ...」

私は怖い。家族に否定されるのが。

「家族にかい?」

私はうなずく。貴女の手を放す。

「もうお母さんが帰って来るから一応連絡しておくね。貴女が来ている事を」

取り敢えず言って置かねば。流石に怒られる。

「わかった。おばさんにあいさつはするからな」

えっ!私はバッと顔を上げる。

「大丈夫さ、普通の『おはよう』とかのあいさつさ」

はぁ...なら良かった...

そうして私はお母さんに電話をする。

「もしもし。お母さん?...うん。それとあの子が来てるから。...うん。...はぁ!!えっ?何よ!...ちょっとお母さん!お母さん!!」

耳元からは切られた音が。

「どうしたんだい?さっきから大声出して?」

...うん。マズイかも...

「ちょっとマズイ事になっちゃたよ。私のお母さん、私の『彼女』を紹介してくれって...」

「...は?ちょっと待て!なんで君のお母さんが付き合っていることをわかっているんだ!?」

貴女に肩を掴まれて揺すぶられる。

...いやぁ...私に聞かれても...ていうか、気持ち悪くなるよ...

「分からないよ...なんか気付かれたのかな...?」

...ごめん...分からないよ...

貴女は私の肩から手を放す。

「うん。腹を括ろう。仕方がない。言おう」

...うん。そうしよう。言おう...

「そうだね。何故か分からないけれどバレてるなら言おうか...」

怖いんだけど...嫌だなぁ...

私は俯いてしまう。貴女の視線を感じる。

「大丈夫さ。どうにかなるさ。君の家族だろう?わかってくれるよ」

...そうだといいな...

 ~*~*~*~

そうしてお母さんが帰ってきた。

今、お母さんと私たち二人が対面している。

...何この気まずい雰囲気...

「単刀直入に言うわ。あなたたちは付き合っているのね?」

貴女が口を開き始める。

「はい。そうです。僕たちは付き合っています」

...はっきり言うんだね。そうして貴女は話を続ける。

「確かに僕は同性愛者です。それでも僕は彼女を好きで居続ける自信があります。自信過剰と言われればそれまでですが」

...うん。凄いバッサリだね...というか聞いた事のないこと言われてるよ...恥ずかしい...

「あなたはそうなのね。同性愛者か...私はいいと思うけれどね。あなたたちが幸せに過ごしていけるのだったら私は大丈夫よ」

...はっ?お母さん...そんな事を言うなんて思ってなかったよ。

「へっ?あの...おかあさん?えっと...」

...貴女も戸惑っている。確かに私のお母さんがこんなこと言うなんて思ってもいなかったから。

「お母さん...?いいの?」

私は聞いてしまう。疑ってしまう。

「ん?私は良いわよ。さっきも言ったけれどあなたたちが幸せだったら良いのよ」

...何も言えなかった。

「...ありがとうございます...」

貴女は少し泣きそうにしていた。私は貴女の背中をさする。

「ありがとう...ありがとう...」

貴女は本格的に泣き出し、私に抱きついてきた。

「うわっ!大丈夫?良かったね。泣かないでよ~」

うわぁぁぁぁんと貴女は泣いていた。

 ~*~*~*~

そうして貴女は少し泣き止んだ。

私は貴女の頭を撫でていた。

「大丈夫?泣き止んだ?」

そうして貴女は顔を上げる。

「うん...ありがとう...」

そう思えばお母さんはいつの間にかいなくなっていた。部屋に戻ったのかな?

「そう。なら良かった」

「ありがとう。なんか君のお母さんが僕のお母さんに見えてきたよ。目の錯覚かなぁ...」

...別に私のお母さんを貴女のお母さんだと思ってくれていいよ。

貴女の家族は仲があまり良くないらしい。貴女は家族の事は普通だとは言っていたけれど実際の所寂しかったのかもしれない。私の想像なのであまり大した事は言えないけれど。貴女が私たち家族の事を思ってくれたらいいな。

「取り敢えず、今日あなたも夜ご飯食べていくー?」

お母さんが急に声を張り上げて呼んでくる。

私たち二人は物凄く驚いてしまった。二人でクスクス笑っているとお母さんはリビングに入って来て言った。

「仲が良いわね。取り敢えずあなたは夜ご飯食べていくかしら?」

貴女はなんて言うのだろう?

「...分かりました。一緒に食べていきます」

「そう。なら良かったわ。食べていかないと言ったら無理矢理食べさせようと思っていたからね」

...お母さん...

「いえいえ。おかあさんの料理も食べていきたいですから」

...丁寧だなぁ...

「あらっ!ありがとう。それじゃあ用意をしてくるわ。待っててね」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

うわぁ...凄いなぁ...言葉使いしっかり出来るんだぁ...

私は耳元で貴女に聞く。

「失礼だけどそんなに丁寧に言葉使い出来たっけ?」

うん。そうとう失礼な事聞いたと自分で思う。

「あぁ、この言葉使いかい?昔両親に教えてもらっんだ。やっぱり覚えてるものだな...」

...ごめん...

「ごめんね。なんか聞いちゃいけない事聞いちゃったかな?」

私は心の中で何回も謝る。

「いや、大丈夫だよ。幸せだった時の話さ。あの頃は良かったからね」

「そうなの?それじゃあお母さんが作り終わるまで幸せだった時の話を聞かせてよ。出来る範囲でいいから」

貴女の事も知りたい。だから私は恐れずに聞く。

「ああ。いいさ。それじゃ、たしか四歳の頃だったかな...」

そうして私は貴女の事を聞いていた。

 ~*~*~*~

「用意が出来たわよ~!」

お母さんが声をかけてくる。

「よし。行こう」

「そうだね。お父さんや兄さんがいると思うけれど...私たちの事を言うの?」

貴女は少し考えて言った。

「...言うよ。否定されようが君の事好きだからさ」

...ありがとう。なんか怖くないや。

「さぁ、行こうか」

私たちは決戦のように席に着いた。

私たちは隣に座った。

私の前は兄さん。貴女の前はお母さん。お母さんと貴女の間にお父さんが座っている。

「食事前だがどうしたんだ?お母さん?」

「この子が話したい事があるんですって」

...ゴクリ...私たち二人は生唾を飲んだ。そうして貴女は話始める。

「唐突ですが僕は貴方の娘さんと付き合っています」

...うん。思い切りが大事だね。

「...は?なぁお母さん。この子が言っている事は本当かい?」

...お父さん...なんか信じてないね...

「ええ。そうですよ」

「そうなのか!?それだったら結婚とかどうするんだ!まず結婚出来るのか!?」

...お父さん...気が早いよ...

「すみません、僕は彼女をずっと好きで居続ける事が出来ます!」

ありがとう...

「そうか...それな「はぁ!?妹が同性愛者!?」

...ヤバい...兄さんが乱入してきた...

「ふざけるな!俺の妹が同性愛者なんて認めないぞ!そんなよく分からない女なんかに妹はやれるか!」

...始めの同性愛者は良かった。『よく分からない女』?貴女の事かしら...?私は兄に対して大切な人をけなされた怒りが爆発した。

「なに言っているのよ!!兄さんに彼女の事が分かるとでも!?彼女の事を何も知らない癖に知ったような口を聞かないで!!」

私は怒りのまま兄さんを殴りそうになった。しかし貴女は私を止めた。

「...暴力は止めてくれ...話し合いで解決しよう」

私はハッとなって止まる。兄さんもお父さんとお母さんに止められて渋々席に着いている。

「それじゃあ聞こうか?その人からアプローチしてきたのかい?」

...嫌な言い方...私は貴女が言おうとしているのを止めていい始める。

「そうよ。彼女からアプローチしてきたわ。それでも私は良かったから一緒にいたのよ」

...あぁ、心底イライラする。貴女の事をけなし、仕舞いにはお父さんでもないのに聞いてくる。

「僕は彼女が好きなだけです。それだけでは駄目なのですか?」

貴女が兄さんに聞く。

「ああ。俺は嫌だね。しかもあんた、何か犯罪を犯したことがあるんだろう?」

...なにそれ...貴女はそんな事をしていない...そう思いながら貴女を見ると...

顔面が蒼白だった。えっ!

「どうしたの!?ねえ!ねえ!」

私は貴女を揺さぶった。けれども反応がなくて私は貴女を揺すぶるしかなかった。

「...あ...あぁ...うわぁあぁぁあ!!」

貴女は私に揺すぶられているにも関わらず凄い力で私の首に手をかけた。

うぐぅ...どうして貴女は泣いているの...わ...私を...

視界が暗くなった。

 ~*~*~*~

...ここは?目を開き私は立ち上がる。現実世界では無さそうだ。

「ここは...?」

「ここは君の心の世界だよ」

...私の心の世界?なんですかそれ?

「ここは君の反省の世界なのさ。君は何をしたんだい?」

...私は...私は...?何をしたんだっけ?

「思い出せないようなら現実世界には帰れないよ?」

...私は...私は...

「さぁ、思い出せ。君は何をしたんだい?」

私は...貴女を好きになった...事...

「そうだ。君はその子とどうしたい?」

私は...貴女と一緒にいたい...

「そうか。それじゃあそれをその子に伝えな。喜ぶだろうよ」

...あ、あなたは...

「ん?僕は...」

私はあなたの答えを聞く前に視界が白くなった。

 ~*~*~*~

ん...ここは...貴女は!?

私はいきなりがばりと起き上がった。

「うわっ!大丈夫か?」

お父さん...お母さんと兄さんが心配そうにこちらを見ている。

「今は私の事はどうでもいいの!彼女は!どこ!?」

お父さんは私から目を反らした。

「あの子は首を絞めてから何かに気がついたように『失礼します』と言ってからこの家を出ていったよ」

...マズイ。『何かに気がついた』それは私に関係する事だろう。私は立ち上がって外に出る準備をする。

「待て!もしかして追いかけるのか?あんな奴を?妹の首を絞めた奴を!?」

「うるさい!兄さんには関係ないでしょう!これは私の意志。私が決めた事なの!口出ししないで!」

私大声で叫ぶ。そうするとお母さんが台所から出てきた。四つのおにぎりを持っていた。

「 ちょっと待って。あの子にもあげなさい。いってらっしゃい」

「おう、いってらっしゃい」

...お母さん、お父さん...

「ありがとう!いってきます!」

そうして私は家を飛び出した。

 ~*~*~*~

私は走る。貴女のもとに。

...こういう時、貴女はどこに行くのだろう。家?それはないかな...公園かな?取り敢えず行かないと...!

「どこ...どこにいるの...!」

私は前に話した事のある公園に入った。

そこのベンチに貴女は座って頭を抱えていた。私は貴女に近づく。貴女は私に気がつかない。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい...ぼ、僕じゃないよ...僕じゃない...」

トラウマを思い出してしまったのだろうか?私は何も言わずに抱き締める。

「...!嫌だ!嫌だ!抱き締めないで僕に優しくしないで!」

貴女は私から逃れようとする。

...何を思い出しているのだろう?私はわからないがこれだけは言える。

「大丈夫。私はどこにも行かないよ。貴女が大好きよ」

貴女は正気に戻り始めたのか何かぶつぶつ言い出した。

「...僕は...私は...僕は...」

貴女の抵抗は徐々になくなっていった。

「落ち着いた?」

「すまない...僕は...」

貴女が何か言おうとしているが私は止めて話始める。

「ねえ、おにぎり食べない?」

「...食べる...」

貴女に出したおにぎりを渡す。

「ねぇ、聞いていいかな?犯罪を犯したとかっていうのは...?」

貴女は一つ目のおにぎりを食べてから喋り始める。

食べるの早いな...

「それはあながち嘘じゃない。僕は犯罪を犯しかけた事があるからね...」

...そうなんだ...貴女は語り続ける。

「それはね、父親を殺しかけた事かな。あの頃僕は今以上にヤバかったからね。自分で言うのもおかしいけれど」

...貴女は大丈夫そうに話しているけれど本当に大丈夫なのかな?

「...抱き締めていい?」

私は聞く。これが貴女にしてあげられる精一杯の事だから。

「なんで聞くんだ。そっちの方が恥ずかしいじゃないか。...まぁ...良いけれど...」

よし。許可はもらった。私は思い切り貴女に抱きつく。

「うわわ!いきおい良く抱きつかないでくれよ!おにぎり落ちるだろう?」

むっ...おにぎりの方が大切なの?

「どうしたのさ?顔が不機嫌になってるぞ」

貴女が悪いんでしょう...

「なんなのさ?言ってくれないと分からないぞ」

...むっ...なら言ってやらない!

「言わないよ。貴女が分かってくれないなら」

貴女は驚いた顔になった。私がここまで言わないことも始めてだしなぁ...

「えぇ...だから分からないさ...教えてくれよ。ちゃんと言葉に出して言ってくれよ...」

うぅ...くすぐったい。私の耳元で囁かないで。かっこいいと思っちゃうじゃない。

「それじゃあ、僕から抱き締めたら許してくれるかい...?」

だから、耳元で話さないで...許しちゃいそうだよ...

「......ぃぃょ......」

小声で言ったのだが貴女には聞こえたようだ。

「そうか。なら良かった」

貴女は私を抱き締めて笑う。

少しの間私たちはずっと抱き締めたままでいた。

「...私の家に行く?」

聞いてみる。兄さんには否定されてしまったが、お母さんとお父さんなら大丈夫だろう。

「君の両親にあいさつだけしてもう家に帰るよ。そっちの方がよさそうだしね」

...ごめんね...

「ごめんね、兄さんが...」

貴女はそれを聞いて首を振る。

「いいや、大丈夫さ。君の兄さんには否定されるとは思っていたからね。なんかきつそうな性格をしてそうだったからな」

...初対面でも兄さんはよくそれを言われているよ...

「本当にごめんね。取り敢えず私の家行って、貴女の家に私が行ってもいい?」

私は貴女と少しでも一緒にいたい。

「君の両親が良いと言ったらな...君の兄さんは除くが」

あはは...そうとう兄さんの事嫌いになったな...

「まぁ、取り敢えず戻ろうか」

「そうだね」

私たちは私の家に向かって歩いていった。

 ~*~*~*~

「ただいま~」

私は声をかける。

「おかえりなさい」

お母さんが声をかけてくる。

貴女が話始める。

「すみませんでした。娘さんを傷つけてしまって。取り敢えずお礼だけ言ってから帰ろうと思います」

それを聞いたお母さんは残念そうな顔で、

「そうなの。分かったわ。それであなたはどうするの?」

...私は...

「私は彼女の家に行きたい。明日の朝には帰るから行ってもいいかな?」

お母さんは少しお父さんと話をしてから言う。

「ええ。いいわよ。そうでしょう?お父さん?」

「ああ。いいぞ。それとなさっき言おうとしたが息子に邪魔されてしまったからな。好きで居続けるならそれでいい。娘が幸せならそれでいい。ただし!娘を泣かせたらただじゃおかないからな!」

...お父さん...

「分かりました。頑張ります。好きで居続ける自信はあるので!」

ありがとう...

「ありがとう。私荷物だけ取ってくるね」

「分かった。待ってるから」

貴女は少し微笑んだ。...だからいきなりの笑顔は反則だって!

そう思いながら私は荷物をさっさとまとめて小さなリュックにまとめる。

急いで階段を降りて貴女のもとへ行く。

「よし。じゃあいってきます!」

「行こうか。今日はありがとうございました。これからもよろしくお願い致します」

貴女は丁寧にあいさつをして私と一緒に出ていく。

お父さんとお母さんはこちらに手を降って「それじゃあな~」と言っていた。

 ~*~*~*~

私たち二人きりで貴女の家に向かう。

歩いているうちに貴女は手を繋いで来たので私も繋ぐ。貴女の手が温かい。

私たちは無言で貴女の家に向かった。

この無言が私には幸せだった。

 ~*~*~*~

貴女の家に着いた。

「お邪魔します」

貴女の一人暮らしの家といえどもあいさつぐらいしっかり言わなきゃ。

「取り敢えず眠い...」

...えっ!ちょっとまだ、寝ちゃダメだよ。お風呂にも入っていないじゃない。

「...疲れた...君と一緒に寝たい...」

...もう、仕方ないなぁ...私は貴女を引きずりながら寝室へ行く。

もう服は着替えられないのでそのまま貴女をベッドに投げた。

「ぐぉっ!く、苦しいな...」

当たり前でしょう。投げたのだから。

「もう服は着替えられないから、そのまま寝ようね。私は貴女の隣で寝るから...おやすみ」

私は貴女の頬に口付けを落とした。

貴女が反応する前に布団に潜り込んで寝てしまった。そのあとの貴女の反応は知らない。

 ~*~*~*~

ピチチ...

ふぁぁ~よく寝た...私はベッドから立ち上がって伸びをしようと思ったらいきなり声がかかった。

「なぁ...昨日のは反則じゃないか?」

私は首をゆっくり後ろへ回した。

貴女がベッドの上に座っていた。こちらを軽く睨みつけて。

...昨日って?私何かしたかな...?

「おいおい、止めてくれよ。何をしたか分かっていないような顔は...」

貴女が近づいてくる。えっ?な、何...?

「そんな顔をしている君にお仕置きだ」

貴女は私の頬に口付けをした。

...ひゃっ!ちょ...ちょっと...

「君のそんな顔を見れたなら満足だ」

...ひどいよ...なんでそんなに可愛い顔で笑うの...

というよりも隈...酷くない...?

「ねぇ...隈...大丈夫...?」

貴女は目を見開いていった。

「全然大丈夫じゃあない!昨日ので眠気が吹き飛んで寝れなくなったんだぞ!寝る前にしないでくれ!」

あぅぅ...ごめん...

そんな事をしていると電話がかかって来た。

「あぁすまない僕の携帯だ。ちょっと待っててくれ。...もしもし...ああ...はっ?祖母が!?なんで早く言ってくれないんだ!!...はぁ?なんでそんなことしないといけないんだ!それは嫌だ!...は?母さんも!?なんで親父はそんな大切な事を先に言わないんだ!あんただけ残ったのか?なんで言わないんだ!それはいつあったんだ?...はぁ!?2ヶ月前?葬式も終わった?なんで僕を最後に会わせてくれないんだ!!会わせるな?お母さんはともかく祖母は言わないだろう?その判断はあんた一人だけでしたんだろ。それじゃああんたの判断じゃないか!だから引っ越せ?それは嫌だと言っているだろう!はぁ?今日来る?そんなこと早く言え!おい!おい!...切られた...くそっ!なんなんだよ!」

...返答から察するに...お母さんとお祖母ちゃんが亡くなったの...?

「ねぇ、私がここにいても良いの?」

貴女はぶつぶつ言っていたが私の声かけではっとなっていきなりこちらを見た。

「なぁ...もしかしたら引っ越しをしないといけないかもしれない。僕は嫌だが親父の事だからむりやりでも引っ越しろとでも言われそうなんだ...君はそうなったら大丈夫なのかい...?」

...嫌だ...嫌だよ...

「......嫌だよ...貴女と離れたくないよ!一緒にいたいよ...」

「...僕だって離れたくないさ...だけどね親父はトラウマなんだ...逆らったら...僕は僕でいられなくなってしまう...どうすればいいんだ...」

...お父さんを殺しかけた事と繋がっているんだろう。これに関しては私は何も言えない。それなら提案をするしかない。

「お父さんといるのが嫌なんでしょう?それじゃあお祖父さんの元に行けばどうかな?」

貴女は考えている。

...この提案は大丈夫だったのかな...?

「...それならギリギリ認めてくれるかもしれない。僕が言えるかどうかになるのだけれど...」

...私がついてあげる!

「私がついてあげる。私は部外者になってしまうから言えないよ。だから力を貸してあげる!」

貴女は驚いた様子だ。

「良いのかい?僕は何も出来ない奴だぞ?」

...むぅっ。貴女はまたそうやって自分を卑下する!

「自分で出来る事をちゃんとしなきゃ!貴女が一歩踏み出す為に私が力を貸すのよ!」

ここまで言えば大丈夫だと思うよ...

「...分かった。僕、頑張るよ!ありがとう!」

...ありがとうと言うのはまだ早いと思うよ...

 ~*~*~*~

そうして貴女のお父さんがやって来た。

「久し振りじゃねえか。そこの女の子は誰だ?」

...うわぁ...なんか貴女に似ているけれど全然違うよ...

「僕の彼女さ。文句は言わせないよ」

貴女のお父さんは鼻で笑った。

「ふん、そうかよ。そんなこたぁどうでもいい。引っ越しの覚悟は出来たかよ?」

...いきなりだな...

「僕が出来たとでも言うと思う?嫌だね!このまま一人暮らししてる方がよっぽど大切さ!」

...なんか貴女のお父さんの雰囲気がヤバそうだけど...

「そんなもん知るか!彼女だっけなぁ?そんなこたぁ放っておけ!引っ越ししないと分かってんだろうなぁ?」

貴女が震え始めた。

私は貴女の手を握る。貴女は力強く発言する。

「彼女の事を馬鹿にするな!引っ越し?しないさ!彼女といている方が幸せさ!あんたなんかといても幸せになんかなれないさ!」

「ふざけてんのか!同性愛だろうが何だろうがお前は幸せなんかにはなれないだろうな。引っ越しの準備をしろ。お前の彼女がどうなってもいいんだったらな...」

...この人には私たちは勝てない。今それが判明した。

それなら!私は貴女にお祖父さんの事を言うように言った。

「...親父...引っ越しはする。だけど、祖父の所に行くのは駄目かい?」

...貴女のお父さんはなんて言うのか...

「良いぞ。ただし言うことを聞け。それだけなら認めてやろう」

...条件付き...私は貴女を見た。貴女は無表情だった。

「分かった...行くから約束は守ってくれよ」

...どうなんだろう...貴女のお父さんが約束を守るとは思えないけれど...それでも私は何も言えない。

「そうだ、それとな引っ越しの準備は一週間以内にしろ。そっちの方が都合がいいからな。一週間後来るからかな。このマンションの大家とも話はつけとく」

言いたい事だけ言って貴女のお父さんは出ていった。

 ~*~*~*~

貴女はお父さんが出ていっても少しの間フローリングに座りこんでいた。

「...これからどうするの?」

私は残酷だろうが貴女に聞く。

「...準備をするよ...」

そうだろうね...そうして貴女は立ち上がる。

「なぁ...僕は引っ越ししてしまったらもう会えないと思う。だから未練がましいのは嫌だから別れてもらっていいかな...」

...むっ!何だって!そんなこと許さない!

「それは嫌よ!会えないだろうが私は貴女を好きで居続ける!私は貴女が会いに来てくれるまで待ってるから!その時まで...!」

貴女は呆然となっている。貴女は私がこんなことを言うなんて思っていなかったのだろう。

「それだと...僕は未練がましくどこまでも君を追いかけるよ...恐らく成人しても。それでも君は良いのかい?僕を忘れると言う手もあるんだぞ?」

...誰が貴女の事なんか忘れるものか!

「忘れないよ!貴女の事を!貴女が好きにさせたんでしょう?その責任すら取らずに忘れろと!?ふざけないでよ!私はもう貴女の事が大好きなのよ!絶対忘れない!そこまで貴女が言うのなら私が追いかける事も出来るのよ!」

「...そ、それは嫌だなぁ...それなら僕が追いかけたいよ...ごめんよ...君がここまで言ってくれると思っていなかったんだ。それだったら待っててくれないか?いつか君を見つける。僕と暮らせるようにするから」

...それなら良いよ。

「それなら私は待つね。貴女が来るのを待ってる。ずっと待ってるから」

貴女は微笑んだ。今にも消えそうな笑顔で。

「分かった。約束だな。指切りをしよう。僕はそれで乗りきって行くよ」

私は右の小指を出す。貴女も右の小指を出す。

私たちは指を組み合う。

『ゆーびきりげんまん うそついたらはりせんぼんのーますゆびきった!』

「ありがとう。これで僕は信じ続ける。さぁ、お別れの時間だよ。僕たちが成人するまで会わない。さぁ、君は行くんだ」

...最後にしたいことがあるの。私は貴女に抱き締めた。

「ありがとう。私は最後まで待ってるから。ずっと。いくつになっても。私たちは会わない。それで良いよね?連絡も取らない。でも、写真だけは一枚だけ撮っても良いかな?私たち全然写真は撮ってなかったから」

...貴女は大丈夫かな?

「分かった。二人で撮ろう。それじゃあ僕が撮るよ。でも送った後に連絡先を消してくれよ。意味ないからさ」

分かったよ。送られてきたら連絡先は消す。

「ここまで近づいたらいい?」

「ああ。撮るぞ」

パシャ。一枚貴女が撮る。

「これでいい。送るぞ」

ピロリン。貴女から送られてきた。何回かに分けて写真を保存する。

「消してくれ」

...うん。分かった。そうして二人で目の前で消す。

「これでいいな。それじゃあ君に行ってくれ。未練が出来てしまうからさ」

...分かった...行くよ。

「ありがとう。私は待ってるから!絶対だよ!」

私は出ていく。そうして貴女は一言。

「ああ。約束は守る」

そうして私は貴女の家から出ていった。

 ~*~*~*~

あの後、一週間後に貴女が学校をやめて引っ越して行った。

その後の貴女の行方は知らない。


...だけど私は貴女の事を信じている。


誰が何を言おうとも。


貴女を信じて待っている。

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