君が僕を殺す夢を見た
創作お題bot(@asama_sousaku)より
『君が僕を殺す夢を見た』
「ねぇ、いきなりだけど今日、君が僕を殺す夢を見たよ」
放課後、僕たち二人だけの教室で声が響く。
君は固まっている。そりゃあそうか。急にこんなことを言われたら僕でも固まるか。
「えっと...私は殺さないよ。貴女の事」
驚いた事が残っているのかぎこちない笑顔で僕に言ってくる。
「顔が固まったままだぞ。説得力の欠片も無い顔だな」
君はさらに固まった。...怒ったか...?
「貴女はまたそういう事を言う。ひどいね。どれだけ私を弄ったら気がすむの?」
あっ...これは怒ったな...
君は怒った時に無意識に笑顔になっている。
「えっと...すまない...怒らすつもりはなかったんだ。ただ夢を見た事を言ったらどうなるかと思っただけなんだ」
僕は正直に言う。これ以上君を怒らすのは得策じゃ無い。
「...そう。それなら良いけれどね。でも前に話した終末思想の話とは全く思っている事が逆じゃない?」
そうなんだよな...何故か僕が思っている事が逆になっている。
「確かに逆になっているとは思う。どうなのかがよく分からないけれどさ」
僕は君と死にたいから、君に殺されたいわけじゃないのさ。
「でも、貴女は心の奥底で私に殺されたいとか思っているのじゃないの?」
...どうなんだろうな...僕は...だけど僕は君に殺されたいわけじゃなくて出来るのだったら僕が君を殺したいよ。
「僕は...殺されたいわけじゃないよ。君を殺したいのさ」
君はどんな反応をするのかな?
「...そう。貴女ならそう言うと思ったわ。あの話から私考えたの。私は幸せに死にたいと言ったよね?」
「ああ。そうだね」
僕はうなずく。
「だから幸せに死ねたら、殺されても良いのかなって。貴女はそれを許してくれなさそうだけど」
...そうか。君は僕以外の人間に殺された時の事を言っているのか。
「ありがたいよ。君がそこまで言ってくれるなんて。君は僕を殺せると思うかい?」
さて、君を試してみよう。どんな反応があるかな?
「ん~、私が貴女を殺す事か...私は貴女を殺さないと思うよ。むしろ貴女に殺されたいから、殺さない。矛盾しているような言い方になっちゃったけどそういう事だよ」
...ふぅん。そうか。僕に殺されたいのか。光栄だね。今すぐ殺してあげたいぐらいだ。
「...本当に嬉しい事言ってくれるよ。君は本当に僕に殺されて良いのかい?」
僕は訊ねる。君の言葉が聞きたくて。
「うん。良いよ。だけど今すぐは止めてね」
「はぁ...」
はぁ。そりゃあそうか。流石に無理か。
「ため息出てるよ。そんなに殺したかった?」
そりゃあそうさ。これが一種の恋煩いか。まぁ君には言わないけれどね。
「殺したかったよ。今は諦めるさ。いつかがいつ来るだろうね?」
問いかけても分からない。僕にも君にも分からないか。
「どうだろうね。私にも分からないなぁ。その時は任せるね」
「よし!僕に任せとけ!!」
僕は張りきってしまう。
「張り切るねぇ~ありがとうね」
よし帰るか!!
「帰ろうか」
君は言う。
「そうだな。帰ろう」
「テンション高いねぇ~」
そりゃあ高くもなるさ。
「ほら、行こう?」
「ああ。帰ろう」
僕たちは出ていく。
吹き込んだ風に乗って揺れるカーテンを僕たちは知らない。