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私と会話
生死の境。
そこを行ったり来たり。
「初めまして。カオリ。」
「初めまして。やっと話してくれたね。」
「カオリはね、カオリだよ。君の母親でもないし、この男でもないよ。それはわかるよね?」
「うん。」
「悲しいね。」
「うん。なんだか懐かしい気持ち。」
「私は味わったことないな。私はカオリじゃないから。」
「じゃあ誰?教えてよ。早く言って?私に聞かせて!あなたの声が聴きたかったの。それだけのために、私は今まで生きてきたんだよ!・・・お願い。聞かせて。ただ、あなたの話が聞きたいだけなの。」
気が付くと、カオリは死んでいた。
カオリが何を聞いたのか。
わからない。
冷たいカオリ。
びしょびしょに濡れたカオリ。
泣いている気がした。
フトシはとぼとぼと夜道を歩く。