導き
手紙の内容。
『君は間違っている。スバルと別れるべき。
今日の19時。校内のカフェに呼び出して、別れを告げなさい。
そうすれば、君は正しい方向に向かう。
君の一部より。』
カオリはこの言葉に突き刺さる。
その時、フトシは隣室からカオリを見守っていた。
そして、19時、校内のカフェにスバルを呼び出す。
「どうしたの?もしかして俺に会いたくなった?」
「うん。」
「うれしいな。俺たちに会う理由なんていらないよね。」
「違うの。」
「え?」
「理由、あるよ。言いたいことある。」
「・・・どうかした?何?」
「私達、もう別れよ。」
「・・・なんで?俺なんかした?悪いとこあるなら言ってよ。じゃないと、俺わかんねぇよ。」
「そうじゃない。」
「じゃあなんだよ」
「そもそも、好きじゃなかった。ごめん。」
「・・・じゃあ、俺たちの子供はどうなんだよ。」
「わからない。今は考えたくない。」
「自分の子どもだろ?お前、それでも母親かよ。」
「まだ産んだわけじゃない。私は、まだ私は1人の子どもだよ。ただの子供。」
「わけわからん。・・・もういいや、勝手にしろよ。」
「ごめん。」
「・・・最低だな。」
スバルは辺りに八つ当たりし、去る。
カオリはただ、謝るだけだった。
ふと、自分のおなかを触り、呟く。
「ごめんね。」
フトシはその光景を眺めていた。
悲しげなカオリの姿に耐えきれず、カフェを後にする。
カオリは帰りの道中、世間の人々を見る。
幸せそうな人々。
どこに向かっているかわからない自分。
誰かわからないあの手紙の書き主に希望を見据えるしかできなかった。