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adventure & daily life  作者: ケー
8/10

言語

――――


かつてこの世界すべてを巻き込んだ大戦争以後。

長い長い月日をかけて、他種族同士で共通の言語を定めた。

各種族は、教育に長け文化水準が最も高いエルフの言語こそふさわしいとした。

そして、エルフ語を元に生み出されたのが現在の共通言語と呼ばれるものである。

そのため、エルフ語独特の言い回しも使用されている。


――――


太陽すっかり眠るころ、ギルドの喧騒に月が目を覚ました。

昼間に汗を流した冒険者たちは、ここで失った水分を補給する。


「今日の成功に!」


「明日への感謝に!」


「気の良い仲間に!」


「美味い酒に!」


『かんぱ~いっ!!』


「まったく、今日はどっと疲れたな!」


「ハハハ、キリーがあんなに大胆だとは思わなかったぜ!」


「俺だって冒険者ってことさ」


「しかし、リトルリザードを網目罠で捕獲するなんてな!

 最初に聞いたときは正気を疑ったよ!」


「あの網は一体どうなってたんだ?

 小さいとはいえ、リトルリザードは火を噴くってのに」


「ああ、それはあらかじめ乾留液に浸した網を使っただけさ」


「かんりゅうえき?」


「エルフの言葉の方が一般的だな。 タールのことさ」


「なに、けどあれって燃えるんじゃないのか?」


「煤で作った乾留液は、縄の補強にも使われててな。

 確かに燃えないわけではないけど、よほど火力がなければ焼き切れないのさ」


「そうそう、火といえば!

 あの林に火をつけたときはビビったよな~!

 まさかあんな燃えるとはな、ははははは!!」


「お前、もう少し声のボリューム下げろ…。

 放火魔と勘違いされるぞ?」


「俺も驚いたんだよな。 あの油、一体なんだったんだ?

 いくらなんでも燃えすぎる気がしたが…」


「ああ、行商人が面白いものを譲ってくれてな。

 通常の灯油より燃えやすい、薄茶灯油ってやつさ」


「な、なんだそりゃ?」


「その行商人の知人が開発してる灯油の試作品らしい。

 試作品なだけあって、使い勝手と広告をかねて安く売ってもらった」


「おいおい、下手したら大損だったんじゃないのか…?」


「いや、見たところ純粋に鮮度の良い灯油だったよ。

 ただ普通の物とは全く別物だったな。 正しくは植物油の類だろう」


「木々に振り掛けた時も、あんなに勢いよく引火したもんな。

 確かに悪くない油だったし、これから流行るかもしれないな」


「せっかくだから買いだめしておこうぜ!

 まだ行商人も滞在してるだろ?」


「残念ながら大売りはしてないらしい。 量産できてないんだろう」


「そうそう。 キリー、お前弓も使えるんだな!

 驚いたぜ、弓持ちなんざエルフかヒトくらいしか見ないしな」


「はは、キャッツの俺には苦労したよ。

 まぁレイとアルドと違って俺は前に出るタイプじゃないからな。

 短剣だって護身用に使える程度さ」


「ま、俺が前に出てキリーには作戦を考えてもらうのが一番戦いやすいのさ。

 俺たちも考えるのが苦手な分、結構バランスとれてるってことよ」


「よく言うぜ器用貧乏のくせに。

 ヒトである俺の方が前出てやってるじゃねーか」


「お前は勝手に突っ込みす

ぎなんだよ、低能サル」


「腰抜けワンコ!」


「お前もだろがフールモンキー!」


「ハハハハ! あ、ネェちゃん、こっちにも酒を追加で頼むよ!」



4人が今日の出来事で盛り上がっていると、賑やかさに誘われ冒険者が寄ってきた。

だいぶ酔っているようで、傍から見て取れるほど顔を火照らしていた。

大きな体をよろめかせ、どんとテーブルに肘をついた。


「よぉ~う。 楽しそうだな!」


「やぁウグ。 気分良さそうだね」


「うお!? てめぇウグ、驚かすな!」


「ばっはは、許せよ三馬鹿! そっちの兄ちゃんは見ない顔だな?」


「【ヒト】のアドベルだ。 もうしばらく厄介になるよ。

 よろしく頼むぜ」


「【ゴーグ】のウグだ。 ひひっ、見ての通りオーガ様よ。

 三馬鹿とつるんでるとおめぇもバカが移るぜ?」


「けっ、バカはお前だろが脳筋。

 タンコブできてんのに二日も気付かないやつがいるか」


「この前なんかハチミツ採ろうとして蜂に追い回されてやがるんだぜ?

 おまけにその騒ぎで熊までやってきやがってよ。

 大変だったんだぜ?」


「なっ・・・それは酔っ払ってるときの話だろうーが!!」


「その後オメーは熊と相撲とってただろうが!

 引っかかれて血まみれになってやがんだぜ? 全く笑っちまうよ!」


レイが大声で恥を嗤う。周りの冒険者たちも、当時の様を思い出しながら笑う。

中傷された本人もばははと大笑いしていた。

より顔を赤らめていたようにも見えるが、気付くものはいなかった。

突如タカタカと軽い音を立て、顔を見せたのは受付嬢であった。


「あらあら、皆さん楽しそうね♪」


「あ、レシーナちゃん!! こっちおいでよ、一緒に飲もう!」


「いやよぉ、レイさん酒癖悪いもの」


「そ、そんなことないって」


「どうせ相席するなら、もっとクールな紳士とが良いわね~」


「し、しょんにゃぁ~・・・」


さきほど以上の笑いが飛び交う。しかしレイには笑いは無かった。

アドベルも自然と笑顔が浮かび、ふと開けっ放しの窓から空を見た。

今宵の月は楽しそうで、頬を膨らませて満足そうである。

この様子だと太陽はまだ起きる気配はなさそうだ、とアドベルは窓を閉じた。





――――


共通語はエルフの言語が元になっているが異なる言語である。

エルフ語から流用された共通語は数多く存在し、アイテム、ウェポン、ソードと言った言葉はその例である。

他にも様々な所属の言語の名残が、共通語として使われている事がある。


――――


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