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adventure & daily life  作者: ケー
6/10

ダンジョン

――――


ダンジョン。

この世界に存在する、迷宮の総称。

大概その中にはモンスターが生息し、独自のカーストを形成している。

また地上では滅多に見る事の無い植物、鉱物が現存する。


いつ頃から存在し、いかにして生まれたのか。

また、人工物か自然物かも定かではない。


――――



「ふぅ。 とりあえず、これでラービット5匹だな。

 一度町に戻るぞ。 血抜きも済ませていこう」


「一々行ったり来たり、面倒だよなぁ・・・」


「こればかりはな。

 ダンジョンに放って置いても別のモンスターに横取りされる。

 良くて無事でも、素材の質が落ちる。

 外に置いたままにしても同様だ」


「それに荷車に載せておいても、かっぱらっていくやつらもいない訳じゃない。

 ギルドに納品した方がよっぽど効率的さ」


ラービットとの戦闘後、3人はダンジョンの外へと戻ってきた。

ウサギの巨体を担ぎ、慣れた手つきで血抜きを行っていく。

モンスターの血は特殊で、その血液は植物や大地の良い栄養となる。


「こいつらの血も、売れれば良い小遣い稼ぎになるんだが・・・」


「売れれば、だろ? わざわざ金払ってまで買うやつがいるとは思えねーよ」


「高潔な竜の血でも手に入ればなぁ~」


「よし、大体こんなものだろう。

 荷車に結び付けてくれ。 今度は俺とアドベルで運ぶ方を決めよう」


「なら俺がやろう。 力仕事ならそれなりに手伝える」


「よし、なら次は俺で、その後はローテーションで行く。

 もし消耗してるならちゃんと言ってくれよ。 俺も遠慮はしないからな」



ギルドまで荷車を引き、3人はギルドへ着いた。

ギルドでは依頼物の納品も承っている。

3人は、ラービットの死骸を納品ではなく預かるように頼んだ。

空になった荷車を、今度はキリーが引いて行き、ダンジョンへと戻っていった。



「初めに使った松明はもう燃え尽きてるな。

 新しいのを逐一灯していくぞ」


「ああ、頼む」


「さぁ、どんどん狩っていこうぜ!」



――――――――

―――――

――



「・・・ちっ、この猿ども、木の上から降りてきやがらねぇ!」


「ギッギ、キィーキィー」


ダンジョン内の開けた空間。

周りには発光する植物や鉱石、そして洞穴内とは思えないほどの植物たち。

そして、その中の木々の枝をすり抜けるように、シザーモンキーたちが現れた。


「くそ、なんつう邪魔な木だ! やつらにかすりもしねぇ!」


「二人とも、こいつを使え!!」


「これは、油か?」


「邪魔な木々は全部燃やし尽くす!!

 煙に気をつけろよ!!」


「お、おいおい、正気かよ!?」


「ハハハ、おもしろい! いくぜレイ!」


アドベルとレイは、掛け声を合図に木に向かって油を撒く。

シザーモンキーは驚き飛び退くが、幹や枝にはばしゃんと跳ねた。

己に油がかぶらぬ様に、二人は気を使いながら、次々とぶちまけていく。


「よし、離れろ二人とも!!

 豪快にいくぜ!」


キリーは松明に火をつけ、茂る木々に投げつけた。

見る間に炎は草木を巻き込み、盛大な火の畑となっていく。


「うおおおお!! い、いくらなんでも燃えすぎやしないか!?」


「た、確かに・・・」


「シザーモンキーが逃げるぞ! 引き付けてくれ!」


「お、応!」


燃え上がる火の手に驚き、シザーモンキーたちが洞穴の奥へと逃げていく。

それをさえぎる様に二つの影は立ちはだかった。

何匹かはその影に阻まれ、火の手を背にする。

己の進路を阻むそれに、シザーモンキーたちは爪を立てる。


「ギッギッ」


「ギッギァッギァッ」


「いいぞ、そのまま動かないでくれ!」


「なっ、ど、どうするんだ!」


言われるよりも早く、キリーは弓を構える。

狙うは影を前にした猿たち。手元がぎりりと弓を鳴らす。


「この距離ならば、はずさねぇ!」


ヒュッと空を風が鳴く。ドスッと木矢が猿を突く。

不意を突かれた一匹を皮切りに、猿たちはどよめき立つ。

そんな事は露知らず、無慈悲な閃光は確実に猿を射止めていった。


「ひゃ~・・・すげぇもんだ」


「キリー、弓まで使えるとはな」


「しかし、どうするんだよ。 これじゃあ戻れねぇぞ!?」


「すまーん、考えてなかった!!」


「このドマヌケ参謀!!!」


彼らが放った炎は、すでに木々全体に燃え移り、一種の地獄を連想させた。

本人たちですら手の施しようがないそれは、ほとぼりが冷めるまで待つしかないように思えた。


「・・・! そうだ、こいつなら何とかなるんじゃねぇか!?」


アドベルは、背負った荷物から一振りの剣を取り出した。

巻き布を剥がしたそれは、まるで水のような静けさを感じさせる美剣であった。


「物はためしだ・・・そうらぁ!!!」


「・・・!! き、霧・・・いや、しぶき!?」


アドベルが力いっぱい剣を振るう。

すると、剣から伸びたかのように白い弧が放たれた。

火畑へ飛び込むそれは、炎の勢いと共に消えていった。

手ごたえありと見るや、続けさまに剣を振り回す。

空を切る剣先からは次々と白き刃が飛び、しばらくして炎はその存在を消していった。



「ふぅー・・・まさかここまでとは・・・」


「お、おい! 何なんだその剣は!?

 どうして炎を消せたんだ!」


「・・・驚いたな。 まさか『マジックウェポン』か?」


「ああ、そうだと思うぜ。

 お前たちと出会ったダンジョンに泉があっただろう?

 あの泉の中にあったもんでな、貰ってきたんだよ。

 しかし、こんなに役に立つとはな・・・」


「うおおお!! う・ら・や・ま・しぃ~!!!

 な、なぁ、譲ってくれないか、それ!?」


「あ、アホか! そんな簡単に譲れるかよ!

 仮にもレアアイテムだぞ?」


「・・・確かに、それを売り払えばこの前の中型の分も取り返せるよな。

 貴重な物だし出し惜しみするのも納得だ」


「悪いな、隠してたつもりは無かったんだが・・・」


3人は話をそこそこにシザーモンキーの死骸を抱え込む。

壁際へと場所を移動させ、松明を灯し壁へと引っ掛けた。

発光する植物はほとんど燃え尽きてしまったため、以前より洞穴内は沈んでいた。

黙々と腕を切り落とし、依頼品である爪を傷つけぬよう丁寧に捌く。

バラされた死骸は穴を掘り埋める。供養のためと、燃やしてしまった植物たちのせめてもの償いだ。

3人はその場を後にし、再び奥へと向かっていった。






――――


ダンジョンには2種類存在すると言われている。

一つは定期的に構造を変化させる「動態ダンジョン」、または「動的ダンジョン」。

中に存在する鉱物、構造はもちろん、住まう生物たちをも変化させるという。


もう一つは「静態ダンジョン」、または「静的ダンジョン」。

構造、生態系などは一切変わる事がないのだが、まれに特殊な鉱石や植物が生まれる。


特に動的ダンジョンは謎が深く危険であり、行方をくらます冒険者が後を絶たない。


――――


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