俺の彼女は……
メリーさん、という都市伝説を知っているだろうか?
ある日突然メリーさんから電話が掛かってきて、どんどんメリーさんが近づいてきて、最終的には自分の後ろにいるあれだ。
俺がこんな話をしたのには訳がある。
簡単に言えば、俺は現在進行形でメリーさんから電話が掛かってきている。
ちなみに、後二回着信があれば俺の後ろにメリーさんが立つ。
プルルルル!ピ!
「もしもし」
「私、メリー、今あなたの部屋の前にいるの」
ブツ!
電話が切れる。後一回か。
だが、俺に恐怖は無かった。
なぜなら……
プルルルル!ピ!
「私、メリー、今あなたの後ろにいるの」
その言葉と同時に背中を温かく柔らかい感触が覆った。
なぜなら、メリーさんは俺の彼女なんだから
「ひさしぶり、メリーさん」
首だけで振り返ると、腰の辺りに小柄な、長い金髪の人形のような少女が抱きついている。
「会いたかった」
そう言ってさらに抱きついてくるメリーさんを僕は抱きしめることはできない。
メリーさんのルールで真っ正面から向き合った人を殺さなくてはならないからだ。
「あ、時間だ」
一時間程そうしていただろうか、メリーさんがそう呟くと同時に背中を覆ったていた温もりと感触が薄れていく。
これも、メリーさんのルールで、顕現から一定時間が経つと消えねばならない。
「またね、メリーさん」
メリーさんの温もりが消え去った時、メリーさんの声で―またね―と言われた気がした。
抱きしめ合う事も、デートする事もできないけれど、俺は自分の選択を後悔したりしない。
また会える日を夢見て俺は今日もまた生きていく。