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一心奏音  作者: 白羽 彩
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音との出会い

「今から部活動紹介を行います。まず始めに...」


今年の春、念願叶ってか叶わずか私は私立水蘭女子学園高等学校に入学した。


晴れ晴れとした高校生活も勿論望んでいないことはなかったけれど不安の方がまだ大きくてこの時私はまだ部活に入部しようなんて余裕はなかったという方が正しいのかもしれない。


新しい制服、新しい鞄に新しい靴と身につけるものも、新しい校舎に新しいクラスメイトに、新しい担任と人間関係もすべてが新しくなったこの時、これらの事になれるのに夢中でそれ以外のことになんて頭が回らなかった。


そんな入学二日目のこの日に何故部活動紹介をするのかというと、この高校は珍しいことに部活強制なのである。もう部活を選び始めなければ間に合わない部活も出てくるのだ。その為、早くから部活動紹介を行っている。


ということで、パンクしそうな頭で私はそれぞれの部活のパフォーマンスを見ていたが今のところピンとくる部活がない。


今パフォーマンスをしている薙刀部は見た目かっこいいのだがとても手を出せるような部活ではなかった。少なくとも、運動神経の悪い私にはとてもついていけるものではない。


そんなことを考えながらパンフレットを見ていると奥行きの深い音が私の耳にすっと入り込んできた。ふと、ステージを見るとお箏と三味線、曲は何度か耳にしたことのある島唄だ。


でも、今まで聞いたことのある島唄とは迫力や表現が違う。


私の前に、豊かに広がる緑や壮大な海...そして、旅立っていく人が手を振る姿がそこにあるかのように見えたのである。私は完璧に演奏に呑まれていた。その演奏が終わった瞬間私は小さく息を吐いた。


「皆さん、入学おめでとうございます。私達箏曲部は、毎年県大会や全国大会に向けて顧問の先生やお稽古の先生のご指導のもと日々練習に励んでいます。お箏に少しでも興味がある方は是非和室へいらっしゃってください。未経験でも構いません。私たち一同皆さんがいらっしゃることを心よりお待ちしています。本日はご静聴ありがとうございました。」


一人すらりと背の高い女の人が柔らかな口調で挨拶して箏曲部の発表が終わった。


その後もいくつかの部活がパフォーマンスをしていたのだけれど、全く記憶にない。桃色の袴を着て、真剣な表情で箏や三味線を弾いている先輩方がとにかくかっこよくて、演奏が素晴らしくて......こんなふうに弾けたらどんなに素敵だろう。そう思うといつの間にか私は手を固く握っていた。


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