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村の外れより少し遠くが、突然燎原のようになった。
いち早く気付いたモーリアが指をさしぼくたちに知らせる。
「なんだあれは!!」
普段とは違う、少しうわずった声に焦りがありありとみえる。
さらにそれはとてつもないスピードで村の方向へ移動してきている。
村のはずれの森から女の人と男の人の叫び声がほぼ同時に聞こえる。
なぜあんなところに人がいるのか、それに彼らがどうなってしまったのか考えている暇はなかった。
女の人が叫び声をあげていた場所はとうに通り過ぎ、村に近づいてきている。
正体不明だった移動する燎原は馬蹄の音と、様々な色と形を持つ輝法が飛び出した瞬間、その量から軍だということがわかった。
頭の中が空っぽになるような衝撃をうけ、そんなはずはないと心の中で否定したい気持ちにとらわれる。
「なんで...なんで、どうして!」
つぶやくように言いながらも、自然と語尾は強くなってしまう。
この大陸は三つの国々に分割されている。
主に、東の帝国、西の諸国連盟。
そして近年、中央最北から最南にかけて大陸をせしめた皇国。
この国は帝国と戦争中であり、諸国同盟とは停戦中だ。諸国同盟はその国の性質上、戦争そのものを忌避している。
村は皇国最西にある砦から山を三つ越えたところにある。
「つまり...」
座り込んだ僕はサラとモーリアの顔を見上げる。
二人とも僕と同じ心境のようだ。
ただ、これは現実ではないと思い込みたいぼくと違うのは、サラはどうやって村を守るか、モーリアはどのようにして追い払うかを考えているというところだった。