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夢物語  作者: 矢玉
第七章 罠 
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第七章 罠 三

     三


「じゃあ役割分担のおさらいね」

 柚は勢いよく首を振り、ぐるりと部屋を見回した。気合いを入れるために高い位置で縛った金髪が、動作につられて左右に揺れる。

「私とゆえは町に出て、月の泊まった場所かもしくは現在いる所を捜索。翔はその間宿で待機。多分無いけど万が一ありえないけどもしかして月が戻って来た時の連絡係としてね」

「そこまで強調するなよ」

「否、だってありえないから」

 即答した金髪の少女を眺めて、翔は諦めたようにため息をついた。

「わぁったよ。わかりました、俺はここで待機すること無くて暇だけど待機、待機であいつと再会した時少しでも機嫌がいいように傷治すのに専念しますよ」

「・・・・・・それであいつの居場所突き止められないのか?」

 唐突に口を開いたゆえの指先の“それ”とは、翔が常に持ち歩いている占いの札。一瞬の沈黙の後、柚の頬がみるみるうちに紅潮する。

「そうよ、何で思いつかなかったんだろう。占えば一発じゃない!!」

「どうかな」

 それに答えた翔は肩をすくめていた。消極的な少年の言葉に、少女の金の眉がきゅっと寄せられる。

「どういう事?いつもの自信満々な様子はどうしたのよ」

「手札はわからない事しか反応しない。けど今回は月は自分の意思で出て行ったことがわかってる。場所も、大雑把な方向や国を調べるのと違って、街中かせいぜいこの近辺だろ?かなり細かい場所になるから、難しいだろうな」

 まあ、一応やっとくわと気の進まない様子で手札を操り始める。

 それを見とどけた二人は軋む階段をくだり、宿を出た。

 空は昨日の嵐が嘘のような晴天。浮かぶ雲も軽やかに空をすべっていく。だが何故か朝のざわめきは乏しかった。ゆえの目には、これまで道中で通りかかったどの地区よりも活気を欠いているように映る。

「どうやって捜すんだ?」

「まずは聞き込みね。月って目立つから多分どこかで足取りはつかめると思うわ。泊まっている宿屋がわかればいいんだけど」

 道を見渡した柚は路上に座り込んでいる小汚い身なりの子供達を見つけると、嬉しそうに近づいて行った。後ろから眺めるゆえの前で膝を折り、子供と目線を合わせる。

「ねぇ、君達。昨日の夜に黒髪で赤い短甲つけた美人が通らなかった?」

「あんたら、あの怖いねえちゃんのしりあいか?」

「怖い・・・・・・?」

「だから、まっ黒のかみした女剣士のことだろ。あのねえちゃんなにがあったか知らないけど、あれにやつあたりしてったぞ」

 指差された先には無残にも半壊した木箱の山が出来ていた。柚が近付いて一つ手に取り、注意深く観察する。

「東極刀の切り口だわ、たぶん月のしわざだと思う。しっかし荒れてるわねぇ」

 茫然とやつあたりの残骸を眺めているゆえに、柚は軽く肩をすくめてみせた。

「でも、かえって物に当たってくれて良かったわ。じゃなきゃ内側に溜め込むだろうから」

「・・・・・・・・それでかたづけて良いのか?この惨状」

「だってこれ明らかに廃棄物ばっかじゃない。たぶんそれを選んでやつあたりしたのよ」

 月は切れてもどこか冷静な所あるからね、と続け柚はくるりと浮浪児へと向き直る。

「で、どこに行ったかわかる?」

「このまままっすぐ行ったよ。それ以上はしらねぇ、あんなブッソウナ女にはかかわりたくないもんなー」

 同意の声を上げて歩き出そうとした浮浪児達の頭に、柚がぽんと言放った。

「銀貨三枚、欲しくない?」

 ぽかんと見つめてくる浮浪児達に、軽く首を傾げてた姿勢で金髪少女が可愛らしく問う。若干笑みが意地悪いものに見えなくも無い。

「その人見つけてくれたら銀貨三枚あげるわ。なおかつ月に――――――その人にみつからなかったら、何か食べ物奢ってあげるわ」

「のった!!」

 先程までの面倒くさそうな風情とは打って変わって、活き活きと子供達が叫んた。今にも走り出しそうな背中に柚が追い討ちを掛ける。

「私達表通りにいるからね!それにご飯はちゃんとお昼に食べたいわよね!!」

 言外に昼までに出来たら飯も食える、と悟った子供達は仲間を引き連れて走り去って行った。

「大丈夫か、あんなので・・・・・・」

「あら、シャーロックホームズだって金田一だってちびっこの助け借りてるじゃない。大丈夫よ」

 根拠となる本がすべて小説だった事をつっこむべきか、ゆえは暫し思案した。

「子供だけを頼りにするわけにはいかないから、これから二手に分かれて宿屋周りましょ。あの子たちが帰ってくる昼前にこの場所へ集合したいから、今からだとそうね一刻ぐらいかしら」

「・・・・・・イチ、コク?」

「ああ、そっか。一刻って言うのはこちらの時間の単位よ、約二時間ぐらいね。半刻なら一時間、四半刻なら三十分って感じに割っていくの」

 じゃあね、とい手を振る少女の後姿を見送り、ゆえも歩き始めた。人気の少ない通りを歩き、見上げた看板を知識を総動員して読んでみる。

「歌う・・・・・・虎、亭?」

 いまいち意味のわからない店名であるが夢想界ではこれが当たり前らしい。これまで泊まった宿も珍妙な名前が多かった。扉を開けた薄暗い店内には二、三人の人影が見える。

「すみません――――――」

 ぎしり、と床板が音を立てて軋む。妙に耳に障る音にゆえは眉を寄せながら、勘定台の店主へと近づいて行く。

「あの、長い黒髪の俺と同じ年頃の奴が泊まっていませんか?」

 眉を寄せたまま不愛想に言った所為か、店主から向けられたのはかなり胡散臭そうな目線だった。

「さあねぇ。女かいその子は」

「はい」

「女の独り者ってのは目立つが、近頃は少な――――――あんた!」

 急にぐいっと身を寄せられ、思わず仰け反る。痩せた女主人は掴みかからんばかりの勢いで顔寄せてくる。

「・・・・・・何か?」

 無言で凝視されてかなり居心地が悪い。ゆえが本気で逃げ出そうか算段し始めた頃、女主人はやっと口を開いた。

「結構、可愛い顔してんね」

「・・・・・・・・・・・・はぁ?」

 怪訝そうな顔を向けても先程とはうってかわって満面の笑みを返される。

(逆に怖いんだが・・・・・・)

「うん、ちょいと待ちな。台帳みてやるから、ね!!その間これでも飲んでなよ、うん」

「・・・・・・どうも」

 目の前にどん、と赤い液体を置きいそいそと奥へと戻っていく。まじまじとゆえはそれを見つめた。朱の液体はやや濁っていて底のあたりの色が濃い。警戒しつつ匂いを嗅くがやや酸味がある感じだが酒類ではないらしい。せっかく出して貰った物なのだからと手を伸ばし、少々かけた陶器を持ち上げればふと端に座っていた男と一瞬目が合った。

 思わず動きを止める。

 その男が向けた視線は――――――哀れみ。

 葬儀の日泣き叫ぶ遺族を眺め、悲しみの感情を持ちながらも足早に立ち去るような者の眼。

 ゆえは静かに器を置くと、扉に足を向けた。

「ちょ、ちょっと。どこ行くんだい?今調べてんだよ」

 慌てて駆け寄ってくる気配がし、腕を掴まれる。

「もういいです。ありがとうございました」

「そんな事言ってもね、その人探してんだろ?ね、ちょっと待ってなよ。顔色も良くないみたいだしちょっと休んできなって」

 笑顔で言われる言葉に、ふつふつと湧いてきたのは――――――警戒心。

「なぜですか」

「え?」

「なぜそんなに親切にしてくれるんですか。何か理由でも?」

 ふと思いついていった言葉だったが、女主人の顔色ははっきりと変わったのと見てゆえは確信した。硬直する体からするり腕を抜き、扉を開ける。

 店内が暗かった所為か、眩暈がするほど空が青く感じる。それを見上げてゆえは再び歩き始めた。

 全身に鳥肌が立つような不信感が募っている。

 何故だか理由ははっきりとわからないが、自分はあの空間に不信感を抱いたのだ。

 二件目の看板には『踊る牝牛亭』と書かれている。

 扉をくぐり、先程と同じ質問をすると、皺のよった顔に笑顔を浮かべ店番である老女は言った。

「あんた、なかなか男前だね。何か食べるかい?」

 ゆえは思いっきり顔を顰めた。




「おい、金髪のねぇちゃんどこ?」

 煉瓦の壁にもたれかかっていたゆえは慌てて右下を向く。裾を引いていたのは先程の浮浪児の一人だった。

「あの女剣士のことわかったぜ。どこにいるんだ」

「わかった事って何だ?」

「おれがおしえる約束したのはあんたじゃないだろ。はやく連れてけよ」

「悪いけど俺もどこにいるのか知らない。二手に分かれて捜していたから、正午にここで落ち合う約束だ」

 ゆえの言葉を聞いて脱力したように少年はうずくまった。へたりこむ、という風情にさすがのゆえも眼をみはる。

「なんだよー、いっそいで来たのに。むだにはらへったぁ」

 さらに今にも泣き出しそうな顔でぶちぶちと文句を言い始めたので、頭の上に包みを落としてやる。ぶすっとした顔を隠そうともせず少年は訊いてきた。

「なんだよこれ」

「携帯食みたいな物だ。やるよ」

「あんたいいやつだな!」

 無表情だけどなっ、と嬉しそうに続けられてゆえは憮然とした表情になった。それに気がつかず硬焼のパンのような物にかぶりつき、ゆえは大して美味いとも思えないそれを夢中で平らげた少年は、掌を舐めてから口を開いた。

「あの女剣士、カミカクシにあったかもしれねぇぜ」

「・・・・・・神隠し?」

「そ、一年半まえぐらいかな?変なおっさんがこの町に来てさ。『森にワルイカミがすみついてる』とかいいだして。もちろんみんなそのときは笑ってムシしてたんだけど、そのあとにちょっとづついなくなるヤツがでてきたんだよ」

 俺らみたいな奴の中でも消えた奴がいるし、と口の端を歪めて笑った。

「そのいなくなったヤツってだいたいみためがいいヤツなんだよ。女で若いヤツのほうが多いしさ。あの女剣士もちらっとしか見なかったけどけっこう顔良いだろ。な、あやしくないか?」

 表情を消して黙り込むゆえの横から、声がかかる。

「悪神だろうが悪霊だろうが、簡単に攫われてくれる奴じゃないけどね」

 まさにゆえの心中を代弁したかのような言葉は、金の髪の少女のものだった。ぱっと表情を明るくした少年に、柚は意地悪そうに言い放つ。

「けど、調べた成果ってそれだけじゃないわよね」

「もちろんだよ。きのうの夜入った店もしらべた。けどそこはとまりの客とってないし、そこから出てったのも見てないって」

「あら、じゃあ、今いる所はわかってないの?じゃあ、昼ごはんは無しね」

 無常に言う柚の裾にすがるようにし、懇願めいた様子で少年は急いで言う。

「たのむよ。一度“タマゴ”食ってみたかったんだ!なんならそこの宿まで案内するし、そこの店員と話もつけるからさ」

「卵?」

 ゆえと柚の声が重なった。それを見ていた少年は小馬鹿にしたように口を尖らせる。

「あんたら知らないのか、タマゴだよ、た、ま、ご。あの白いからに入ってる食べもんだよ」

「知ってるわよ。でも何で卵なの。何か特別な卵料理じゃなくて?」

「たまごりょうりぃ?」

 あんぐりと大きな口を開けて少年は呆けたような顔になった。

「いくらなんでもそんな高いもんおごらせようなんて、さすがのおれでも考えないって」




「その子の言うとおりだったわ」

 教えられた高級食材店から出てきた柚は苦い顔でゆえに言った。

「現実の十倍以上、考えられる?何でゆで卵一個が金貨一枚以上するのよ。いくらなんでもぼったくりだわ」

「前に確か、高級な食べ物だって言ってなかったか?」

「まあね、確かに場所によっては高い食べ物よ。値段も現実みたいに一パック二百円とかで売ってないけどこれは極端すぎ。けど何で誰もおかしいって気づかないのかしら」

 細い眉をしかめて考え込む柚を上目遣いに見上げる少年は垢じみた手で額をかいた。

「病気のせいかもしれないなぁ」

「何ですって?」

「だから、病気。一年まえくらいからとつぜん町中ではやりだした病気でさ。金持ちのやつらがどんどんかかってるんだけど、その病気にタマゴが効くっていうんで一時期品切れになったんだって。そういうのキショウカチっていうんだろ?」

 得意そうににっと笑う少年の歯はかけていて、愛嬌があった。それに何と無く和みつつ柚とゆえは少年をみつめた。

「そんなことどーでもいいけど、食べさせてくれるのか?」

 すねたようにそう言う垢だらけの少年の顔を柚は静かに見つめた。何か奢るのには別に問題はない。もともとそう言う約束だったし、痩せた体は傍から見ても可哀想なほどで、気休め程度だとわかっていても何か食べさせてあげたかった。

 けれど騙されたように大金を支払って卵を買うのには抵抗がある。

「ねぇ、あんた鶉って知ってる?」

「茶色い鳥だろ。ばかにしてんの?そこらにいるだろ」

「なら話が早いわ。その巣に言って卵集めてきて頂戴。それでゆで卵でも、入り卵でも、オムレツでも作ってあげるわよ」

 うん、名案と頷く柚に途方にくれたように少年が言った。

「・・・・・・あんな普通にいる小鳥の卵って食べれる物なのか?」




 黒髪の頭をかき混ぜるように掻き、翔は口を開いた。

「んで、その奴らに鶉の卵でオムレツ作れってか?」

「そうよ。まあ、集めた卵の中には鶉じゃない奴も混じってるけど大丈夫でしょ」

「けどわっかんねぇなぁ。何で卵料理知らないんだ?」

「どうやらここの土地には食用に向いてるような大きな卵が少ないみたいね。もともと卵食べる風習が無かったんじゃないかしら」

「で、外部から入ってきた新しい食品の値段の相場なんて知らなかったわけか」

 ひどい話しだな、と翔も眉を寄せる。そうね、と柚も同意した。

「そういえばゆえはどこにいるんだ?」

「ああ、森の近くで焚き火の準備してるわ。それ終わったら卵わっておくって言ってた」

「お前がやらなくて正解だったな。下手したら全滅しかねない」

 柚は料理に関してのみ驚く程手先が不器用なのだ。しみじみと言う翔に、否定できないが悔しい。そんな気持ちを込め右手に持っていた鉄へらで頭をどついてやった。

「人間一つや二つ苦手な事もあるわよ!さっさといくわよ!!私達もお腹減ってんだから」

 しばらく頭をさすっていた翔は慌てて柚の後を追った。

「ちょっとは怪我人を労わろうって気持がお前には無いのかよ」

「ぼやいてないでちょっとは反省しなさいよ」

 仲間の所為で手傷を負った人物にかけるにしては妙な言葉だが、柚は真剣な目で翔を見た。

「昨日も言ったけど、月の性格理解してないわけじゃないでしょ。庇われたらその分だけ、下手したらそれ以上傷つくやつなんだから」

「知ってる。それに今回は俺も悪かったって思った。けど、お前ならどうする?」

「愚問ね」

 即答した柚だった。仲間が傷つくのが嫌なのは何も月だけに限った事では無いのだ。自分だって、翔だってゆえだって嫌なのだ。

「ただ月は敏感すぎるのよね、その手の事に」

 柚が月と言う少女に対して抱いているのは常に“繊細”という印象だった。


 鮮やかで、清冽。誇り高く強靭だが、どこか繊細で脆い。


 特に現実での第一印象では、もっと優しげで穏やかな少女だったのだ。その頃から比べれば随分と印象は変わったが、“繊細”と言う印象だけは今でも消えずに残っている。

「ほんとに昨日のあんたの言葉じゃないけど難儀な性格してるわ」

「まあ両親の事もあるんだろうがな・・・・・・」

 それは禁忌ではないが、二人の間では慎重に取り扱うべき事柄だった。

「そうね。現実で初めて会ったのは、月のご両親が亡くなった直後だったわ」

 あれから、何年も経った。自分はあの少女の事をどれだけ理解しているのだろうか。いつもそばにいるつもりでも、こんな風に突然いなくなってしまう時が来るのだろうか。

 思わず身震いした柚の頭にぽん、と暖かな手が置かれる。

「考え込むなよ。こういう時はとりあえず動いときゃ何とかなるんだ」

「そうだったわね」

 頭に乗せられたその手をつかみ、しっかりと手を繋ぐようにつかみなおし柚はゆらゆらと揺らした。なんとなく、そうしたい気分だったのだ。そのまま二人で手を繋いだままゆえの待つ森を目指す。

「そういや、何で焚き火なんだ?宿で厨房借りた方が楽だったろうに」

「断られちゃったのよ。ここの住民って何か警戒心強いのよね。よそ者が少ないのかしら」

「たぶん、前の渡しで河を渡っちまう旅人が多いんだろ」

 そういって、通りを眺める。そこは商店の並ぶ目抜き通りといっていい町の中心の道だったが、さまざまな街を見てきた少年の眼には閑散とすら見える光景だ。

「お金があれば私達も船に乗れたんだけどね。そう言えば占いの結果は?」

「予想どおり収穫無しだった。何度やっても出るのは『隠』ばっかだったよ。しかも隠“れる”のか隠“される”のかがはっきりしないんだ」

「どういう事?」

「だから、月が自分で俺らから隠れているのか、その神隠しとやらに巻き込まれたのかがはっきりしないんだよ」

 けど、と暗い顔をして翔は続けた。

「何だかすっごい嫌な予感っつーか、感じがするんだよな」

「不吉な事言わないでよ!」

 柚は再び翔の頭を叩いた。

 叩いた跡を痛そうにさすり、恨めしそうな眼差しをむけてくる翔を無視して柚はすっと建物同士の間に出来た小道に入った。慌てて翔も続く。

 人一人がやっと通れる程のそこは、“小道”と言うよりかは“隙間”と行った方が正しいような有り様だった。窮屈に思いながら通り抜ければ、道は途切れると同時に森の中へと続いている。森と言っても生活林のようで見える範囲では人の手の入っている形跡があった。

「その孤児達ってこんな所に住んでるのか」

「町の中に住むと襲撃されるから、ですって。ここなら地の利を生かして何人で追いかけて来ても大抵返り討ちに出来るらしいわ」

「追っかけられるような事してるのかよ」

 がしがしと翔は頭を掻いた。大丈夫なのかと問えば呆れた目線が向けられる。

「私達だって似たような事してたじゃない。ほら闇花を抜けたすぐ後とかさ、忘れたの?」

「あれは違うだろーが。店を手伝えって言うから働いたのに、金くれなかったから商品かっぱらって、店荒らしただけだろ!!」

 最後の一つがついた時点で威張れる事じゃない、そう言おうとした柚の横から、甲高い声が響いてきた。

「おせーよ、ねーちゃんたち!このにーちゃんもあと少しでくたばりそうだぞ」

 声の先を見てみると、器を片手に立ち上がり途方に暮れたような表情を浮かべるゆえと、それを取り囲むようにして集まった子供達の姿が見えた。



     ※※※


前回が短かったので、今回はサイト掲載での二話分をひとつにまとめました。

ちょっと読み応えあったかな?

また感想お願い致します。

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