第五章 夜 四
四
そして、目覚めたらそこはまったく知らない場所だった。
装束も食べ物も建物も眼にする物はみな見慣れないものばかり。後で知ったことだけど、そこは東極から大陸半分ほど離れた地区だったの。地図見たときは、それはもう驚愕だったわよ。
そのころからかしらね、不思議な夢を見出したのは。
夢を見ると、まったく別の人間としての生活があるの。そこで生きて、触れて、笑って。
そう現実の私は『夢想』の夢を見て、夢想の私は『現実』の夢をみるようになったの。
そのうち、あんまりリアルに幾晩も同じ夢を見るものだから、自然と柚や翔とも夢の話をするようになっていって。そうしたら、両方の世界で共通点がいくつもでてくるじゃない。
同じ町名覚えていたり、昼の給食の献立おぼえていたりしてね。
ゆえは何でかあんまり、夢の話はしたがらなかったけど。
いつしか私達は夢想界と現実世界の齟齬が、ほとんど感じられなくなっていった。
ある日、試してみようって事になったの。本当に、現実と夢想が同じなのか。私達の思い込みじゃなく、事実として私達は二つの世界を行き来しているのか。
手紙を、書いたの。
ゆえに。
ほら、ゆえだけは私も翔も柚も、現実では顔を合わせたことなかったのよ。
眠って、現実で目覚めたら朝一番に手紙を書いて、ポストに投函するって約束して、住所教えあって。どきどきしてなかなか寝付けなかったわ。今じゃ、笑い話だけどね。
その日も、夢想での一日も、ほとんど何も手につかなかった。そのせいで現実で寝坊して、明日華さんにたたき起こされた時、鼻先に白い封筒突きつけられて、きょとんとしたわ。
ゆえからの、手紙だった。
夜まで待てなくて、もう一度眠って夢想に行って、ゆえをたたき起こして確認したわ。ゆえの家にも、私からの手紙がちゃんと届いていたって。
嬉しかった、嬉しくてしかたなかった。目の前に居るゆえという男の子が、私が作り出した夢の幻想でなく、しっかりと存在する人だって知れて。
醒めれば消えてしまう、夢じゃないと自覚できて、本当に嬉しかったの」
語り終えた月の顔には不思議な陰影が見て取れた。
それですべて何も言えなくなり、ゆえは無自覚なまま唇をかむ。
夜空に視線を向けたままだった月はぽつりとつぶやいた。
「不思議ね」
「・・・・・・ん?」
「あの時はみんな一緒にいたのに、なぜあの人は私にだけ願いを託していったのかしら」
月がそう呟くと見上げた空を星が流れて行く。
ぼんやりとそれを眼で追ったゆえの耳に月の言葉が届いた。
「いつか、この理由がわかる時が来るのかもしれないわね」
「なんでそう思う?」
「さあ何となく。それよりもう寝よう、そろそろ授業終るだろうし」
空には流星群でも来ているのかひとつ、またひとつと星が流れていた。ぽろぽろと絶え間なく零れる一瞬の閃光をみつめながら、ゆえは眠りに身を沈めた。
『いつか』という少女の言葉が胸の底にゆたっていた。
※※※
夢想過去語り編、これにて終了です。
シリアス話、どうだったでしょうか?また感想もお願いします。
これからちょっと色々迷ってまして…ぶっちゃけていうと、ストックが切れてまして。
正確に言うと、ストックが途切れてまして。
六章は書けてないんですが、七章は仕上がってるんですよ(汗)
割り込み機能使えば問題なく連載できるけど、書下ろしもがんばれるならがんばりたいし。
考え中です。
ご意見あったら、聞かせていただけますか?
「とりあえず話飛ばしてもいいから早く載せろ」
「根性出せ、時間かかってもいいから書き下ろせ!」
など。
よろしくおねがいします。