第五章 夜 一
第五章 夜 遠い日の記憶 一
冷えた夜気が顔にあたり、意識がゆっくりとのぼっていく。
ゆっくりと瞼を持ち上げると銀砂を振りまいた夜空が映った。
頭上に広がり輝く星達を眺め、ぼんやりとゆえはなぜ星が見えるのかと考えた。
数分前まで視界を占めていたのは、安っぽいわら半紙と木目の浮いた机だったはずなのだが。
大儀そうに起き上がり周囲をぼんやりと見回し納得した。
ここは夢想界。
「眠れないの?」
からかうような声が後方から聞え振り返れば、薄墨の眼の少女が同じように体を起こしている。
今回の野宿は場所が悪かった。日当たりの悪いじめじめとした土地しか確保できず、山の派に入り込んでしま日中でも薄暗かった。肌に直接かかる風も冷気を孕んで冷たく、落ち葉も腐葉土に近く湿っている。油紙と布越しに横たわる地面は居心地が悪く、だから確かに寝付きにくかったが。
「・・・・・・正確には、向こうで眠たくて寝たんだろうな」
「まあ、昼ご飯の後。六限目。自習。なんて事になったら、寝るなって言う方が難しいわよね」
三拍子そろってるわ、と軽く笑い夜具代わりにしている厚手の外套を引き寄せる。今日は急な出張が入ったとかで担任がおらず、五限目の授業はプリントとなったため、少し前までそれをそれなりに必死に片付けていたのだったのだ。
「翔は来てないのか?」
「あれで結構真面目だから、今頃きっと睡魔と闘いながら必死にプリントやってるんでしょ」
「・・・・・・」
話題が、途切れる。
月がふと空を見上げると、その視線の先をつい、と光が流れる。
一面に天鷲絨を張ったような紺碧の空を、一筋の銀線が走る。それはまるで、銀刃が刻んだ斬撃の軌跡ようで。
「流れ、星」
月の呟きにつられて顔を上げれば、一呼吸後再び銀が流れる。
息を呑みそれを眺めていると、かすかな笑い声が耳に届いた。
「どうした」
「あの時もこんな空だったな、って思って」
「・・・・・・あの時?」
「四年前の」
「はあ?」
不審ぎみな響きでゆえが言ったのを聞きとがめ、しばし月は考え込んだ。瞳を瞬かせ眉をよせた後ようやくああ、と呟く。
「そっか・・・・・・そうだよね」
続いてなにやら眉を寄せたままくすくすと笑う月にゆえが向けたのは、先ほどより三割ばかり増した不信な視線だった。
「だからなんなんだよ」
「いや、ちょっと自分がおかしくて」
「・・・・・・おい?」
「何だか私ずっと今のあんたと一緒にいたように思ってたみたい。ゆえが昔の事を忘れているって事、忘れてたわ」
くすくすと透明な笑みを浮かべ月は笑う。
ざぁと音を立てて吹いた風が、茶と黒の髪をもてあそんだ。
「話そうか。四年前起こった、こと」
はじかれたように、ゆえは顔を上げた。それを笑みの残像を口許に残した月は、穏やかにも思える不思議な瞳をしていた。
「こうやって、四人で旅している理由よ。――――――宝珠の、事も」
聞きたい?、という問いかけに、頷くことでゆえは答えた。
※※※
草木香り緑もゆ皐月ですねぇ
ですが話は暗め。というよりシリアスめ
前回ほど定期連載できないかもしれませんが、気長に付き合っていただけどとありがたいです。
あと今回は(も?)サイトと改変部分があります。
前回差し込んだ最終話の関係で、矛盾点が出てしまったんので。
お時間ある方はサイトのほうと見比べてみてください~(CMです!)