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最弱属性の俺、空気を圧縮したら一撃で最強になった~空気魔法から始まる異世界魔法革命~  作者: 百花繚乱


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第86話 場を作る魔法

同じ操作を、何度も繰り返す。

手のひらの前、ほんのわずかな空間に意識を集中する。押さない。引かない。ただ、差を作る。

右側にわずかな高圧。左側に低圧。その差を保つ。

空気は、それに従う。流れる。自然に。

「……今のは安定してる」

背後から声がかかる。

振り返らなくても分かる。感知役だ。視線を外さずに頷く。

「昨日よりはな」

まだ狭い。手のひら一枚分の範囲を出ない。それでも、流れははっきりと存在している。消えない。崩れない。

ここまでは来た。

「……でも、それだと戦闘にならない」

感知役の指摘はもっともだった。

この程度の範囲では、実戦では意味を持たない。踏み込みの補助にも、衝撃の増幅にも、まだ足りない。

「分かってる」

小さく返す。

問題は次だ。この“差”をどう使うか。

ただ流れを作るだけでは足りない。戦闘に落とし込むには、もっと直接的な形が必要になる。

「……圧を溜めるんじゃない」

呟く。

「空間に“状態”を定義する」

言葉にしながら、イメージを組み立てる。

一点の圧縮ではなく、範囲としての条件。そこに入ったものに影響を与える“場”。

「……場、か」

感知役が反応する。

「流れじゃなくて?」

「流れは結果だ」

視線を少しだけ上げる。

「必要なのは、その前の段階」

流れが生まれる条件。

圧力差。それを空間として固定する。

「できるのか」

問いは短い。だが重い。

「やる」

迷いはなかった。手を下げ、一度深く息を吸う。

頭の中で組み立てる。範囲を広げる。

だが、ただ広げれば崩れる。だからまず“枠”を意識する。

空間の境界。見えない壁。その内側と外側で、条件を分ける。

「……」

ゆっくりと魔力を流す。今までよりも細かく、繊細に。

押し込まない。形を作る。そこに、差を定義する。

わずかに、空気が揺れる。

まだ弱い。だが「……できてる」

感知役の声。

「範囲が広がった」

手のひらの外へ、流れが広がっている。

それでもまだ、円にして一メートルもない。

だが、確実に“場”になっている。

「……もう少し」

さらに魔力を流す。維持する。差を崩さない。

だが、その瞬間。

「——!」

空間が歪む。流れが一気に暴れる。押し返されるような感覚。

「っ……!」

反射的に魔力を切る。

場が崩壊する。空気が一気に元に戻る。

静寂。わずかに遅れて、感知役が息を吐いた。

「……今の、危なかったな」

「ああ」

短く答える。

今のは制御を失いかけた。差を広げすぎた。

「範囲を欲張ると、維持できない」

感知役が言う。

「内側と外側の区別が曖昧になる」

その通りだ。差を作るには境界が必要だ。

それが崩れれば、ただの乱流になる。

「……やり直す」

もう一度、構える。

今度は範囲を絞る。欲張らない。まずは安定。

手のひらの前、半径一メートル。そこに限定する。

空間を切り分ける。内側と外側。その内側にだけ、条件を定義する。

圧力差。ほんのわずかでいい。強すぎれば崩れる。弱すぎれば意味がない。

「……」

集中する。時間をかける。急がない。形を整える。維持する。

——成立する。

「……安定した」

感知役の声。

今度ははっきりしている。

流れがある。崩れていない。場が存在している。

「……これなら」

小さく呟く。

その瞬間、足音が近づいた。

扉が開く。

「呼ばれたから来たが——」

前衛が入ってくる。

途中で言葉が止まる。空間の違和感に気づいたのだろう。

「……何やってる」

「ちょうどいい」

そのまま言う。

「少し試したい」

前衛は一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに理解した顔になる。

「踏み込みか」

「そうだ」

場はできている。あとは、実戦の動きに乗せる。

「合図で来てくれ」

位置を取る。前衛が軽く構える。感知役が少し後ろに下がる。全員の意識が揃う。

「……行く」

場を維持する。空間を固定する。差を保つ。

「今」

前衛が踏み込む。

その瞬間。場が反応する。流れが一気に加速する。圧が前に乗る。

「——!」

前衛の体が、一段深く踏み込む。明らかに、いつもと違う。

空間そのものが押し出したような動き。

剣が振られる。風が鳴る。壁に当たり、鈍い音が返る。

静寂。前衛がゆっくりと体を起こす。

「……今の」

低く言う。

「地面じゃないな」

その視線がこちらに向く。

「空間そのものが押してきた」

「……ああ」

頷く。

成功だ。完全ではないが、確実に届いている。

「ただ」

すぐに続ける。

「維持は短い」

場はすでに薄れている。差が崩れ始めている。

「連続では使えない」

「でも、一発なら十分だ」

前衛が言う。

その声に迷いはない。

「使いどころを間違えなければな」

それが全てだ。万能ではない。だが、意味はある。

「……これ、名前は」

感知役がふと聞く。

少しだけ考える。流れではない。圧縮でもない。

「……圧力場」

口に出す。それが一番近い。

「局所的に、条件を定義する」

空間に意味を持たせる。

「……いいな」

前衛が短く言う。それ以上の評価はない。

だが、それで十分だった。

場はまだ小さい。不安定だ。使いどころも限られる。

それでも。

「……戦える形にはなってきた」

小さく呟く。

あの深層でも。完全ではないが、通じる可能性がある。

だが同時に、分かっている。これでは足りない。

範囲も、持続も、精度も。

すべてが中途半端だ。

「……まだ先があるな」

前衛が言う。

「ああ」

頷く。

ここは入口だ。ようやく立てた、最初の足場。

その先にあるものは、まだ見えていない。

だが、確実に前に進んでいる。

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