表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱属性の俺、空気を圧縮したら一撃で最強になった~空気魔法から始まる異世界魔法革命~  作者: 百花繚乱


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/108

第70話 連携実験

森の奥は、さっきよりも静かだった。風が弱い。

枝葉の揺れも少なく、空気の流れが読みやすい。だが、それが逆に不気味だった。

何も起きていないわけじゃない。ただ、気配が抑えられている。

「……近い」感知役の女が小さく言う。声は低いが、確信がある。

「数は二。距離は……この先三十」指差しはしない。

だが、位置は全員に共有されている。視線、足運び、わずかな間。それだけで、伝わる。

「やるぞ」指揮官の一言。短いが、意味は重い。

今回は“試す”戦闘だ。ただ勝つためではない。繋げるための戦い。

俺はゆっくりと魔力を広げる。攻撃の準備ではない。

空気の層を整える。地面付近の流れを揃える。

呼吸に合わせて、わずかなリズムを作る。強制ではない。誘導。

三人の動きが、わずかに変わる。完全ではない。

だが、ズレが減る。踏み込みのタイミングが、ほんの少し近づく。

それだけでいい。「行く」前衛が踏み込む。

速い。だが今回は、予測できる。空気の流れが、その動きを先に伝えてくる。

その一瞬の差で、次の準備ができる。敵が反応する。

一人が後退し、もう一人が横に開く。

基本は同じ。連携前提の動き。

「右、来る」女の声。

それと同時に、俺は右側の空気をわずかに圧縮する。

完全な制限ではない。足場を“重くする”。踏み込みの初速を削る。

敵の動きが、一瞬だけ鈍る。

その瞬間。前衛が踏み込む。今度は、タイミングが合っている。

斬撃が入る。浅いが、確実な一撃。敵が後退する。

「……いい」小さく呟く。

まだ連携とは言えない。だが、重なっている。

次。もう一人が距離を詰めてくる。今度は正面。

「合わせる」声に出す。意識を共有するために。

空気をわずかに流す。前衛の踏み込みに合わせて、進行方向の抵抗を減らす。

同時に、敵の背後に流れを作る。逃げる方向を限定する。

選択肢を削る。敵が動く。避ける。だが、その軌道は限定されている。

そこに、次の一手が重なる。補助魔法が入る。前衛の速度が上がる。

今度は、ズレていない。

「……来る」自然と分かる。空気の流れが、次の動きを示している。

俺は振動を加える。大きくはない。だが、足元にわずかな不安定さを作る。

敵の体勢が、ほんの少しだけ崩れる。

その一瞬。前衛の一撃が深く入る。

「っ……!」短い息。

敵が膝をつく。完全なダメージではない。だが、明確に崩れた。

「今だ」声が重なる。

三人の動きが、初めて“同時”になる。

俺は空気を絞る。一点に。小さく、速く。エアショット。

だが、いつもとは違う。狙いはダメージではない。

動きを止めるための圧。衝撃が走る。敵の体がわずかに浮く。

その隙に、前衛が踏み込む。斬撃。今度は、完全に入った。

敵が崩れる。一人、無力化。

「……!」確かな手応え。

だが、まだ終わっていない。もう一人が動く。

距離を取りながら、こちらの様子を見ている。同じように連携してくる相手。

油断はできない。「左、回る」女の声。

それに合わせて、俺は左側の空気を操作する。

だが「……遅い」動きが合わない。前衛がすでに踏み込んでいる。

俺の制御が間に合わない。空気の流れがズレる。

敵がその隙を突く。反撃。前衛が受ける。体勢が崩れる。

「くそ……!」

連携が途切れる。さっきまで繋がっていた流れが、分断される。

「戻せ……!」

意識を集中する。空気を整える。再び、リズムを作る。

だが、一度崩れた流れは戻りにくい。

わずかな遅れが、連鎖する。

「右、警戒!」

「分かってる!」

声が交錯する。情報はある。判断も早い。だが、繋がらない。

「……まだ足りない」自分でも分かる。

精度が足りない。流れの維持ができていない。

それでも「続ける」諦めない。

小さくてもいい。繋ぎ続ける。空気を整える。

踏み込みに合わせる。呼吸を揃える。完全じゃなくていい。ズレを減らす。

それだけに集中する。数秒。短い時間。だが、その中で少しずつ戻る。

動きが揃い始める。

「……今」女の声。その瞬間。

全員が動く。今度は、ズレない。

前衛が踏み込む。補助が重なる。俺が流れを固定する。逃げ場を限定する。

敵が動く。だが、選択肢がない。

一瞬の迷い。そこに、全てが重なる。

最後の一撃。敵が倒れる。静寂が戻る。

風が、ゆっくりと流れる。誰もすぐには動かない。

数秒の沈黙。

「……今のは」前衛が低く呟く。

言葉を探している。

「悪くない」それだけだった。だが、十分だった。

「まだ不安定だな」補助役が続ける。冷静な評価。

「再現性がない」

「分かってる」頷く。

それが問題だ。さっきの連携は、成立した。だが、偶然に近い。

同じことを、もう一度できる保証がない。

「でも」女が静かに言う。

「方向は合ってる」

その一言で、空気が少し軽くなる。完全な成功ではない。だが、確かな手応えはあった。

「……次で固める」指揮官が言う。短く、はっきりと。

それが、この場の結論だった。

俺は息を吐く。体の力が、少し抜ける。だが、頭は冴えている。

見えてきた、足りないものが。精度、速度、そして、「……繋ぎ続ける力」小さく呟く。

連携は、一瞬じゃない。維持しなければ意味がない。

そのための魔法が、まだ足りない。

森の奥へ、再び進む。空気が流れる。その中で、今度は少しだけ確信があった。

これは、使える。ただし、まだ未完成だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ