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最弱属性しか使えない俺、魔法を科学で研究したら世界最強になりました ~空気魔法から始まる異世界魔法革命~  作者: 百花繚乱


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第7話 空気はどこにでもある

森の演習はその後も続いたが、俺の頭の中はほとんど別のことで埋まっていた。

エアショットは通用した。それは間違いない。

さっきのスライムは、確かに一撃で倒れた。火球のような派手さはない。爆発もしない。ただ空気が弾けたような音がして、衝撃が伝わり、魔物の核が潰れた。それだけだ。だが、あれは間違いなく攻撃魔法だった。

班の連中はまだ少し戸惑っている様子だったが、演習自体は順調に進んだ。

もう一体スライムを見つけたときは火属性の男子がきちんと仕留め、特に問題なく討伐が終わる。結局、俺がもう一度エアショットを使う場面はなかった。

それでも、班の空気は微妙に変わっていた。

「さっきのって本当に空気魔法なんだよな?」

帰り道で土属性の男子が振り向く。

「そうだけど」

「なんか、思ってたのと違うな」

彼は首をひねりながら言った。

「空気魔法って、もっとこう……風を起こすだけのやつだと思ってた」

その言い方に悪意はなかった。むしろ素直な疑問だろう。

俺は少し考えてから答えた。

「俺も最初はそう思ってた」

「え?」

「でもよく観察してみると、ただ風を起こしてるわけじゃないんだよ。空気が集まる感じがある」

自分で言いながら、頭の中で整理していく。

空気魔法の基本は、周囲の空気への干渉だ。教本にもそう書かれていた。ただし多くの人はそれを“風を起こす”ことだと理解している。だが実際にはもう少し複雑だった。

風というのは、空気が移動した結果だ。

だが俺の魔法は、最初に空気が一点へ寄る。そのあとで移動が起きる。

つまり、流れの順序が違う。

班の女子の一人が小さく言った。

「だからさっき、衝撃みたいになったの?」

「たぶん」

俺は頷いた。

「空気を押すんじゃなくて、集めてから解放する感じ」

火属性の男子が腕を組む。

「それって……圧力ってやつか?」

その言葉に、思わず笑いそうになった。

この世界にもその概念はあるらしい。

「そんな感じ」

「へえ……」

男子は少し感心したように言ったが、それ以上は深く追及してこなかった。彼にとっては、ただ珍しい魔法の使い方を見ただけなのだろう。空気魔法が最弱だという認識が覆ったわけではないはずだ。

それでも俺には十分だった。

演習場を出て、学園の石畳の道へ戻る。森の湿った空気から一転して、開けた場所の風は乾いていた。遠くでは別の班が戻ってくるのが見える。

俺はその流れを横目で見ながら、ふと空を見上げた。

風が吹いている。目には見えないが、木の葉が揺れているからわかる。

その動きを見ていると、昨日までとは違う景色に見えた。

空気はどこにでもある。それは当たり前のことだ。

だが当たり前すぎるからこそ、誰もそれを武器として考えないのかもしれない。

火魔法は火を生む。水魔法は水を操る。土魔法は地面を動かす。

だが空気は、常にそこにある。生まれた瞬間から、誰もが呼吸している。

だからこそ、魔法としての価値が低く見られてきたのかもしれない。

だが俺は違うことを知っている。空気はただの“何もない空間”じゃない。

前世の知識が頭をよぎる。空気には質量がある。密度がある。圧力がある。振動もする。音も伝える。燃焼にも関わる。

つまり、現象が多い。

現象が多いということは、研究の余地が多いということだ。

俺は歩きながら、頭の中でエアショットの構造をもう一度整理した。

空気を圧縮する。

圧力を維持する。

前方へ解放する。

これが基本だ。

だが改めて考えてみると、まだ無駄が多い。圧縮の時間が長いし、魔力の流れも不安定だ。衝撃も広がってしまっている。もし圧力をもっと集中させられたら、威力は上がるはずだ。

つまり問題は形だ。今のエアショットは、空気の塊をそのまま飛ばしている。球のような形だ。だから衝撃は広がる。

もしこれをもっと細くできたら。

歩きながら、俺は思わず足を止めた。

細く。長く。空気を線のように保つ。それができれば、衝撃は一点に集中する。

つまり打撃ではなく、切断に近い威力になるかもしれない。

前世で見た映像を思い出す。高圧の水を細く噴射する機械が、金属を切断していた。圧力を一点に集中させれば、それだけで刃になる。空気でも同じことができるかもしれない。いや、むしろ空気の方が向いている可能性もある。

水と違って重さが少ない。拡散しやすいが、逆に言えば制御次第で高速化できる。

「……なるほど」

小さく呟いた。

さっきまでぼんやりしていた考えが、急に形になり始める。

エアショットは打撃。だが次の段階は、もっと鋭い攻撃にできるかもしれない。

空気を刃の形にする。その発想が浮かんだ瞬間、胸の奥が熱くなった。

研究が進むときの感覚だ。仮説が生まれる瞬間。まだ何も証明されていない。だが可能性は確実にある。

俺は再び歩き出した。

学園の塔が夕陽に染まっている。最弱魔法と呼ばれた空気属性。だが、研究すればするほど思う。

この魔法は弱いんじゃない。まだ誰も、本気で使おうとしていないだけだ。

そしてその最初の一人が、俺だ。

空気はどこにでもある。だからこそ、どこでも使える。

圧力。

振動。

流れ。

そして、刃。

俺は空を見上げた。風が静かに流れている。

その見えない動きを見つめながら、次の研究テーマを心の中で決めた。

エアショットの次。もっと鋭い魔法。空気を斬撃に変える。

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