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最弱属性の俺、空気を圧縮したら一撃で最強になった~空気魔法から始まる異世界魔法革命~  作者: 百花繚乱


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第30話 新魔法誕生――ソニックブーム

ダンジョンの奥へ進むほど、空気は明らかに変わっていった。

重い。湿っている。だがそれだけじゃない。目には見えない“揺れ”が、常にこの空間を満たしている。

「……さっきより、変じゃない?」

リナが小声で言う。

「感じるか?」

「うん。なんか、ずっとビリビリしてる」

正確だ。この辺りは、振動が強い。自然に発生しているレベルを超えている。

「……いい環境だな」

「普通は危ないって言うところじゃない?」

「危険は情報だ」

「出た、それ」

軽く笑われるが、否定するつもりはない。

この空間は“ヒント”に満ちている。そう考えた瞬間だった。

ドンッ。低く重い振動が、足元から伝わる。地面が、わずかに揺れた。

「……!」反射的に視線を向ける。

通路の奥。暗闇の中で、何かが動いた。次の瞬間。

ガァァァァァァッ!!轟音。咆哮が、空間を震わせた。

「っ……!」鼓膜が揺れる。

空気が押し寄せる。ただの音ではない。“衝撃”だ。

「これ……今までとレベル違うよ!」

リナが顔をしかめる。

視界の奥から現れたのは、大型の魔物だった。

岩のような外皮。分厚い筋肉。全身が硬質な殻で覆われている。

そして何より、その喉。震えている。

「……なるほどな」

思わず呟く。

「何が!?」

「こいつ、振動を使ってる」

「今それ!?」

だが間違いない。あの咆哮は、ただの威嚇じゃない。空気を震わせ、衝撃を与える“攻撃”だ。

魔物は地面を蹴り、一気に距離を詰めてくる。

「来る!」

リナが炎を放つ。爆ぜる火炎。だが、

「硬っ!?」炎が弾かれる。外皮が、ほとんどダメージを受けていない。

「表面が強すぎる」

分析は一瞬で終わる。リナが舌打ちする。

「じゃあ、あんたのやつ!」

「ああ」

俺は手を振る。

「エアブレード」

圧縮した空気の刃が、魔物の側面を切り裂く。

が。「浅いな」表面を削るだけで、致命傷には程遠い。

「これもダメか……!」

リナが距離を取りながら叫ぶ。

魔物は再び咆哮する。ガァァァッ!!空気が震える。体の内側に響く。

「……」

その瞬間、思考が静かに動いた。

外皮が硬い。表面攻撃は効かない。だが、さっきの振動。あれは内部に届いていた。

「……そうか」

「何か思いついた!?」

リナが叫ぶ。

「内部だ」

「え?」

「外じゃなくて、中を壊す」

振動は、表面を無視する。空気を通して、直接内部に届く。

ならば、「振動を叩き込めばいい」結論は出た。

問題は一つ。できるかどうかだ。

「時間を稼げる?」

「任せて!」

リナが前に出る。炎を連続で放つ。視界を遮るように、爆発を起こす。

「こっち見なさい!」

魔物の意識がリナに向く。その隙に、俺は深く息を吸った。空気に意識を集中する。

圧縮ではない。切断でもない。振動。そして共振。

同じ振動を、揃える。繰り返す。速く。正確に。

「……」

空気が、わずかに震える。

揃える。維持する。速くする。魔力を流す。振動を重ねる。重ねる。重ねる。

ピン、と。何かが揃った。空気が、一瞬だけ静止する。完全な同期。

「……来たな」

その瞬間、すべてが理解できた。今ならいける。

「リナ、離れろ!」

「了解!」

リナが横に跳ぶ。魔物がこちらに向き直る。咆哮を放とうとする。

だが、その前に。手をかざす。空気が震える。

だが今回は違う。広がらない。乱れない。一点に、収束している。

「――行け」

振動を、叩き込む。一瞬の静寂。

そして、ドンッ。見えない衝撃が走る。音が遅れてついてくる。

空気そのものが、爆発したような感覚。魔物の体が、一瞬だけ止まる。

次の瞬間。内部から、崩れた。外皮はそのままに、内側が破壊される。

膝をつき、倒れる。地面に、重い音が響いた。

「……」

静寂。数秒遅れて、リナが口を開く。

「……今の、何?」

「振動だ」

「いやそうじゃなくて」

呆れたように言う。

「何あれ、見えなかったんだけど」

「見えない攻撃だからな」

「それが一番怖いって」

苦笑する。

俺は倒れた魔物を見下ろした。確かに効いている。外皮はほぼ無傷。だが内部は完全に破壊されている。

「……成功だな」

小さく呟く。

「名前とかあるの?」

リナが興味津々で聞いてくる。

少しだけ考える。振動。音。衝撃。

「……ソニックブーム」

「そのまんまだけど、いいね」

リナが笑う。

「でもそれ、やばくない?」

「まだ未完成だ」

事実だ。維持は短い。精度も甘い。連発もできない。

だが、確実に形になった。

「……空気って、ここまでできるんだね」

リナがぽつりと言う。

「まだこんなものじゃない」

「え?」

俺は前を見る。ダンジョンのさらに奥。まだ未知が残っている。

圧力。爆発。振動。

そして、その先。

「空気は、まだ進化する」

静かに言い切る。

リナが、少しだけ楽しそうに笑った。

「……ほんと、どこまで行くんだろうね、あんた」

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