表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱属性しか使えない俺、魔法を科学で研究したら世界最強になりました ~空気魔法から始まる異世界魔法革命~  作者: 百花繚乱


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/42

第20話 新しい研究

爆発の余韻が、まだ空気に残っていた。

訓練場の端、さっきの実験で舞い上がった砂がゆっくりと落ちていく。地面には浅い焦げ跡と、抉れたような痕が残っていた。

威力としてはまだ小さい。だが、性質は明らかだった。爆発。

「……やっぱりな」俺はその跡を見下ろしながら、小さく呟いた。

空気を圧縮し、そこに火を加える。急激な燃焼。圧力の上昇。そして破裂。

理屈通りの現象だ。

「“やっぱり”って何?」横からリナが覗き込んでくる。

少しだけ煤が頬についていた。

「予想してたってこと」

「え、マジで?」

「ある程度はな」

「すご……」

素直に感心した顔をする。だがその目はすぐにまた輝き始めた。

「でもさ、今の」

「不安定だな」

言葉を先に取る。

「えー、言おうと思ったのに」

「どう見てもそうだろ」

俺は地面を指でなぞる。

「圧力がバラついてる。火を入れた瞬間に制御が崩れてる」

「たしかに……ドンって感じだった」

「“ドン”じゃダメだ」

「いやわかるけどさ」

リナは苦笑しながら腕を組んだ。

「じゃあどうするの?」

核心の問いだ。俺は少しだけ考え、整理する。今の問題は三つある。

「まず一つ」指を立てる。

「圧縮が足りない」

「え、あれでも?」

「足りない。密度が中途半端だから、燃焼が安定しない」

「なるほど……」

「二つ目」さらに指を立てる。

「タイミングがズレてる」

「ズレてる?」

「火を入れる瞬間に、空気の形が崩れてる」

「……あー、確かにちょっと揺れてた」

「そのせいで、圧力が一気に逃げる」

結果として、爆発が“ただの破裂”になる。

本来なら、もっと制御された形でエネルギーを放出できるはずだ。

「三つ目」最後の指を立てる。

「制御できてない」

「全部じゃん」

「全部だな」即答する。

リナは一瞬呆れた顔をしたあと、ふっと笑った。

「でもさ」

一歩前に出る。

「逆に言えば、そこ直せばいいってことでしょ?」

「……そうなるな」

シンプルな考え方だ。だが間違っていない。問題がわかっているなら、あとは潰していくだけだ。

「じゃあやろうよ」リナが当然のように言う。

「何を?」

「だから」

指先に小さな火を灯す。

「これの続き」

迷いがない。俺は少しだけ息を吐いた。

「……一つずつやるぞ」

「オッケー」

「まずは圧縮」

俺は手をかざした。今度はさっきよりも意識を集中させる。

空気を集める。圧縮する。逃がさない。密度を上げる。だがやりすぎると危険だ。

さっきの爆発でわかっている。制御できない状態で圧縮を上げれば、ただの暴発になる。

「……ここまで」

一定のラインで止める。さっきより明らかに重い。だがまだ安定している。

「次、タイミング」

「うん」

「火を入れる瞬間に崩れないようにする」

「それ、どうやるの?」

「……今から考える」

「おい」

リナが軽く笑う。だがその目は楽しそうだ。

俺は魔力の流れに意識を向けた。エアブレードと同じだ。

形を維持する。崩れないように固定する。

つまり、「外側を強くする」

「外側?」

「空気を包んでる魔力を強化する」

「あー……枠を固くする感じ?」

「そんなところだ」

理解が早い。説明が楽で助かる。

「じゃあ、いけそう?」

「試す」短く答える。

俺は魔力の流れを調整する。内側は圧縮。外側は固定。そのバランスを取る。崩れないように。逃げないように。

「……いける」

手応えがあった。さっきより安定している。

「リナ」

「うん」

「今度はゆっくり入れろ」

「了解」

リナが炎を構える。今度はさっきより慎重だ。距離を測る。タイミングを合わせる。

そして、炎がゆっくりと近づく。

接触。ボッ。小さく、だが鋭い音。さっきのような暴発ではない。

圧縮された空気の中で、火が一気に広がる。だが、破裂しない。

「……お?」

リナが目を見開く。炎が膨らみ、そして一瞬だけ収束する。

次の瞬間。パンッ!鋭い音とともに、前方へ衝撃が飛んだ。地面に小さな穴が空く。

「……今の」

「制御できたな」

完全ではない。だがさっきとは明らかに違う。方向性がある。意図して放出できている。

「やばくない?」

リナが笑う。

「さっきより全然いいよこれ」

「ああ」俺も頷く。

これなら、魔法として成立する。エアショットやエアブレードとは別系統の攻撃。

爆発。しかも制御可能。

「……これ、完成させるぞ」自然と口に出ていた。

リナがすぐに反応する。

「もちろん」

その顔は、完全に乗っている。

「名前どうする?」

「まだ早い」

「えー」

「完成してからだ」

「ケチ」軽く笑う。

だがそのやり取りの中で、はっきりとした感覚があった。一人でやる研究とは違う。役割が分かれている。

空気と火。理屈と感覚。それが噛み合っている。

「……効率いいな」

「でしょ?」

リナが得意げに言う。

「一人でやるより、絶対早いよ」

「認める」

素直に頷いた。この組み合わせは強い。まだ未完成だが、方向は見えた。

空気と火。それを組み合わせた魔法。爆発。

そして、さらにその先。俺は一瞬だけ、頭の中に別の可能性を思い浮かべた。

振動。

音。

まだ手をつけていない領域。だがそれは、今すぐではない。

まずはこれだ。

「……次は威力を上げる」

「いいね」

「その次は安定化」

「うん」

「そして実戦」

そこまで言って、リナがにやりと笑った。

「楽しみすぎるんだけど」

「同感だ」俺も小さく笑う。

研究はまだ始まったばかりだ。だが確実に、次の段階に進んでいる。

空気魔法は、もう最弱じゃない。そしてこの先は、もっと面白くなる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ