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最弱属性しか使えない俺、魔法を科学で研究したら世界最強になりました ~空気魔法から始まる異世界魔法革命~  作者: 百花繚乱


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第13話 新魔法誕生

夜の訓練場は、昼間とはまったく別の場所のように静まり返っていた。

風はほとんどない。空気は重く、音も吸い込まれるように消えていく。その中で俺は、ただ一人、同じ場所に立っていた。

何度も繰り返してきた動作。何度も失敗してきた工程。

だが、今日は違う。形は作れるようになった。維持も、一瞬ならできる。あとはそれを繋げるだけだ。

圧縮。

維持。

形状固定。

そして、放出。その一連の流れを、頭の中で何度もなぞる。曖昧なイメージは排除する。

長さ、太さ、密度。すべてを具体的に思い描く。刃を作る。ただの空気ではない。“切るための形”を作る。

「……いくか」小さく呟き、手を前にかざす。

まずは魔力。体の奥から、ゆっくりと引き上げる。

焦らない。急がない。細く、まっすぐに流す。一本の線を作る。その中に空気を押し込む。

圧縮。

維持。

空気が集まる感覚。

だが今はそこに留まらない。外側から魔力で包み込み、形を固定する。逃がさない。広げない。線の中に閉じ込める。

止まる。空気が、線のまま存在している。これまでより明らかに長く、安定している。

わずかに空間が歪む。見えないはずのものが、そこにあるとわかる。

「……できてる」思わず息が漏れる。だがまだ終わりじゃない。ここからが本番だ。

放出。この形のまま、前へ撃ち出す。俺は標的に立てた板切れへ視線を向けた。

距離は四歩。エアショットと同じ条件。だが結果は違うはずだ。魔力の流れを一気に解放する。

――スッ。音がなかった。風を切る音も、衝突音もない。ただ、何かが通った感覚だけが残る。

次の瞬間。板が、ずれるようにして割れた。

「……は?」思わず声が漏れた。

板の中央に、細い線が走っている。まるで刃物で切ったような断面。叩いた痕ではない。へこみでもない。

完全に、切れている。俺はゆっくりと近づき、その断面を指でなぞった。滑らかだ。

無理やり裂けたわけではない。抵抗なく、スッと切り抜けた跡。

「……これが」呟きながら、割れた板を持ち上げる。エアショットではあり得ない結果だった。

あれは“押す”魔法だ。衝撃でへこませるだけ。だがこれは違う。

“切る”魔法だ。

同じ空気。同じ圧縮。それでも形が違えば、ここまで結果が変わる。俺はその場に立ったまま、しばらく動けなかった。

頭の中で何度もさっきの流れを再生する。魔力を細く流す。形を作る。空気を閉じ込める。維持する。そして放出する。

すべて繋がっている。偶然じゃない。再現できる。

「……もう一回」確認する必要がある。再現性がなければ意味がない。

俺は板の代わりに、地面に落ちていた細い木の枝を立てた。さっきよりも小さい標的。だが問題ない。

もう一度、魔力を流す。今度はさっきよりも落ち着いて。手順をなぞる。

圧縮。

維持。

形状固定。

そして放出。スッ。やはり音はない。

次の瞬間、枝が二つに分かれて地面に落ちた。

「……成功、だな」今度ははっきりと言えた。偶然じゃない。確実に成立している。

胸の奥から、じわりと熱が広がる。達成感。それと同時に、確信。

空気魔法は弱くない。少なくとも、ここまでできる。

俺はゆっくりと手を下ろした。視線の先には、切断された板と枝。それがすべてを証明していた。

「……名前、どうするか」自然と口に出る。

新しい魔法には名前が必要だ。特徴は明確だ。空気を圧縮し、刃の形で放つ。

なら「エアブレード」

短く、シンプルに。だが内容はまったく単純じゃない。

圧縮、制御、形状維持。

複数の工程を組み合わせた魔法。エアショットとは別物だ。

俺はもう一度、切断された板を見下ろした。ここまで来た。

だが「……まだだな」思わず呟く。

威力は上がった。だが完璧じゃない。維持時間はまだ短い。発動にも時間がかかる。

戦闘で使うには、もっと安定させる必要がある。それでも、確実に一歩進んだ。

最弱と呼ばれた空気魔法が、攻撃として成立した。しかもただの攻撃じゃない。

斬撃。明確な殺傷能力を持った魔法。

俺は拳を握った。研究すれば強くなる。その仮説は、もう証明された。

「……次は実戦だな」独り言のように呟く。

机上の理論は完成した。あとは、それが通用するかどうか。実際に戦って確かめる。

訓練場の静寂の中、俺はもう一度だけ手をかざした。

エアブレード。見えない刃が、確かにそこにあった。

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