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第十七話 エレナ・シルヴィアの自明の理と涙



 エレナ・シルヴィアは宿屋に駆け上がってきた。ノックもせず、ライヴァンの部屋に入り込む。

「シルヴィ! 女性が! ……シルヴィ?」

 エレナ・シルヴィアは目に涙をためながらも決意を秘めてライヴァンの両手を握った。

「クリスタリウム・ペイク。必ず登りましょう。あなたの国を助けましょう」

「あ。ああ。君の森もね。泣いているじゃないか。一体」

「涙なんていつだって流れるモノよ。そんな事より、装備は決めたの?」

「いや、この二点で考えている。森のアミュレットをはめるかその他のアミュレットか……」

「森の?……。ライにはいらない森のアミュレットではないの?」

 エレナ・シルヴィアがその美しい瞳をくりっと大きくさせて驚く。その瞳がまた愛らしい。

「君を守ることもある。君に属したアミュレットをどこにつけようか悩んでいたんだ。君ならどこにつける?」

 おどけてライヴァンはエレナ・シルヴィアを見る。ただ、エレナ・シルヴィアをしのぶモノがほしかっただけだ。つける所なんてどこでもいい。

「どこにつけるかはわからないけれど、森のアミュレットならこれを。シルヴィアンレイクのアミュレッよ」

 エレナ・シルヴィアが両手を開くと深い翡翠色をしたアミュレットが小さく一つころんと転がっていた。

「君がとても大切にしている特別なアミュレットじゃないか。君の命のようなモノじゃないのか? そんな大切なモノを……」

「大丈夫。これが壊れても私は死なないわ。私が……。なんでもない。さぁ、これをレイナルドに預けに行きましょう」

 エレナ・シルヴィアが手を引く。いつの間にか二人の間に入っていた亀裂は消えていた。ただ、隠れた亀裂は深くより一層深刻なものと化していた。ヴァレリアンは二人がレイナルドの元へ行く後ろ姿を見てうまく行ったんだ、とほっとしていた。あの二人が不機嫌だと天から雷でも落ちてきそうだったからだ。天変地異を呼び起こす勢いだったのだ。それが立ち消えし、安心してヴァレリアンは自分の準備を始めたのだった。


 翌朝、エレナ・シルヴィアはライヴァンとヴァレリアンが採掘の準備をしているのを見てびっくりした。

「ヴァレリアンも行くの?」

「ああ。つけておいて損はないスキルだからね」

「そう。じゃぁ、装備は私が進めて良いの?」

「僕はいつも登山しかしてないから、君達とは登山の後で別れることになる。僕の装備は別にいらないよ」

「そうなのか? ヴァレリアン」

 ライヴァンが驚いてみる。

「僕は山男なんだよ。山がないと生きていけないからね。どこかまた素晴らしい山を見つけて登るよ」

「そう。じゃ、二人とも気をつけて」

 エレナ・シルヴィアが小さく手を振ると男二人は冗談を言い合って去って行く。


 私もあの中に入れたら良いのに……。


 わき上がった想いにまるで雷が落ちたかとにエレナ・シルヴィアは我に返る。


 今、何考えたの? ライと一緒にいられるだけでいいじゃないの。生命の泉を復活させたら私の使命は終わって、ライヴァンが帰るのを見守るのよ。


 エレナ・シルヴィアに湧き上がった自明の理にはこの生命の泉の枯渇の問題を回避する使命も示していた。このためだけに生まれてきたのだ。そしてライヴァンと出会ったのも必然。偶然ではなかっった。天で操作されている運命に翻弄されるのは好きではないが、ライヴァンを守るためなら何でもする。そして森の命も……。エレナ・シルヴィアの頬に一筋の涙が流れたのだった。

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