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第十一話 炎のアミュレット、エンシャント・フレイム・トーチ


 湖から戻ってきて朝食を食べる。

「後で、炎の装飾品を見に行こう」

 ライヴァンは言う。周りから長年の連れ添った夫婦のようにミンラレテいるとはつゆ知らず。

「いいわね。何があるかしら」

 装備の一部はアクサリーにもなる。エレナ・シルヴィアはそんな装備があれば、と心が浮き立っていた。

「嬉しそうだな」

「炎のエレメントの物なんてはじめてだもの」

「ああ。そうか。シルヴィは森のエレメントとしか接したことが無かったんだな」

「ええ」

 そんな会話をしている二人に冒険者が声をかける。

「よう。兄ちゃん。若い嫁さんでよかったな-」

 「嫁? ああ。シルヴィの事か。彼女はただの同伴者だ。それよりクリスタリウム・ペイクの事を知りたいんだが」

「今年は異常な寒気が居座ってかなり手強いそうだ。兄ちゃん、姉ちゃん達はそこへ行くつもりか? 今年は辞めといた方がいいぜ。お。俺の相方が起きてきた。じゃ、な。クリスタリウム・ペイクの加護を祈っているよ」

 そう言って冒険者は去る。

「そうなのか。シルヴィは寒さは大丈夫か?」

「炎の装飾品でそう言う物を身につければ大丈夫じゃないの? それで魔法も使いやすくなるし」

「そうか。じゃ、行こうか」

「そうね」

 食器を片付けて酒場をでる。もう、店は動き始めていた。早朝に出る冒険者も多い。ここで諸々の物を調達していくのだ。エレナ・シルヴィアふと気になった店があった。アミュレットの店だ。ライヴァンがそれに気づいて入ろう、と言う。エレナ・シルヴィアの目が輝く。その輝きに囚われてしまいそうになったライヴァンは視線をそっとそらして店へ入る。

 様々なエレメントのアミュレットがあった。護り石のような役割を持つものだ。二人は炎のエレメントが付いたものを探していた。

「これ……」

 エレナ・シルヴィアがそっと掌に乗せてみる。細かい細工された土台の真ん中に炎のエレメントを込めたルビーが輝いていた。

「それに目をつけるとは、なかなかの目利きだね」

 店の奥で店番をしている中年の男がいう。

「それは炎のエレメントを扱う職人がわざわざ作った物だ。だが、普通の目ではそれは見破れないようになっている。あんた達は相当な目を持ってるね」

「まぁ……そうですね」

 エレナ・シルヴィアがエレメントの塊なのだから反応するのは当然だ。

「誰にも売るつもりは無かったが、あんた達にやろう。ほら。このチェーンでお嬢さんにつけて上げなさい」

 そう言ってかなり高級そうなチェーンをライヴァンは渡される。

「そのアミュレットは『エンシャント・フレイム・トーチ』という。大事にしてくれよ」

「主人、価格は……」

「通常の値段だ。特別な物だが、特別な人間にしか手に取れないトラップがかかってるからな。主人が見つかった祝いだ」

「では、これを」

 ライヴァンが書かれてる値札通りに金を支払う。エレナ・シルヴィアは不思議そうにまだそのアミュレットを掌に乗せて見つめている。

「かけてやんな」

「ああ」

 ライヴァンはアミュレットをチェーンに通すとエレナ・シルヴィアにつけてやる。エレナ・シルヴィアは鏡に映る自分を珍しげに見つめる。

「これで、炎の装備品は買えた。フォージロックだな。目指すのは」

「クリスタリウム・ペイクに行くのか? 今年のヤツは危険らしいぞ。それを買えて良かったな」

「ああ。ありがとな。主人」

 まだアミュレットを見ているエレナ・シルヴィアの手を引いて店をでる。

「とにかく、行くだけ行ってみよう」

「ええ。そうね」

 エレナ・シルヴィアはまだ上の空だ。

「シルヴィ!」

 目の前で猫だましを打ってやっとエレナ・シルヴィアは意識が戻った。ライヴァンは自分の中で驚いていた。なんと、頬にキスしようと考えたからだ。好きでもない女性にキスするなどと考えられない。

 

 好き、なのか? 私は……。

 

 今度はライヴァンが物思いにふける番だった。それをティアが尻尾で鼻をくすぐり、くしゃみをして正気に戻った。じっとエレナ・シルヴィアを見る。

「どうしたの? ライヴァン」

「いや、何でも無い」

 仮に好きになったとしても妖精と人間の間に流れる大きな河は渡れない。ライヴァンはさっきの考えを思考の奥底へ沈めてしまったのだった。

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