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水月鏡花―中華恋愛譚・静かに灯る初恋―  作者: 麻倉ロゼ
第一章「氷心、春に融く」

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第十三話「揺らぎ」2

第十三話「揺らぎ」は6分割で更新していきます。これ2はつ目です。

 仲達ちゅうたつは頷いた。

「……そうか。ならば、法のことわりに従って裁こう。」

厳粛な空気が流れ、ひとつの事件が

終結したことを告げる。


しかし次の瞬間――

「――それはそうと!! 春燕しゅんえん殿〜〜!!!」

突如として、雷鳴のような声が室内に響き渡った。

「……始まった。」凌偉りょういが小さくため息をつき、

無言で春燕の前に立つ。


「おい、凌偉! 誰が“敬法守令(法を尊び、法令を守る)”と

 “明法達理(法を明らかに理解し、理を通す)”を

 教えたと思っている!」

つい先ほどまで威厳に満ちていた県令が、

まるで孫を叱る祖父のような調子になる。

「まったく、この女好きめ……。」

凌偉は眉をひそめる。


春燕は思わず口元を押さえた。

笑ってはいけない――けれど、あまりの

ギャップにふっと笑みがこぼれる。

「はっはっは! やっと笑ったな、春燕殿!」

仲達は満面の笑みで春燕の両手を取り、

ぶんぶんと握りしめた。

「この間の件、街の医家や薬家たちも褒めておったぞ!」

「ありがとうございます。」

春燕は頬を染め、深く頭を下げた。

「まったく……!素直で可愛らしいのう!」

仲達は目を細め、嬉しそうに笑う。


「どうりで凌偉が屋敷に閉じ込めて、誰にも

 見せたがらぬわけだ。独り占めとはずるいぞ、凌偉!」

「……そんなことはしていません。」

仲達に背を叩かれながら、凌偉は淡々と答える。

声の温度が低すぎて、春燕は内心ひやひやしてしまう。

「ははは! 照れるな照れるな!」

「照れていません。」無表情のまま答える凌偉。

「帳場でもいつも一緒に仕事しているのだろう?

 夜には庭で星を見ているとか!」

「……流石は県令殿。随分とお詳しい。」

凌偉の視線が遠くに飛ぶ。


春燕は思わず目を丸くした。

――そんなことまで知られているの?


「商人の街では情報が命だからな!」

豪快に笑い飛ばす仲達。

笑いが収まると、仲達は二人を静かに見つめた。

その目の奥には、深い慈しみが宿っていた。

「凌偉殿。そこまで心を許せる相手が現れたのだ。

 ……もう、良い頃合いではないか。」

春燕の胸が、静かに高鳴る。

横顔を見ると、凌偉はただ真っ直ぐ前を向いていた。

次回の更新は【明日21時頃】です。

春燕と凌偉、それぞれの心の距離が少しずつ

近づいていく時間を、

皆さまにも見守っていただけたら嬉しいです。


「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、

ブックマークや応援をしてもらえると励みになります。

感想もとても嬉しいです。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

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