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水月鏡花―中華恋愛譚・静かに灯る初恋―  作者: 麻倉ロゼ
第一章「氷心、春に融く」

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第十三話「揺らぎ」1

第十三話「揺らぎ」は6分割で更新していきます。これ1はつ目です。

 琳家の夜の乱闘から数日。

騒ぎを起こした男たちは県尉けんい(軍事と警察をつかさどる

官職の名)に引き渡され、法の裁きを待っていた。


倉庫番・景元けいげんの妻、芳茵ほういんは街の医家と

薬家の手も借りて回復に向かい、母子ともに

元気を取り戻しつつある。


そして今日――凌偉りょうい春燕しゅんえんは県令(県知事にあたる役職)・魏仲達ぎちゅうたつから呼び出しを受けていた。

街の中心、重厚な造りの建物。

その堂々とした佇まいに、春燕は自然と

背筋を伸ばした。


「おお、凌偉殿! 久しいな!」

現れた仲達ちゅうたつは六十代後半ほど。

白髪まじりの整えられた髪とひげ、背筋の通った体。

威厳に満ちていながら、どこか人を惹きつける温かさがあった。


「仲達殿。お久しぶりです。」凌偉が一礼する。


「例の男、口を割った。――今回の騒ぎ、

 周家に頼まれたらしい。」

「周家?」

凌偉が眉を寄せる。

周芳茹しゅうほうじょという娘に、心当たりがあるだろう。」

「ああ……。」凌偉の声が低く落ちた。


春燕は、その名に聞き覚えがあった。

――以前、屋敷を追い出された娘。

帳場で問題を起こしたという。そして、その後に

凌偉の悪い噂を流した張本人。


「追い出されたあと、父親に泣きついたようだ。

 ……まったく、女の恨みは恐ろしいな。」

仲達は苦笑しつつも、目だけは笑っていなかった。

「押収した塩も見たが――あのような粗悪品、

 琳家が扱うはずがない。」

その一言に、春燕は息を飲む。

仲達の言葉には、琳家の商いに対する深い信頼があった。

長年築かれてきた関係の重みが伝わってくる。


「男の作った偽の契約書、居宅への侵入、

 塩の不正輸送……。処罰の希望はあるか?」

凌偉はしばし沈黙した後、静かに答えた。

「法のことは、仲達殿にお任せします。」

次回の更新は【明日21時頃】です。

春燕と凌偉、それぞれの心の距離が少しずつ

近づいていく時間を、

皆さまにも見守っていただけたら嬉しいです。


「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、

ブックマークや応援をしてもらえると励みになります。

感想もとても嬉しいです。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

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