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水月鏡花―中華恋愛譚・静かに灯る初恋―  作者: 麻倉ロゼ
第一章「氷心、春に融く」

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間の話 6

「それでね!愁飛しゅうひ様が私を抱き上げて、屋根から

屋根へ跳んで行ったの!空を舞ったときなんて、

まるで鳥になったみたいだったの!」

春燕しゅんえんは頬を紅潮させ、楽しげに両手を広げてみせた。

その様子を見つめながら、雪麗せつれいは胸の奥が

ふっと温かくなる。


――お嬢様、本当に可愛らしい。

鳥になったみたいだなんて……。


もしお嬢様が鳥なら、きっとうぐいすだ。

春を告げる美しい声をもつ鳥。

いや、つばめというお名前の通り、燕もまた

愛らしいけれど――。


いや、それよりも。


「……触れたのですか?」

雪麗は静かに、しかし鋭く隣の愁飛に視線を向けた。

「お嬢様の柔肌に。」


「柔肌って。」愁飛は吹き出す。

「言い方が物騒だな。」


「許可を取ってください。」

雪麗は微動だにせず言い切る。

「ははっ。誰に?」愁飛が肩を揺らす。

「いいじゃないか。春燕も楽しかったんだろ?」


「はいっ!」春燕は満面の笑みで頷いた。

「お嬢様。」雪麗の声にかすかな怒りが混じる。

「抱きかかえられていたとはいえ、屋根を

 飛び越えるなんて……危険すぎます。」


「えー!いいじゃない!」

愁飛が楽しげに手を伸ばす。

「ほら、もう一度やってみようか?」

「えっ?」と春燕が驚く間もなく、愁飛が軽々と

お姫様抱っこをして、春燕の体をふわりと

空高く放り投げた。


「お嬢様っ!!!」

雪麗の顔から血の気が引いた。


春燕の体が、屋根と同じ高さまで舞い上がり――

次の瞬間、愁飛の腕の中へふわりと戻ってきた。


「お嬢様!ご無事ですか!?声も出せないほど

 怖かったのでは!?」雪麗が駆け寄る。

「〜〜すごいっ!!!雪麗、見た!?屋根の上まで

 見えたの!あっちの山まで全部!」

春燕は興奮のあまり頬を上気させている。

雪麗は、へなへなと力が抜けてその場に膝を

つきそうになった。


「春燕は、思ってたよりおてんばだな。」愁飛が笑う。

「お嬢様を危険な目に遭わせないでください!」

雪麗が怒鳴った。その声には、普段の冷静さの

欠片もなかった。

「それに――また、お嬢様の柔肌に触って!」


「はははっ!」愁飛はおかしくてたまらないと

いった様子で腹を抱える。

「二人は仲がいいのね!」春燕が楽しそうに微笑む。

「違います!」雪麗は即座に否定した。

愁飛はそんな雪麗の横顔を、ますます面白そうに見つめていた。

 

――もう目も合わせたくない!

この人、本当に苦手だ……!

雪麗は唇をきゅっと結び、頬を赤くしたまま

愁飛に背を向けた。

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