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水月鏡花―中華恋愛譚・静かに灯る初恋―  作者: 麻倉ロゼ
第一章「氷心、春に融く」

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第十二話「小さな一歩 後編」4

第十二話「小さな一歩 後編」は6分割で更新していきます。これは4つ目です。

 屋敷への帰り道。春燕しゅんえんは項垂れて歩いていた。

「……買い物だなんて嘘までついて。

 こんな遅い時間にまで…。凌偉りょうい様、

 きっと怒るでしょうね。」


「ははっ!」愁飛しゅうひが軽く笑う。

「怒るわけないでしょ。あれだけのことをしたんだ。

 抱きついて喜ぶって!」


「そ、そんなこと――」

あの凌偉から想像できない。

絶対有り得ないだろう。


「さ、もう遅いし。近道して帰ろっか!」

愁飛が軽く笑って言うと、


次の瞬間――

「えっ、えええ!?!?」

ひょいっ、と春燕の体が宙に浮いた。

「!?愁飛様!?!?」

「しっかり掴まっててね〜!」

春燕をお姫様抱っこしたまま、愁飛は塀を

ひらりと飛び越える。

瓦の屋根を風のように駆け抜け、家々の間を

跳び移る。


「〜〜〜!?!?!?」

風が頬を切る。夜風に髪が舞う。


何が起こっているのか理解できず、春燕は目を

見張る。目線の先にりん家の屋敷が、

あっという間に見えてくる。


春燕はようやく理解した。

(どうりで……薬をあんなに早く買いに

 行けたわけね……。)

愁飛は月明かりの下でニコニコと笑っていた。

「ね? ちょっとすごいでしょ、愁飛お兄さん。」

春燕は思わず笑い、風に髪を揺らした。

「……本当に、すごいです。」

 


 琳家本邸の客間。

明かりをともした油灯の炎が、壁にゆらゆらと

影を落としている。

その中央で、春燕と愁飛は凌偉、叔父の恭信きょうしん

叔母のきょうの前に並んでいた。


春燕は膝を正し、深く頭を下げる。

「凌偉様には嘘をついて外に出てしまい、

 本当に申し訳ありませんでした。」


凌偉は腕を組み、しばし沈黙したあと静かに

口を開いた。

「謝る必要はない。――貴方は正しいことをした。」

その声音には冷たさがなく、春燕の胸に

静かに沁みていく。


叔母の嬌が、感情を抑えきれないように口を開く。

景元けいげんの妻とお腹の子が

 無事でなによりです。子が流れるなど…!

 母にとってどれほど辛いことか。」

声が震えていた。普段は凛とした彼女の、

母としての一面に春燕の胸があたたかくなる。


叔父の恭信が扇を手に、いつもの柔らかい

笑みを浮かべながら言った。

「いやはや、困ったものだなぁ。」

それでも、その目は細く、奥底で鋭く光っていた。

「噂を流すだけなら放っておけばよい。

 だが――琳家の者に手を出したとなれば、

 話は別だ。」

恭信の声色が低くなる。


その瞬間、凌偉・嬌・愁飛の三人の眼差しが同時に

鋭く光った。まるで獲物を見据える獣のように。

「琳家が直々に相手になるしかあるまい。」

静かに恭信が言う。春燕はその空気に息を呑んだ。

次回の更新は【明日21時頃】です。

春燕と凌偉、それぞれの心の距離が少しずつ

近づいていく時間を、

皆さまにも見守っていただけたら嬉しいです。


「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、

ブックマークや応援をしてもらえると励みになります。

感想もとても嬉しいです。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

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